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[GDC 2012]コンソールゲーム機は死ぬ運命にある。DeNAの子会社ngmocoの開発者が語る業界予想とは
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印刷2012/03/10 21:22

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[GDC 2012]コンソールゲーム機は死ぬ運命にある。DeNAの子会社ngmocoの開発者が語る業界予想とは

画像集#007のサムネイル/[GDC 2012]コンソールゲーム機は死ぬ運命にある。DeNAの子会社ngmocoの開発者が語る業界予想とは

 「When the consoles die, what comes next?」(コンソール機が死んだとき,次に来るのは何だ)という,なかなか刺激的な講演が,GDC 2012で行われた。講演者はディー・エヌ・エーの子会社としても知られるモバイル端末向けアプリ開発会社ngmocoのBen Cousins氏だ。ngmocoの社員による説明だからといって,「次にくるのはスマートフォンって話でしょ」と決めつけないでほしい。まずは,Cousins氏が説明した「Die」の意味から説明していこう。

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 ここでいう「Die」(死ぬ)とは,なにも消えてなくなるという意味ではない。どんな製品にもプロダクトサイクルと呼ばれるものがあり,市場規模は全盛期と比べると小さくなっていく運命にあるということである。

 例えば馬車だ。乗り物としてかなり普及していたと思われるが,自動車が本格的に登場するとその役目を終え,いまは観光地などで見かける程度になった。もちろん,馬車を生活に使っている人達は今でもいるが,商品としてみれば“死に筋”であり,ビジネス的なうまみはほとんどない。

 もう少し新しい商品の例として,ポータブルCDプレイヤーがある。今でも量販店で買えるし,実際に利用している人もいるが,その役目はシリコンオーディオプレイヤーに取って代わられ,活躍する場面はほとんどなくなってしまった。

 そして,コンソール機(コンシューマ機/家庭用ゲーム機)もいずれは馬車やポータブルCDプレイヤーのようになるだろうと,Cousins氏は予想しているのだ。

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 では,その根拠はなんだろうか。Cousins氏はアメリカとイギリスのコンソール機とソフトの売上データを提示し,2009年から下がり続けている現状を指摘する。さらに,MicrosoftとSonyのゲーム部門の成績があまりよくない期間があったことに言及した。

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 そんな状況の中,極東の島国で革命が起きたと,Cousins氏は続ける。まあ,日本でディー・エヌ・エーとグリーがものすごい勢いで台頭してきたという話である。これまでの全コンソール機と全ソフトの売上の合計に,ディー・エヌ・エーとグリーのそれを足したものが近づきつつあるというのだ。加えてActivisionやEA,KONAMIなど,大手コンソールソフトメーカーが軒並みソーシャルゲームやスマートフォン向けのアプリに本格参入しており,その勢いはとまりそうにない。

 ここまで説明したあとで,Cousins氏は過去に似たような事例がゲーム業界にあったとして,アーケードゲームの隆盛について話しはじめた。

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 いわゆるビデオゲームが登場した当初,それは家で遊ぶものではなく,ゲームセンターなど外で楽しむものだった。その後,ファミリーコンピュータが登場すると家で遊ぶ人達が増えたが,アーケードゲーム業界は安泰。市場規模はコンソールよりも圧倒的に大きかった。だが,1996年あたりから雲行きが変わる。コンソールの売り上げがアーケードのそれに追いつき,1998年には逆転したのだ。

 1980年代は,アーケードゲームのほうがコンソールゲームよりもグラフィックスの質が高く,プレイ環境も充実していた。1990年代に入ってもその優位性は変わらなかったが,90年代中期に入ると,コンソールは本格的に3D時代に突入し,グラフィックスに関してはアーケードゲームに追いついてきた。

 そんなタイミングでSONYという巨大企業がコンソール業界に参入。さらにはセガからDreamcastが登場し,コンソール業界の市場規模が一気にアーケードのそれを抜いた。とはいえ,まだまだアーケードゲームのほうが大画面でプレイできたり,専用コントローラが用意されていたりと,コンソールよりもプレイ環境は整っている状態だった。だが,家庭でアーケードゲームに近い体験ができるようになったということで,より手軽なほうに人々は流れていった。そうしてアーケードゲームは“死んだ”。

ngmocoのBen Cousins氏
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 ここでCousins氏は,この流れは,何かの状況に酷似していませんかと会場に問いかけた。言わずもがな,コンソールとスマートフォン/タブレット端末の関係に似ているのだ。今はコンソールゲームのほうがリッチな体験ができるし,コントローラやソフトの質も勝っている。だが,スマートフォン/タブレット端末には圧倒的なアドバンテージがある,そう,手軽さだ。

 ちなみに,スマートフォン/タブレット端末が浸食しているのはコンソールゲームだけではない。それらが本格的に普及し始めて以来,DVDプレイヤー,ビデオカメラ,カーナビ,シリコンオーディオプレイヤー,デジタルカメラといったAV機器の売上が軒並み下がっているのだ。今や,それらはスマートフォン/タブレット端末で代用できてしまうからである。


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 ともあれ,このようにコンソールに明るい未来はないという予測を突きつけられたわけだが,勘違いはしてほしくない。Cousins氏はゲームがなくなるという話をしたわけではないし,コンソールが消滅するといっているわけでもない。
 Cousins氏は自身がコンソールゲーム好きということもあり,映画とテレビの例を出して,「Consoles wont die - Cinema wasn't killed by TV!」(コンソールは死なない。映画がテレビに殺されなかったように!)というメッセージを残した。

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 テレビが登場した当初,映画産業は死ぬといわれていたのだが,いまでも新作は封切られているし,映画館もなくなっていない。確かに黄金期と呼ばれていた頃と比べれば興行成績は格段に落ちたが,映画というコンテンツはなくなっていない。また,映画館ではない場所で見る機会が増えており,コンテンツとしての映画はいまだ活気がある。

 つまり,コンソールゲームも映画と同じようになるのではないかとCousins氏は予想している。プレイする環境が変わるだけで,ゲーム自体は死なないどころか,以前よりも活気づくと。

 もちろんこれはCousins氏の予想であり,まったく異なる未来が訪れる可能性もある。だが,コンソールの著名なクリエイターが次々とソーシャルゲームの開発に携わり始めている現状を考えると,突拍子がないとは言い切れない。Cousins氏は,提供するプラットフォームがなんであろうと,面白いゲームを作ればいいと言い,「お互いに意見をぶつけ合いましょう」と会場の開発者達に呼びかけて講演を締めた。

※2012年3月12日18時30分頃,誤解を招く可能性がある表現がありましたので訂正いたしました
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