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「神速」「連撃」を地で行く,マルチプレイアクションの一つの完成形。60万人以上のゴッドイーターに贈るPSP「GOD EATER BURST」開発者インタビュー
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印刷2010/11/27 13:18

インタビュー

「神速」「連撃」を地で行く,マルチプレイアクションの一つの完成形。60万人以上のゴッドイーターに贈るPSP「GOD EATER BURST」開発者インタビュー

画像集#010のサムネイル/「神速」「連撃」を地で行く,マルチプレイアクションの一つの完成形。60万人以上のゴッドイーターに贈るPSP「GOD EATER BURST」開発者インタビュー
 PSP向けの新規タイトルとしては異例ともいえる,60万本以上のセールスを記録した,バンダイナムコゲームスの「GOD EATER」(以下,GE)は,“神機”と呼ばれる特殊な武器を使いこなし,さまざまな特徴を持つ強敵“アラガミ(荒神)”と戦っていくという,ハイスピードハンティングアクションだ。
 このGOD EATERをさらにブラッシュアップした「GOD EATER BURST」(以下,GEB)が,10月28日に発売された。GOD EATERのプレイヤーから寄せられた意見をもとに,徹底的なチューニングがほどこされた改良バージョンだが,それだけに終わらず,新キャラクター/ストーリーやさまざまな新要素も盛り込まれている。
 今回4Gamerは,前作および今作のプロデューサーを務めたバンダイナムコゲームスの富澤祐介氏と,ディレクターを務めた吉村 広氏のお二人に,話をうかがう機会を得た。前作からたったの8か月でさらなる進化を遂げ,セールス的にも評価的にも見事な結果を出したGOD EATER BURSTは,一体どのように作られ,どのように成長したのか。さっそく紹介していこう。

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「GOD EATER BURST」は,通常版とダウンロード通常版のほか,すでに「GOD EATER」を持っているプレイヤーのためのアペンド版が存在する。アペンド版は初回起動時のみGOD EATERのUMDで認証し,以降はアペンド版UMDでの起動が可能となる
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「GOD EATER BURST」公式サイト



作り手と遊び手の“望む形”が合致した結果

自然な流れで成功を収めた「GOD EATER」


バンダイナムコゲームス「GOD EATER」「GOD EATER BURST」ディレクター 吉村 広氏。GOD EATERの企画立案から携わるディレクター。開発を手がけるシフトのスタッフと連携し,開発現場での統括責任者として活躍
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4Gamer:
 まずは,「GOD EATER」および「GOD EATER BURST」の大ヒット,おめでとうございます。

吉村氏:
 ありがとうございます。おかげさまで,当初から我々が目指していた“ハイスピードハンティング”という内容に対して,皆様から高い評価をいただくことができました。本当に感謝しております。

4Gamer:
 最初は,そのハイスピードハンティングという新しいマルチプレイアクションが,一体どのようにして生まれたのかについて,お話を聞かせてください。

吉村氏:
 最初のきっかけは,私がマルチプレイアクションの企画を立てていた頃,開発会社シフトの保井さんと,とあるイベントの喫煙所でお会いしたことなんです。そのときちょうど,シフトさんでもマルチプレイアクションの研究/開発をされていまして,それならぜひご一緒しましょうということで開発がスタートしました。その時点ではまだ,現在のGEとは世界観もアクション要素もまったく異なる内容で,1年弱をかけてプロトタイプを作っていました。
 それがある程度形になったところで,内々の体験会を行ったのですが,そこでの反応や評価は散々なものでした。このままではまずいということで,世界観やストーリーを中心に2〜3週間かけて組み直したのが,現在のGEのベースになっています。

4Gamer:
 そのプロトタイプの世界観は,一体どのようなものだったんですか?

吉村氏:
 基本的にはGEに近しい部分もありましたが,もう少しライトな雰囲気でした。実際にお客さんの意見を聞いてみたら,我々が考えていたよりも子供っぽい印象を受けるということだったんです。そこで,彼らから見て大人っぽくリアルに感じられるような世界観を構築していったんです。とくにストーリーについては,ほかの同ジャンル作品と差別化するために,シフトの企画の保井さんに,かなりしっかりとしたシナリオを書いてもらいました。保井さんもノってくれて,当初の予定の3倍近い内容になりましたからね(笑)。これが,2008年の春頃の状況です。

4Gamer:
 PSP用のマルチプレイアクションはいくつかありますが,世界観やストーリー以外の面の,差別化のポイントはありますか?

