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無料で始められると噂の新作TCG「Z/X」を「カードゲーム感謝祭 2012 春」の会場で実際に遊んでみた
各カードゲームの大会に加えて,新作TCG「Z/X(ゼクス) Zillions of enemy X」(以下,ゼクス)の初心者向け体験会も開かれていたので,今回は実際に触れてみた感想も交えつつ,ゼクスがどんな作品なのかを紹介していこう。
なお,会場ではゼクスのプロデューサーを務める久保田俊介氏に話を聞くこともできた。自身もさまざまなTCGをプレイしてきたという久保田氏は,ゼクスをどのように成長させていこうと考えているのか。
戦略と運,どちらか一方では勝てない
「楽しく悩ましい」バランス
ゼクスでは,3×3マスの専用フィールド上に,二人のプレイヤーがカードを出し合って攻防を行う。フィールドの中央上部と中央下部にはプレイヤースクエアと呼ばれるマスがあり,ここにはプレイヤーの分身となるプレイヤーカードが置かれている。そして,このプレイヤーカードに攻撃を1回加えるたびに,ダメージを受けたプレイヤーのライフが1点減る。ライフは合計4点で,これが先になくなったプレイヤーが負け,というわけだ。
リソースカードは専用カードではなく,手札のゼクスカードや単発で効果を発揮するイベントカードから任意のものを,1ターンに1枚だけフィールドに出して,リソースとして活用する。強力なカードを使うためには多数のリソースを必要とするのだが,このあたりのルールは,TCGのグローバルスタンダードにほぼ則っていると言っていいだろう。
一方で,攻防や捨て札の処理はかなり特殊だ。
まず,ゼクスカードは相手プレイヤーのプレイヤーカードおよびゼクスカードの上でなければ,3×3マスのどこに置いてもよい。基本的にゼクスカードは置かれたマスに隣接するマス上しか攻撃できず,移動も不可能だ。よって,プレイヤーに攻撃するためには,プレイヤーカードに隣接する3マスのいずれかにゼクスカードを置く必要がある。逆に,この3マスに相手のカードを置かせなければ,それだけ防御が厚くなることを意味する。
攻防はターン制だが,攻撃判定は攻撃側にのみ発生する。攻撃するゼクスカードが,攻撃されるゼクスカードのパワーを上回っていれば撃破,そうでなければとくに何も起こらない。防御側はゼクスカードによる能動的な防御はできず,自分のターンに布陣を固めつつ,相手のターンでも使用できるイベントカードを利用して,攻撃を防いでいくことになる。
この3×3マスの攻防はゼクスの特徴といってもいいが,さらに「イグニッション」という要素が,本作のランダム性とデッキ構築の難しさに大きく影響している。
攻防によって撃破されたゼクスカードは,そのままトラッシュにはいかず「チャージ」と呼ばれるエリアに最大4枚まで置かれる。イグニッションフェイズでは,このチャージにあるカードの回数だけ,山札の1番上からカードを公開するイグニッションを行えるのだが,このとき,公開されたカードにイグニッションアイコンがあると,なんとそのカードはコストを払うことなくそのままフィールドに置くことができる。
あらゆるゼクスカードはフィールドに置いたターンから行動できるため,たとえば4回イグニッションを行い,運良く4枚のイグニッションアイコンのついたカードを引くことができれば,たとえピンチでも,その後のメインフェイズで一挙に形勢を逆転できるかもしれないのである。
イグニッションフェイズを有効活用できるかどうかは,本作において非常に重要になってくる。同じデッキを使えば,イグニッションの“引きの強さ”によっては,初級者でも上級者に勝てる可能性が出てくるわけだ。
こういった,実力だけではどうにもならないランダム性を,比較的強めにゲームへと反映したのは,ゼクスが今の市場にあるカードゲームの“中間”を目指す作品だからだという。
「最近はあまり考えることなく運の要素で勝敗を決するTCGが流行で,そうではないTCGはといえば,今度は逆に非常に難しいコアゲーマー向けのものばかり」と話すプロデューサーの久保田氏は,ゼクスのバランスを「楽しく,悩ましい」と表現する。
「アクエリアンエイジ」や「ディメンション・ゼロ」などで培ったノウハウを元に,ゼクスでは初級者でも楽しめるけれど,天井はそこそこ高いといった,絶妙なバランスを心がけているようだ。
フリーミアムとメディアミックスで
TCGの垣根を低くする施策
さて,ゼクスは体験会会場で構築済みデッキを配ったり,公式サイトで公開されているカードを印刷して遊べたりと,無料で始められるTCGという比較的珍しい取り組みを行っている。
これは,ソーシャルゲームのフリーミアムモデル(基本プレイ無料)を参考にしたもので,構築済みデッキだけでも十分楽しめるが,より高い機能を求める人は有料のブースターパックなどを混ぜて遊ぶことができるという試みだ。
製品の発表から約1か月,ゴールデンウィークから始まった体験会の参加者は1000人を越えたとのことで,この取り組みの第1段階は成功しているようだ。実際,本稿でゼクスのルール説明はほとんど終えているので,あとは公式サイトにあるフリーカードをダウンロードすれば,今すぐにでもゲームを始められる。ほかのカードゲームにはないとっつきやすさである。
さらに久保田氏は,ゲーム化やメディアミックスに関してもコメントする。日本一ソフトウェアが開発するコンシューマゲーム版,ガマニアデジタルエンターテインメントが開発するオンラインゲーム版共に,共通の世界観は持つが,システムは各社の特徴を活かしたものになる可能性が高いという。すでに決定しているコミカライズも,そんなゼクスの世界観を広めるための施策だ。
「カードゲームの界隈だけでは狭い」という久保田氏は,ゲームやコミックをとおしてゼクスの世界に触れたプレイヤーには,同じ世界観を持つカードゲームにも手を伸ばしてほしいと話す。
このほかにも,ニコニコ動画やTwitterとの連動キャンペーンを多数行うゼクスは,プレイヤーと開発者の距離が比較的近い作品だ。話の最後に久保田氏は「面白かったというコメントから,自分が打ち砕かれるような批判まで,どんなものでも構いませんので,感想や意見をいただけると嬉しいです」と笑いながら話していた。
「Z/X(ゼクス)Zillions of enemy X」公式サイト
- 関連タイトル:
Z/X -Zillions of enemy X-
- この記事のURL:
(C)BROCCOLI/Nippon Ichi Software, Inc.