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「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
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印刷2011/11/18 17:00

インタビュー

「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

画像集#004のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
 カプコンのオンラインアクション「イクシオン サーガ」の第2次バトルαテストが,2011年11月25日から28日の4日間,実施される。そのテスター募集は本日(2011年11月18日)より開始され,4Gamerでもテスターの応募を受付中だ

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 本作の開発チームは,前回のテスト終了から約3か月の間,開発隊員(バトルαテスト参加者)から寄せられた意見や要望を踏まえ,チーム対戦というコンセプトを保ちつつ,「グラフィックスの一新」「アクションの一新」「部分的なリファイン」の3つをテーマとし,ほぼ丸ごとゲームを作り直す作業をしていたという。

画像集#005のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

 上記の記事では今回公開されたスクリーンショットも掲載しているが,それを見れば,UIの変更,ライティングとテクスチャマップの見直しによるグラフィックスの強化,キャラクターのボーンを変更したことによるプロポーションの変化など,明らかに違っていることが分かるだろう。
 ほかにも,細かい部分では,武器の持ち方や防具の部位の分け方などにも変更が加えられている。またアクション面では,各職業のアクション性と役割に重点を置く方向にシフトされており,キャラクターのモーションも変更されている。

画像集#007のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた 画像集#006のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

 オンラインゲームにおいて,ここまで大きな変更を3か月という期間で成し遂げるのは難しいだろうが,「イクシオン サーガ」では,それをどうやって実現したのか。そこまでして大規模な変更を加えた理由と,第2次バトルαテストに賭ける意気込みなどを,本作のプロデューサーである小野義徳氏と,運営プロデューサーの杉浦一徳氏のお二人に聞いてきた。

「イクシオン サーガ」公式サイト


「イクシオンサーガ」プロデューサー 小野義徳氏(写真右)
同運営プロデューサー 杉浦一徳氏(写真左)
画像集#013のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

カプコンと開発隊員で一緒に作り上げていくために,ダメ出しされた部分を作り直した


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 最初に,今回「イクシオン サーガ」のバトルαテストをあらためて実施することになった経緯を教えてもらえますか?

画像集#014のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
小野義徳氏(以下,小野氏):
 端的に言ってしまうと,前回のバトルαテストで「つまらない」と評価されたからです。そう言われてしまったら,やり直すほかないと。
 公式サイトの「イクシオン サーガ開発隊」のページに掲載しているように,どこがつまらないかについては,皆さんに思いの丈をかなり書いていただけました。
 ゲームが面白くないと言われるということは,たとえるなら,交際を申し込んで「ごめんなさい」と断られるのと同じことです。そこでこの2〜3か月間は,再びアタックするべく,ガガガッと作り直しました。

4Gamer:
 それは,開発チームとして不本意なことではなかったんですか?

小野氏:
 もともと「イクシオン サーガ」は,多人数でチームを組んで対戦するゲームを,カプコンと開発隊員の皆さんで一緒に作り上げていく,というコンセプトを掲げています。なので我々としては,悲観的になったり腹立たしく感じるようなことはまったくありません。
 むしろ,恋愛と違って具体的にダメな部分を指摘していただけるので,何が求められているのか,こちらが何をすればいいのかハッキリしたわけです。

4Gamer:
 「つまらない」という意見には,きちんと具体的な理由も添えられていたと。

小野氏:
 ええ。ですから,「じゃあ,どうすればいいの?」という状況にはなりませんでした。同じことを皆さんにまた言わせてしまわないよう,見た目から全部手を入れて,「ここがダメ」「この動きがイヤ」と指摘された部分を可能な限り直しました。これが2回目のバトルαテストのコンセプトというか,心づもりです。

画像集#015のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
杉浦一徳氏(以下,杉浦氏):
 そもそも運営チームは,失敗を避けるために分析を重ねるという,いわば手堅い仕事が本業なのですが,開発隊の掲示板だけは,ある意味で博打を打ちました。最悪のケースは,誰もゲームを遊んでくれなくて,意見も書いてくれないというもので,正直,そうなったらどうしようという不安もあったんです。
 しかし幸いなことに,熱量のあるたくさんの書き込みがありました。これは非常に大きな財産ですので,予想を超える成功を収めたと言えます。

4Gamer:
 ただ,オンラインゲームの場合だと,αテストではあっても,一度試してダメだと見切りをつけたら,二度と遊んでもらえないというケースも少なからずあると思います。そのあたりはどう考えていますか?

