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だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
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印刷2012/02/25 00:00

インタビュー

だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方

画像集#002のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
 現場のプロデューサーを通して,フロム・ソフトウェアが昨今好調な秘密を探ろうという今回の企画だが,本稿では,「Demon's Souls」と「DARK SOULS」を作り上げた宮崎英高氏へのインタビューをお送りしたい。

 宮崎氏は,言うまでもなくフロム・ソフトウェアを代表する開発者の一人であり,上記の二作品で,クリエイターとしての実力を世に知らしめた人物である。
 一方で,宮崎氏は,根っからのゲームクリエイターというわけではなく,30歳の手前で異業種から転職してきたという,変わった経歴を持つ。

 ゲーム制作はまったく素人だった氏が,なぜ,どういった経緯で人気ゲームを生み出すに至ったのか。そして,そんな宮崎氏を見出し,プロデューサーに据えたフロム・ソフトウェアとは一体どんな会社で,何を考えている集団なのか。
 「Demon's Souls」が企画として立ち上がった経緯や「DARK SOULS」の開発秘話,そしてその中から見えてくる宮崎英高という人間の考え方……。興味深い話をたくさん聞くことができたので,早速お届けしたいと思う。

宮崎英高(みやざき ひでたか):フロム・ソフトウェア 執行役員 制作第一部長
画像集#001のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方

関連記事:フロム・ソフトウェアってどんな会社ですか。プロデューサー鍋島俊文氏を通して見えた「ARMORED CORE V」を作れた理由

「DARK SOULS」公式サイト

「Demon's Souls」公式サイト



「面白いものを作りたい」という建前が強く機能している希有な会社


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。先日「ARMORED CORE V」を手がけた鍋島俊文氏に,フロム・ソフトウェアとはどういう会社なのかというテーマのインタビューをさせていただきました。
 今回は,「Demon's Souls」「DARK SOULS」というヒット作を立て続けに生み出した宮崎さんに,同じような主旨でお話を聞かせていただければと思います。

宮崎氏:
 こちらこそよろしくお願いします。
 でも,「フロム・ソフトウェアとは?」という話は,鍋島が語り尽くしているのでは,と思いますが。

4Gamer:
 それはそうですが,宮崎さんからはいつも面白い話が聞けるので,そこは軽い気持ちで来ています。

宮崎氏:
 なるほど……何気にハードルが上がった気もしますが,できるだけ頑張ります。

4Gamer:
 ともあれ,フロム・ソフトウェアという会社についての話をお聞きするにしても,宮崎さんと鍋島さんでは,勤務年数も関わってきたタイトルも違うわけで,立ち位置も大きく変わりますよね。
 まずは宮崎さんから見た,フロム・ソフトウェアという会社のことから話を聞かせていただければと思います。

宮崎氏:
 鍋島は業界歴,フロム・ソフトウェア歴15年くらいかと思いますが,私の方は5〜6年程度なので,フロム・ソフトウェアについてそこまで深く語れる,ということはないんですよ。また,ほかのゲーム会社で働いたこともありません。ですので,そうした前提で,若輩の適当な話として聞いてもらえれば,と思います。
 で,フロム・ソフトウェアですが,ごく正直な話,良いところもあれば,悪いところというか,直すべきところも沢山あります。とはいえ,この場で後者のお話をするわけにもいきませんので,前者のお話をしますと,私が一番感じるのは「建前」が有効である,ということですね。

4Gamer:
 建前といいますと?

画像集#003のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
宮崎氏:
 別の言い方をすれば「きれい事」でしょうか。我々のようなゲーム会社であれば「とにかく面白いゲームを作ろうよ」みたいなものですね。
 そうした建前が,それなりに大きな組織であるにも関わらず,まがりなりにも機能しているところが,フロム・ソフトウェアの良いところかと思っています。もちろん,常に建前が有効かというと,そうではないのですが。

4Gamer:
 それは,我々メディアや一般ユーザーから見ても,理解しやすい社風のように思えますが,内部のスタッフには,より強く実感できる部分なんでしょうか。

宮崎氏:
 人によるとは思いますが,少なくとも私は,実際に入社してみて良い意味で驚かされました。ゲーム制作を仕事に選んでいる以上,大小の差はあれ,誰もがそういった建前というか,「良いものを作りたい」という理想を抱いているとは思っています。
 しかし,一方で営利企業なわけですし,個々人の生活もある。特に経営の現場では,利益なり儲けなりが最優先されているのだろう,とも思っていたんです。

4Gamer:
 まぁそうですよね。

宮崎氏:
 けれど,実際に入社してみると,現場はもちろん,かなり上層の会議などでも,意外なほど「良いものを作りたい」的な理想が,一方ではあったんです。「儲かるのはわかるんだけど,ゲームとしてそれはどうなの?」といったような話ですね。

4Gamer:
 宮崎さんや鍋島さんからは,確かにそういう印象を受けますけど,それが会社全体の話だったというわけですね。

宮崎氏:
 はい。神(同社の代表取締役社長 神 直利氏)自身が,そういった部分をとても大事にする,というか「したい」人で。そういった部分も大きいのかなあ,と思います。

4Gamer:
 ちょっと失礼な言い方になると思いますけど,業界歴のなかった宮崎さんが,ほんの数年でゲーム作りの中心になれてしまうところに,フロム・ソフトウェアの特殊性のようなものを感じるんですよね。

宮崎氏:
 うーん,どうでしょうか。私自身は珍しいケースであると考えています。当たり前の話ですが,フロム・ソフトウェアが常にそうだ,というわけではありませんので,それが特徴かと言われると……。
 ただ,個人的には,早いタイミングで評価してもらえたことには感謝しています。私が入社したのは30歳の直前で,まったくの未経験でしたから,焦っていなかったと言えば嘘になります。

4Gamer:
 変な話ですが,人間関係で苦労されることはありませんか?

