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「Game Nights at the Apple Store」4日目はカプコン編。iPod touch版「ストIV」の開発裏話や,新作「CAPCOM ARCADE」の話が聞けた
今回登場したのは,カプコン 開発統括本部 MC開発部長 兼 プロジェクト企画室長の手塚 武氏。手塚氏は,ゲームのプレイヤー層の変化や,iPod touch/iPhoneおよびiPadゲームに対するカプコンとしての取り組み,そして世界的なヒットを飛ばしている「ストリートファイターIV」(以下,ストIV)の開発裏話などを披露した。
11月にリリース予定となっている新作「CAPCOM ARCADE」の紹介も行われたので,最後まで目をとおしてほしい。
コアなゲームファンを増やすために,まずはゲームプレイヤーの裾野を広げる
手塚氏の説明によると,ゲームを取り巻く環境がここ15年ほどのあいだに大きく変化しているという。
具体的には,価格が高めのゲーム機を購入し,より複雑なゲームを求める層と,単なる暇つぶしとして,無料のゲームを気軽に楽しみたいという層に二極化しつつあるそうだ。
そのような状況の中,カプコンがApp Storeで狙っているのは,より多くの選択肢を提供し,これまでゲームに触れていなかった層を取り込んでいくこと。
手塚氏は,ゲームファンの裾野を広げることで,ソーシャルゲームからモバイルゲーム,モバイルゲームからコンシューマゲームへとステップアップする人を増やしていきたいと説明していた。
アプリを作るときに心がけるのは“アーケード感覚”。遊んでいる人の生の声を聞く
そもそも手塚氏は1990年にカプコンに入社後,アーケードゲームの開発に携わってきたキャリアを持っている。
そのため,開発中のゲームを実際の店舗に設置し,プレイヤーの反応を見たり,それをもとにバランス調整したりする,いわゆる“ロケーションテスト”にも何度も関わった。
実際に遊んでいる人の横に立って反応を見る,つまり,“生の声”を開発に生かすことが大切というわけだ。
手塚氏はこれまでの経験から,ゲームが稼動する“現場”では,上手なプレイヤーは一握りしかいないことや,多くの人はゲームの遊び方に目をとおさないことなどが分かったと述べた。
iPod touch版ストIVに盛り込まれた,格闘ゲームになじみのない人に遊んでもらうための工夫
最初のポイントは,ストリートファイターにあまりなじみがないプレイヤーへの配慮だ。
iPod touch版では,初回起動時に必ず操作説明が表示される。ストリートファイターを遊んだことのある人ならばすぐにつかめることばかりだが,なじみのない人にまず遊び方を知ってもらうことを重視しているわけだ。
手塚氏は「これくらいやらないと,なかなか遊び方を読んでもらえません。操作方法が分かったうえでプレイしてこそ,本当の楽しさが分かると思います」と説明した。
ストリートファイターの初心者を対象とするもう一つの要素が,「道場」だ。
これはいわゆるチュートリアルだが,広い層の人々によりなじみのある言葉として「道場」を選んだことや,すでに遊んでいる人にしか通用しづらい言葉をできるだけ避けること,そして「オカンに読ませても理解してもらえる文章にすること」(手塚氏)を徹底したという。
また,iPod touch版ストIVの難度は,アーケード版よりもかなり低めに設定されているという。具体的には,iPod touch版で「ふつう」を選んだ場合の難度が,アーケード版における「かんたん」にあたるとのことだ。
画面左下に表示されているヴィジュアルパッドは八つの方向が入力できるインタフェースだが,実は,単純な45度刻みにはなっておらず,細かく調整されているそうだ。
また手塚氏は,「iPod touchをがっちりと持つ人もいればやんわりと持つ人もいます。持ち方次第で指が触れる場所が変わるので,位置をカスタマイズできるようにする必要がありました」と説明した。
さらに本作では,ゲージをタップすることで簡単に「ウルトラコンボ」が繰り出せる仕組みになっている。
手塚氏は,「単に難度を下げただけでは,ほかのプラットフォームでストリートファイターIVをプレイしているファンには納得してもらえなかったと思います」と述べていた。
ここで手塚氏は,App Storeにアーケード版のプレイヤーから寄せられたレビューをピックアップして紹介した。
そのレビュワーによると,格闘ゲームというジャンルは,熱心なファンのリクエストに応えるにつれ,初心者にとってハードルの高いものになりつつあるという。「私は今後このアプリを起動することはほとんどない」としつつも,iPod touch版のストIVは,格闘ゲームジャンルになじみのない人にもその楽しさを広めるための作品であると高く評価している。
手塚氏は,「ゲームを遊んだだけでここまで理解してもらえるのかなと,このレビューを読んでとても感動しました」と述べ,話を締めくくった。
本作は,ゲームセンターで遊ぶことの楽しさをiPod touch/iPhoneで味わえることをコンセプトとするアプリだ(関連記事)。
手塚氏は,本作を起動するとゲームセンターの外観をイメージした画面が表示され,入り口をタップすることで,アーケードゲームが並べられた店内に移動できると説明した。
リリース当初は「ストリートファイターII」「大魔界村」「1942」「戦場の狼」の4タイトルが用意されており,手塚氏は,「毎月,アップデートでタイトルを追加していく予定です」と説明した。
それぞれのタイトルは,当時のゲームを忠実に再現したものとなっているとのことで,オールドゲーマーならば懐かしいプレイフィールが味わえそうだ。
先日お伝えしたように,プレイヤーは無料の「チケット」や,有料で販売される「トークン」を消費することで,まさにゲームセンター感覚でそれぞれのゲームをプレイできる。また,筐体そのものを指す「キャビネット」を購入すれば,無制限にプレイ可能となる。
なお,カプコンが先日公開した資料では詳しく説明されていなかったが,今回手塚氏は,本作の起動時に複数のチケットがもらえる仕組みとなっていることを明らかにした。これを消費することで,無料の範囲でもある程度は楽しめるわけだ(かといって,起動と終了を繰り返してチケットをためるといったことはもちろんできないだろう)。
アーケードゲームの開発に携わった経験を持つ手塚氏により,“ゲームセンターの楽しさ”がどのような形で提供されるか,また,ゲームを遊ぶためのトークン/キャビネットを販売するというビジネスモデルがiPod touchやiPhoneゲーマーにどのように受け止められるか注目したいと思う。
- 関連タイトル:
ストリートファイターIV
- 関連タイトル:
ファイナルファイト@カプコンアーケード
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