小野氏:
 おっしゃるとおり,データ的にも経験的にも,βテストなどで黙って去った人が,サービスインしてから戻ってくるケースは少ないです。おそらく,本当にダメだと思ったら,文句を言わずに去るのではないでしょうか。
 でもありがたいことに,第1次バトルαテストでは,参加人数をかなり絞っていたにもかかわらず,半端じゃない量のご意見が返ってきたんです。運営を取りまとめる杉浦と話をして,「これは,もう一度テストをやる価値があるよね」という結論に至りました。
 また恋愛にたとえてしまいますが,「もっと髪を伸ばしてほしい」「ヒゲは剃ってほしい」と注文を付けられたということは,それを直せば付き合ってもらえる可能性はまだあるわけですよ。

4Gamer:
 まだチャンスがあると。

小野氏:
 それはもうチャンスというか,「ルールブックから一緒にゲームを作っていきましょう」という我々のメッセージが,多くの方に届いていたということですから,それだけ「やってやろう」という思いが強くなりました。だからこそ,開発チームもこの短い期間でゲームを作り直して,回答を出すことができたんです。
 今回,我々としては,第1次バトルαテストでいただいたご意見については,すべて良い方向に変えられたと考えています。別の部分でダメ出しをされることはあるかもしれませんが,「髪の伸ばし方が足りない」というように,同じことを二度言われないようにしたつもりです。

4Gamer:
 第2次バトルαテストは,基本的に前回参加した人に向けての回答を提示するのが主旨といったところでしょうか。

小野氏:
 今回は,継続率などの数字を上げるつもりで取り組んでいます。

4Gamer:
 これだけ大きく内容を変えたにもかかわらず,なぜこれまで情報をほとんど出していなかったんですか? もっと事前告知などを行ったほうが,第2次テストの参加者もぐっと増える気がするのですが。

杉浦氏:
 運営面でいえば,オンラインゲームでは,大きく分けて「お客様に期待を持たせる」と「誠実にやる」という二つの手法があると思っています。
 前者の場合は,例えば宣伝に力を入れれば,「そこまで言うなら一度プレイしてみるか」という人が増えます。実際にプレイして面白ければ「言うだけのことはある」となりますが,極端な話,つまらないと「だまされた」と感じてしまうわけです。つまり,お客様の期待どおりのものを提供できないと,ものすごく怒られてしまうんですよね。
 ですから,事前に大々的な発表を行うのではなく,最初から今回のようなやり方をあえて選んでいるんですよ。

4Gamer:
 ただ,どちらのパターンでも,面白くなかったらダメ出しされるのは同じですよね。

杉浦氏:
 確かに,1回目でコテンパンにダメ出しされると,2回目以降で悪い印象を持つ人が増えたり,良くない噂が広まったりするかもしれない,という怖さはありました。
 ただ,我々がこの4年間,「モンスタハンター フロンティア オンライン」(PC/Xbox 360)を運営してきた経験から言うと,バカ正直なほど誠実にやるほうが得るものも多いですし,お客様との関係も良好になります。ですから「イクシオン サーガ」も誠実にやろうと,最初から決めていました。

小野氏:
 今はもう,ネットワークやコミュニティを通じて,お客様はさまざまな情報を持っていますから,我々がそれに歩調を合わせるのは,メチャメチャ大変です。
 でも,変化球を使ったり,あるいは何かを隠したりするような手法が通用すると思っているのは発信する側だけで,お客様には通用しません。結果的にいいのはどちらかと言ったら,杉浦の言う誠実さのほうなんです。

4Gamer:
 良い面も悪い面もオープンにするというど真ん中の直球を投げて,フェアな評価をしてもらおうということですか?