宮崎氏:
 ありません。私は,言ってしまえば成り上がりみたいなところがありますから,そういう話もありそうなものですが,本当にないんです。足を引っ張られた覚えもないし,周りも言いたいことを言ってくれます。そういった意味では,とても気持ちのいい会社ですね。

4Gamer:
 「Demon's Souls」「DARK SOULS」と,連続でヒットを飛ばした今なら,宮崎さんを見出し,育て上げたフロムはすごい……という話になってしまいますが,人を見るのは本当に難しいですよね。宮崎さんご自身は,どうして見出されたと考えているんでしょう。

宮崎氏:
 分かりません。いっそ聞いてみたいけど,怖くて聞けませんし。
 私自身も,人を見る立場になって実感するんですが,これが本当に難しいんです。技術とか能力であれば計りようもあるのですが,多分重要なことはその先にあって,そういう部分を見る自信がまったくない。

4Gamer:
 そこが本当に一番難しいですよね。

宮崎氏の実力を世に知らしめるきっかけとなった「Demon's Souls」
画像集#004のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方


「Demon's Souls」の企画を任されるまで


4Gamer:
 整理すると,宮崎さんはまったくの異業種から,しかも30歳の手前でフロム・ソフトウェアに就職して,あっという間にディレクターになり,「Demon's Souls」や「DARK SOULS」を作り上げた……ということになるんですよね?

宮崎氏:
 あっという間かどうかは分かりませんが,まあ,そういうことになりますね。

4Gamer:
 うーん。やっぱりそこがとても不思議なんですよね……。
 かなり話が昔に遡ってしまうんですけれど,そもそも「Demon's Souls」の企画は,社内でどういう風に動いていたんですか?

宮崎氏:
 「Demon's Souls」は,まず我々で企画書を作って,それをソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)さんに見てもらって,じゃあプロトタイプからやってみましょうか,という流れだったかと思います。

4Gamer:
 企画当初から,宮崎さんが中心で動いていたんですか?

宮崎氏:
 いえ。最初期はそれほど深く関わっていません。私は当時「アーマード・コア4」のディレクターで,プロジェクトも最後の詰めの時期でしたし。

4Gamer:
 なるほど。

画像集#006のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
宮崎氏:
 私が本格的に参加したのは,プロトタイプ制作の途中ですね。途中といってもかなり序盤でしたが,当時の「Demon's Souls」は,あまりうまくいっていませんでした。そこで,一度立て直しが図られ,私も丁度「アーマード・コア4」が終わったタイミングだったので,そこからディレクターとして参加することになりました。

4Gamer:
 「Demon's Souls」の企画の発端と,そこに宮崎さんが参加するまでの経緯はそういったものだったんですね。

宮崎氏:
 まあ,そこからはかなり好き勝手やってしまったんですが(笑)。
 会社からは「好きにやっていい」という話をもらっていましたし,プロデューサーの梶井さん(SCE)も理解してくれたもので,「折角ほぼゼロからゲームを作れるのなら,タイトルだけ変わらなければ大丈夫だろう」くらいのノリでした。

4Gamer:
 当初の企画内容は,世に出た「Demon's Souls」とはまったくの別物だったんですか?

宮崎氏:
 別物だったと思います。まあ幸いなことに,プロトタイプは承認されて「Demon's Souls」のプロジェクトが本格的に動き出すことになるのですが,勝手にやっていた手前,かなりドキドキしていたのを覚えています(笑)。

4Gamer:
 なるほど。そういう巡り合わせと,そのチャンスを物にした宮崎さんの実力という,一連の流れが上手く組みあわさっていたということですか……。
 ただ,いずれにしても,入社して3作目で関わった「アーマード・コア フォーアンサー」では,もうディレクターを任されていたんですよね?

宮崎氏:
 そうですね。正確には,2作目の「アーマード・コア4」の途中から,ディレクターとして制作に携わっています。

4Gamer:
 入社して最初に関わったタイトルが「アーマード・コア ラストレイヴン」で, その次の作品(アーマード・コア4)では,もうディレクターで。そして「DARK SOULS」で,プロデューサーとディレクターを兼任されているわけですよね。

宮崎氏が初めてゲーム制作に関わった「アーマード・コア ラストレイヴン」。写真はPSPに移植された「ARMORED CORE LAST RAVEN Portable
画像集#005のサムネイル/だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方
宮崎氏:
 はい。いろんな意味で機会と,そして仲間に恵まれていたと思います。
 「アーマード・コア4」の時とか,ゲーム制作経験1本未満の人間に,プロトタイプ途中でディレクター交代ですからね。ほぼPS3ローンチに合わせたタイミングでしたし,残り時間もあまりなかった。
 今考えてもかなり無茶な話だと思うんですが,スタッフは皆,信じて,協力して,素晴らしい仕事をしてくれました。それって実は,けっこう凄い,得難いことだなあと。

4Gamer:
 確かに。

宮崎氏:
 だから,機会をくれた会社にも,一緒にやってきたスタッフにも,そして何よりゲームを遊んでくれたユーザーさんにも,すごく感謝しているんです。
 なんとか出来るだけ恩返しをしたい,そう思っているのですが,力不足でなかなか上手くいきませんね。

4Gamer:
 「Demon's Souls」と「DARK SOULS」では,まだまだ足りないということですか。

宮崎氏:
 足りないと思います。「DARK SOULS」については後でお話しすることになると思いますが,色々な問題,配慮の足りない部分などあり,反省点の方が遥かに大きなものですから。

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