吉村氏:
 本作の特徴となるのは,ハイスピードで爽快感のあるマルチプレイアクション,という点ですが,それは差別化という感覚で作ったわけではなく,僕らが作りたいものと,プレイヤーさんが遊びたいものが合致した結果のように思います。制作の最中にも,ユーザーテストという形で一般のプレイヤーの方に実際にさわっていただいて,互いの考えにズレが生じていないかを常に考えながら作っていましたね。

バンダイナムコゲームス「GOD EATER」「GOD EATER BURST」プロデューサー 富澤祐介氏。GOD EATERシリーズの販売戦略を取り仕切るプロデュース業の傍ら,吉村氏とともに現場にも積極的に参加する
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富澤氏:
 結局,僕らが作りたいものを作れたとしても,お客さんがやりたいものとのズレが大きければ,みなさんには届きませんからね。それはGEの体験版を配信したときにも感じたことで,我々の作り手としての思いと,異なった意見を持ったプレイヤーA,Bさんそれぞれの思いがバラバラだった場合,一体どう調整すればいいのかという葛藤は,当初からすごくありましたね。そういう意味で,GEの開発中は,とくにお客さんとのコミュニケーションを重要視していたんです。

4Gamer:
 そのあたりは,GE体験版配信後の,プレイヤーの声を製品版に反映するという対応が物語っていますね。

吉村氏:
 そうですね。当時の体験版で多くの不満をいただいた点に関しては,前作製品版の段階できっちり直せたかなとは思っています。

4Gamer:
 あのときは,体験版配信から発売までの短い期間の中で,よく対応できたなぁと,感心せざるを得ませんでした。

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吉村氏:
 確かに普通はあり得ないですよね。それはシフト開発チームの並々ならぬやる気と,それを止めずに推し進めた私が原因です(笑)。

富澤氏:
 あのタイミングでのフィードバックの反映は,会社的には当然厳しいものだったんですが,現場の人間達がプレイヤーのためにしっかり動いているわけですから,それをわざわざ止める理由はないなと判断しました。

吉村氏:
 私は,体験版が配信された当日は会社を休んで,自宅でネット上の評判や,フォームから届いた意見などを,布団をかぶってガクガクしながら(笑)チェックしていました。その翌日には直すべき場所を洗い出して,その週末にシフトさんに行ったんですが,シフトさんはすでに動く準備をしてくれていましたからね。作り手全員がそんな勢いだったんですよ。さすがに長期を要しそうなクリティカルな部分の改良は無理でしたが,リスクと時間の兼ね合いで「ここまでだったら」というところまでをきっちり決めてから,調整をしていきました。
 あの段階(発売約2か月前の2008年11月末)で出した体験版の内容は,開発途中の内容から切り出しているので,我々にとってもすごくリスクが高かったんですが,それだけ早く出したからこそ,調整対応が可能だったということもありますね。

富澤氏:
 当然,直すことを前提に体験版を出したのではなく,新規タイトルのハイスピードハンティングが一体どんなものなのかを体験してもらうのが目的でしたからね。その結果,配信から約1か月で100万ダウンロード,累計では200万ダウンロードを達成できました。無料とはいえ,これだけのプレイヤーに遊んでもらっているので,開発者としての役割を果たすためにも,できる限りの対応はしたつもりです。
 まぁ,修正リストを見たときは驚きましたけどね。「これ直すの?」って聞いたら,「もう半分以上直しました」という勢いで,そこでまた驚かされたという(笑)。

関連記事:体験版からここまで改善! PSP「GOD EATER」の製品版と比較してみたプレイムービーを掲載



60万人以上のゴッドイーター達に向けた「GOD EATER BURST」


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4Gamer:
 そんなGEの大ヒットを受けて,GEBが制作されたわけですが,これは続編ではなく,拡張版という位置付けですよね。その結果,アペンド版も発売されましたが,その理由はどこにあるのでしょうか。

吉村氏:
 実は開発チームは,GEが発売されたあともいろいろと調整作業を続けていたんです。発売後は当然,お金を出して買ってくれた60万人の方の声が聞こえるわけですから,そこでさらに気付かされることも多々ありました。まずはその60万人のプレイヤーのために,何かできることはないかということで,ダウンロードコンテンツ(DLC)を継続的に開発/配信しました。
 しかし,それだけでは収まらない部分がどうしても残ってしまうので,それをなんとかお届けできる手段はないかと模索した結果,行き着いたのがアペンド版という形式だったんです。

4Gamer:
 なんと,GEの発売後から,ほとんど休むことなく開発作業を続けていたんですか?