杉浦氏:
 アンケートなどで,よく「そのタイトルを遊んでみたきっかけ」という項目がありますよね。十数年前ならテレビCMという回答が大半を占めていましたが,今のオンラインゲームでは,口コミやレビューが中心になっています。
 そういう状況ですから,私達が誠実に開発/運営していくことで,お客様の口コミやレビューなどいい形でほかのお客様に伝われば,人は増えていくはずだと考えています。もちろん,完全にお客様任せではなく,そのためには何が必要かなどは,理論立てて準備をしています。

画像集#008のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた


3か月で全面作り直しを実現できたのは開発チームの“本気”と“やる気”


4Gamer:
 率直にお聞きしますが,開発隊員から寄せられた意見や要望には,ほかのタイトルと比較して「つまらない」というものが多かったのでしょうか。

小野氏:
 もっと根本的な部分での不満が多かったと捉えています。
 全員で戦うゲームなのに何かしっくり来ない。自分の分身としてもしっくり来ないし,その分身に与えられた機能もしっくり来ないという,ゲームとして初歩の初歩といえるところで引っかかったのかなと。

4Gamer:
 いわゆる“手触り”の良くないゲームになっていたということですか?

小野氏:
 ひょっとすると,手触りの良し悪しを論じる以前の問題だったかもしれませんが,オンラインゲームのチーム戦として,手触りが悪かったのは確かだと思います。
 例えば,「デビル メイ クライ」であれば,“この世界”で“この人”が“魔王を倒すために成長していく”というゲームですから,主人公のダンテにキャラクター性を持たせて,段階的に動きを良くしていくことができます。
 しかし「イクシオン サーガ」の場合,初っ端からプレイヤー同士が戦いますから,出会った皆でどう戦うのかを考える必要があります。その考える部分が狭くなっていたのではないかなと。

4Gamer:
 開発チームが事前に想定したものが,プレイヤーにとって実際に必要なものとマッチしていなかったという感じですか。

小野氏:
 もちろん,前回我々は,カプコンの考え方とノウハウを全面的に投入して,できる限りのものを必死に作りました。決して,「この程度で大丈夫だろう」なんて妥協はしていません。
 しかし結果から言うと,今,PCのオンラインゲームでチーム対戦をしたいという人の要望にはマッチしていませんでした。だったら,マッチするものにするしかないということで,この2〜3か月,開発してきたわけです。

画像集#009のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

4Gamer:
 作り直したことで,比較されるべきタイトルと同じ土俵に立てるわけですか?

小野氏:
 もちろん,全部が実現できているかどうかはまだ分かりませんが,実現できていたなら,第2次バトルαテストでは,ほかのゲームとの比較のような意見も出てくるんじゃないでしょうか。
 そうなれば,開発チームとして「お客様のご意見はこうだけど,『イクシオン サーガ』に入れてバランスは大丈夫だろうか」という検証の段階に進めるようになります。そういった議論は,ゲームとして本格的になってきて初めてできることなんですよ。

4Gamer:
 今回は,そうした一つ上のレイヤーでの議論がなされそうですか?

小野氏:
 何かもう一つくらいは“ヤマ”があるだろうと予想はしていますが,開発チームが頑張った成果を見ていますので,ひょっとしたら皆さんの期待を上回る可能性もあると思っています。

4Gamer:
 見た限りでは,前回とは別のゲームと言ってもいいくらい,さまざまな点で変更が加えられていますが,それを3か月足らずで成し遂げた原動力とは何でしょう?

杉浦氏:
 まとめてしまえば,開発チームの本気とやる気ですね。

4Gamer:
 素人考えだと,それだけでどうにかできる変化ではないように思うのですが……。

小野氏:
 もちろん,開発環境やベースとなるシステムといった技術的な部分が整っていたからこそですが,結局は本気とやる気に尽きますよ。
 というのは,ゲーム開発の現場では,開発期間の大半を迷って過ごすんです。

4Gamer:
 迷う,というのはどういうことですか?

画像集#016のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
小野氏:
 全部のゲームがそうだとは言いませんが,コンシューマゲームでも,追い込みとなる最後の2〜3か月で内容ががらりと変わった,というタイトルが山ほどあります。じゃあ,何で開発期間が3〜4年もかかるかというと,試行錯誤をして迷っているからです。それが,いいゲームにたどり着くために必要な過程でもあるんですよ。
 先にお話ししたとおり,「イクシオン サーガ」は,カプコンと開発隊員が,この先何年間もずっと遊べるゲームを一緒に作り上げていく,というコンセプトを掲げています。それに対して,開発隊員の皆さんがさまざまな意見や要望を書いてくださったので,迷うことなく「こういうことなのか」という答えにたどり着けたわけです。

4Gamer:
 なるほど。コンシューマゲームの開発なら,自分達だけで試行錯誤して答えを出さなくてはならないところを,プレイヤーからの直接意見をもらったことで,迷うことなく答えが出せたと。

小野氏:
 そうです。あと,「MHF」を通じて学んだことなのですが,お客様のご意見やご要望を,クリエイターとして素早く受け入れられるようになったということも大きいですね。
 当たり前ですが,ご意見やご要望は,たいていの場合において,お客様の言うことが正しいんです。以前は,お客様からいただいた意見が自分の考えと食い違っていたときなどは,「えっ,本当に?」というように,疑ってかかる部分が少なからずありました。
 それが今では,「お客様が言うのだからまず試してみよう」「その上で,よりゲームが面白くなるように工夫しよう」という考え方がすぐできるようになっています。だからこそ,スクリーンショットやアクションの動画を少し見ただけでも,違うものになったと言っていただけるような変更を,短い期間で実現できたんです。

画像集#001のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

4Gamer:
 ただそれだと,プレイヤーの意見や要望に振り回されて,ゲームとしての軸がぶれるという懸念も出てきませんか? 

小野氏:
 もちろん,ディレクターは,「こういう戦闘にしたい」「こういうアクションを見せたい」「こういう戦略を立ててほしい」といった基軸を持っていて,その部分がブレることはありません。実際,開発隊員の皆さんも,その基軸に沿った遊び方をしていただけていると捉えています。
 でも,その上にある導線に関しては,今の「イクシオン サーガ」は振り回されてもいい段階にあります。一番下にあるルールの部分は変わりませんが,皆さんが気持ちよく遊べるように上にある部分は変えていかないと,意味がないですからね。

4Gamer:
 なるほど。それを聞いて安心しました。

画像集#017のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
小野氏:
 その部分はある意味,「ストリートファイター」シリーズと似ているかもしれません。 シリーズの原点,ルールブックとなるのは「ストリートファイター II」です。「ストリートファイターIV」シリーズでは,その上の部分を変えることで新しさを提供しているのですが,ときどきユン/ヤンのような,ルールから外れた存在が生まれることもあります。そうなるとプレイヤーの皆さんが一斉に怒るので,「ごめん,ごめん」と修正することになるわけです。
 そういう意味では,振り回されると言うよりも,皆さんから意見をいただいて,より遊べるものに仕上げていく,という表現が正しいでしょう。

杉浦氏:
 あとは運営チームの力量ですね。開発隊員の意見・要望は,運営チームから開発チームに伝えるのですが,重要なものには「真剣に受け止めてほしい」など,一言添えるなどしています。
 そうやって寄せられた意見・要望にきちんと優先順位を付けないと,結果として開発チームを振り回してしまうかもしれません。運営チームには,そういった重要度を判断する精度の高さが必要になるわけです。

4Gamer:
 「イクシオン サーガ」の開発/運営チームは,MHFのチーム同様の意識を持っているようですが,かけ持ちや分割ではなく,別チームなんですよね?