吉村氏:
 もちろん,GEが発売された直後は何日か脱力していましたが,その間にお客さんの反応が返ってきますからね。休んでいる間も気が気ではないんですよ(笑)。心は休まらず,体験版以降と変わらないテンションで開発を続けていましたね。

4Gamer:
 そこで思い切って,アペンド版ではなく「2」にしてしまおうという発想には向かわなかったんですか?

吉村氏:
 そもそも続編を作るのとは,考え方がまったく異なるんですよ。繰り返しになりますが,まずはGEを買ってくれたプレイヤーに,もっと満足してもらいたいという気持ちが大きかったですからね。そこから自然に出てきたのが,アペンド版という体裁でした。

4Gamer:
 アペンド版で発売するという仕様はいつ頃に固まったのでしょうか。

富澤氏:
 2010年の5月くらいですね。その頃はすでに,3か月分ほど調整作業が進んでいる状況で,吉村から「もうアクションは変わったから!」という報告は受けていました(笑)。

4Gamer:
 開発そのものがハイスピードですね(笑)。


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富澤氏:
 5月にはもうGEBの体験版に近い形が出来上がっていましたからね。それをもとに,GEを買ってくれたプレイヤーへ,よりよい形で届けるためにどうしたらいいかという部分は,開発チーム全員でかなり議論しました。その結果として,2100円のアペンド版という,かなり挑戦的な仕様でお届けすることになったんです。

4Gamer:
 具体的な調整内容としては,ゲームのバランスの改善と,各種新要素の追加ということになりますかね。

吉村氏:
 はい。まずはGE全体の内容を含めて,不満として挙げられていた点をすべて改善しました。もちろん数値的な調整だけでなく,モデリングやエフェクトなど,見た目の部分もクオリティアップしています。GEを最初から作り直したといっても過言ではないと思いますよ。

4Gamer:
 不満としてよく挙げられる,NPCの挙動もかなりよくなっています。

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吉村氏:
 GEの頃のNPCも,最低限一緒に戦えるようには設計していましたが,どうしても“仲間”としては至らない部分がありましたからね。それらも含めて,システム自体は一度ゼロから作り直しているんです。
 また,とくに大きな不満点として上がっていた,複数のアラガミを同時に相手にするミッションのゲームバランス。あれがどうしても厳しいという声は,非常に多かったんですが,我々が提示したハイスピードハンティングの一部として,たくさんのアラガミの群れと同時に戦う面白さも残したいと考え,それを両立させるための近道として,NPCを前回以上に活躍させるという形に落ち着いたんです。

4Gamer:
 GEの発売から約8か月間,そこまで調整するにあたり,どのようなスケジュールで開発していたんでしょう?

吉村氏:
 前作のDLCの開発と並行しながら,9月まで一気に駆け抜けました。GE自体は開発期間が非常に長かったので,フルマラソンを完走したあとに,400メートル走に挑戦するようなイメージです(笑)。

4Gamer:
 その甲斐もあって,GEB体験版もかなりの高評価を得ていましたね。あのボリュームに関しては,私も驚かされました。

吉村氏:
 おかげさまで遊んでいた方には,「かゆいところに手が届いている」として,各種仕様を評価をいただき,大変嬉しく思っています。ボリュームに関しては,初めて遊んでいただく方への配慮です。ゲーム全体の流れを知ってもらうとともに,NPCの魅力や,ある程度強いアラガミとの戦いも体験してもらいたかったんです。体験版からのデータ引き継ぎもあるので,あまり出し惜しみはしませんでした。それでもゲーム全体からすると,まだまだ序盤ですしね。

4Gamer:
 さすがに発売約1か月前に配信された体験版の反響を,GEB本編に反映したりはしていないですよね?

富澤氏:
 ええ,それはさすがに無理でした(笑)。ただし今回は体験版配信前の8月に,東京と大阪で開催した先行体験会や,9月に行われた東京ゲームショウでの反響をもとに,ゲームバランスや各種仕様を調整しています。
 それと,新たな試みとして,店頭体験会が終了したその日の夜に,Twitterの公式アカウントを通じて約3時間ほど,吉村がユーザーさんから,体験した感想や要望を直接おうかがいするということをしたんです。でも彼がまだTwitterに不慣れで,僕が裏で「RTっていうのはこういう意味だよ」とか色々助言していました(笑)。

関連記事:捕喰しまくりでバースト状態! 「GOD EATER BURST」のプレイムービーでその進化っぷりをチェックだ

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