杉浦氏:
 ええ。MHFのイベントなど,機会があるごとに皆さんに説明させていただいていますが,まったく別のチームです。MHFのチームを半分に分けたのではなく,人材を新たに招集しています。

小野氏:
 ただ,「イクシオン サーガ」チームの中核となっている数名は,かつてのMHFチームのメンバーです。
 したがって,MHFで学んだ考え方は,DNAとして確実に「イクシオン サーガ」のチームにも共有されています。それが開発/運営を1社でやっていることの大きなアドバンテージだと捉えています。
 両チームとも同じフロアで並んで仕事をしていますし,カスタマーサポートも同じフロアですからね。お客様からどんなご意見/ご要望が来ているのかも,すぐに共有できます。

杉浦氏:
 ちなみに,カスタマーサポートのチームは,フロアの中心の位置にいるんですよ。開発/運営のスタッフは,どんなご意見/ご要望が来ているのかすぐに聞けるんです。


今後の展開は第2次バトルαテストの結果次第。必要なら再度作り直す可能性も?


4Gamer:
 実機でのデモを見て,本当に大きく変わったと感じると同時に,動作に必要なスペックが高くなるのではないかとも思ったんですが,そのあたりはいかがですか?

杉浦氏:
 第2次バトルαテストで,要求スペックが極端に上がるということはないです。

小野氏:
 だいぶ綺麗になったように見せてはいますが,実はそれほど処理は重くなっていないんですよ。

杉浦氏:
 まだテスト段階なので,推奨スペックを少し高めに表記しているということもありますが,現実的には,MHFの推奨スペックを満たしていれば十分に遊べるレベルに落ち着くのではないかと思います。

4Gamer:
 ただ,PCの必要/推奨環境は,MHFより少し上がっていますよね。

画像集#018のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた
杉浦氏:
 以前に発表させていただいたとおり,「イクシオン サーガ」は2012年夏のサービスインを目指しています。サービスイン後,大型のアップデートを数回重ねると,あっという間に2013年になってしまいます。そうした時間の経過も踏まえて,スペックを決めているという部分もあるんです。今は要求スペックが少し高めに感じられても,1〜2年後にはそれほどでもないくらいになるのではないでしょうか。

4Gamer: というと,現行のミドルクラスPCで十分ということですか。

小野氏:
 ええ。グラフィックスカード2枚差しといったハイスペックPCまでは用意しなくても大丈夫です。
 ただ,最終的な必要スペックは,今回のバトルαテストの結果を踏まえて決めるつもりなので,着地点をどのあたりにするかは,まだ決めていません。
 アクションゲームなのでエフェクトなどの効果が入らないと面白味が半減しますが,一方,エフェクトこそが処理に負担をかける一番の要因という側面もあります。
 今回のテストでは,まず最高レベルのグラフィックスを出して,その下位をどう設定していくかを決めていくうえで,そのバランスをどうすればいいのか,確認したいんです。 もちろん,サービスインするときには,環境に合わせて任意に設定を変更できるような仕様で設計を進めています。

4Gamer:
 今回は,ここまで見せられるという“上”の部分を提示すると。

画像集#002のサムネイル/「イクシオン サーガ」第2次バトルαテスト直前インタビュー:前回の内容を全面的に作り直したという真相を,小野義徳氏と杉浦一徳氏に聞いた

小野氏:
 第2次バトルαテストではまず,8対8で戦うゲームの面白さとはどこなのかという共通認識を確立します。そのうえで,「グラフィックスはここまで表現できますがどうですか?」という提示もします。そうすることで,のちのち「自分のPCではまったくエフェクトが見えない」というような状況が発生することを回避するわけです。

4Gamer:
 ちなみに,第2次バトルαテストは前回よりも期間が短いですが,何か理由があるのですか?

杉浦氏:
 開発隊員の皆さんから寄せられるご意見/ご要望が,だいたいそのくらいの期間で出揃うからです。前回のテストでご意見を寄せていただいた開発隊員の方が多くいらっしゃることが分かりましたので,短い期間でも,密度の高いレビューをいただけると判断しました。
 また,あまり長く続けると,その分,開発に着手するのが遅くなるという事情もあります。サクッとテストして,サクッと開発に反映したいというわけです。

4Gamer:
 それでは「イクシオン サーガ」の今後の展開はどうでしょう?

小野氏:
 正直,第2次バトルαテスト次第です。うまくいったら,今度は遊びのバリエーションを増やすことになりますが,ゲームの根本的な部分で多くの意見・要望が集まれば,また作り直します。
 今はまだ本当にベースの部分だけですが,オンラインゲームはそれだけでは成立しません。ベースの上に「こういうものを乗せます」というところを見せて,それで「うん」と言ってもらえたら,さらに角度を変えたり,色を付けたりしていきます。
 ともあれ,まだベースの部分に「OK」と言ってもらえていない,恋愛で言えば付き合ってすらいない状態ですから。

4Gamer:
 当面の目標は,付き合ってという問いに「OK」と言ってもらうことであると。

小野氏:
 ええ。OKが出たら,次の目標は二人でディズニーランドに行くことです。そこで「グループ交際から始めましょう」と言われたら,αテストをもう一回ですかね(笑)。

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“触ったときの気持ちよさ”と開発/運営が一体となったスタイルで,カプコンらしいオンラインゲームに


4Gamer:
 2度目となる「イクシオン サーガ」のバトルαテストで,ぜひここを見てほしいという部分を教えてください。

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小野氏:
 3職種の役割を明確化した部分と,ストレスを感じないようにプレイの気持ち良さを優先したところですね。ストレスを感じるとすれば,プレイヤー各自が自分のプレイ技術に対していらだつくらいのつもりで仕上げました。
 言ってみれば,前回はカプコンらしい──つまり,カプコンがルールを引いたアクションゲームになっていました。例えば,「動きが遅い」というご意見をいただきましたが,その裏には,「チーム全員で遊ぶゲームなのだから,きちんと間合いなどを考える時間が必要だろう」という理由付けがあったんです。
 しかし,第2次バトルαテストではそれを廃して,気持ち良さとストレスのなさを優先しました。ここでようやくスタートラインに立てたと思いますので,ゲームバランスはこれで合っているのか,違うならどう調整すればいいのか,というところまで確認していただきたいです。
 そして,全部マルじゃないかもしれないけれども,マルを付けたところは褒めていただきたいというのが希望であり,本音です(笑)。

4Gamer:
 そういえばMHFでも,評判がいいときは何の反応もないとおっしゃっていましたね。たまには,がんばったらほめてほしいと。

小野氏:
 ええ,ほめられて伸びるタイプなので(笑)。

4Gamer:
 運営面では,どこを見てほしいと思っていますか?

杉浦氏:
 この規模のタイトルを全面的に作り変える意思決定をし,3か月でそれを成し遂げたことは,国内のオンラインゲームメーカーとしては例のないことだと自負しています。
 これは,私達がMHFでの開発/運営経験を通じて学んだことを「イクシオン サーガ」に投入できているからです。今回の大掛かりな変更をスピーディに展開できたことで,「イクシオン サーガ」の行動力を示すことができたと思います。今後も,本質的な部分が改善されないようなことはないですし,ここまで変えることができた,開発チームのやる気を評価していただけると嬉しいです。

4Gamer:
 引き続き,開発隊員の意見・要望にはきちんと向き合って,ゲームに反映させていくということですね。

小野氏:
 他社とは異なるサービスをしようと考えるなら,開発スタイルも変えなければならないということを,MHFを通じて学びました。そしてMHFのサービスを4年続けた中で,さまざまな意見や要望をもとにした,スピード感のある開発を可能にしてきました。
 とはいえ,例えば「ピンクが欲しい」と言われたら,そのまま実現するのではなく,「同じピンクでもこっちのほうがいい」といわれるようなものを提供するのが,オンラインゲームのクリエイターであり,また開発/運営チームのあり方だと捉えています。
 次はβテストになるのか,それとも3回目のバトルαテストがあるのか,今回の結果を見ないと分かりませんが,開発/運営チームのフットワークの良さを確認していただきたいですね。

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4Gamer:
 では,そろそろ時間も迫ってきたので,最後の質問とさせてください。「イクシオン サーガ」におけるカプコンらしさとは何でしょう?

小野氏:
 うーん,難しい質問ですね……。オンラインゲームに必要な“手触り感”でしょうか。「鬼武者」や「デビル メイ クライ」,あるいは「魔界村」をはじめとした,カプコンのコンシューマ/アーケードゲームには,カプコンならではの“触ったときの気持ちよさ”があったと思います。
 「イクシオン サーガ」では,そういった手触り感をオンラインゲーム,つまり複数のプレイヤーで遊ぶゲームで実現することを目指しています。「ああ,やっぱりアクションのカプコンだね」という感じを,オンラインゲームという分野でも残したいです。

杉浦氏:
 カプコンは,歴史のあるゲームメーカーですが,オンライン事業はまだまだ始まったばかりです。
 「イクシオン サーガ」では,運営スタイルでカプコンらしさを表現しようと努力しています。そうであるがゆえに,こうしてバトルαテストを繰り返しますし,開発隊員の皆さんからご意見をいただく場を設けて,細かくフィードバックをしています。
 おそらく,ほかにないこうした手法全体が,運営チームの提示するカプコンらしさと言えるのではないでしょうか。また,こういうことができるからこそMHFはうまくいっていると自負していますし,「イクシオン サーガ」もそれに続くと予想しています。

4Gamer:
 ありがとうございました。


 数多くのオンラインゲームがサービスされ,またコンシューマゲームの多くでオンライン対戦が提供されている現状で,「イクシオン サーガ」をプレイしてもらうには,そのタイトルならではの魅力を提示する必要がある。
 しかし,それがあまりうまくいかなかったのは,前回のバトルαテストの公式レポートや,開発隊掲示板に書き込まれたさまざまな意見から読み取れるところだろう。
 たとえば,前回のバトルαテストにおいて,筆者を含めたテスター達が最初に直面した壁は,オンラインゲームの対戦コンテンツを,操作方法もルールもよく分からないまま,いきなりプレイすることになったことだったと思う。何をどうすればいいのか把握できないまま勝負が決まってしまい,結局,プレイ後にはモヤモヤした感覚しか残らなかったのだ。

 第1次バトルαテストの結果を踏まえて,「イクシオン サーガ」の開発/運営チームが出した結論は,全面作り直しである。この大胆な施策は,カプコンの開発体制と企業規模,そしてMHFでの実績があるからこそ可能だと言うのはたやすい。
 しかし,作り直されたものは,筆者が一見して「以前と全然違う!」「このキャラクターを動かしてみたい!」「このスキルを実際に戦場で使ったらどうなるのだろう?」と感じさせられる魅力的なものだった。これだけのものを,前回のテストからわずか3か月足らずで作り出してきたのは,やはり驚きである。
 インタビュー中で小野氏と杉浦氏が言及していたように,意見や要望から重要度の高い部分を読み取る運営チームの精度の高さと,それを素早くゲームに反映させる開発チームの力量,そして企業としての意思決定の早さと,どれ一つ欠けても実現できなかったはずだ。

 無論,そうはいっても,これはまだ用意された“器”の話。対戦ゲームとして面白いかどうかは,また別の話である。
 小野氏が言うように,「イクシオン サーガ」はまだゲームとして評価されるのかどうかすら,テストが始まってみるまで分からない状態だ。生まれ変わった「イクシオン サーガ」と,カプコンの運営・開発チームの本気とやる気を確かめてやろうという人は,ぜひ開発隊員として第2次バトルαテストに応募してみてほしい。

「イクシオン サーガ」,第2次バトルαテストを11月25日から実施。4Gamer読者枠1000名分を用意&応募受付を本日スタート


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