プレイレポート
可愛らしい見た目と侮るなかれ。「パペッティア」は,この秋SCE Japanスタジオが送る大作アクションだった
これまで公開されてきたスクリーンショットなどを見ていると,比較的オーソドックスな横スクロールアクションというか,人形のキャラクターとコミカルな雰囲気が「リトルビッグプラネット」っぽいというか,なんとなくカジュアルで低年齢向けを意識したタイトルのように思えてくるのではないだろうか。実のところ,筆者もそう思っていた。
しかし,それはまったくの誤解だった。今回,本作が6月に開催されるE3のSCEブースでプレイアブル出展されるとのことで,事前に同様のバージョンをプレイさせてもらったのだが,筆者が本作に抱いていたライトなイメージとはかなり違った内容だったのである。本稿ではその正直な感想をお届けしていこう。
今回プレイしたのは,ほぼ完成に近い開発中のバージョンで,ゲーム冒頭の一番最初のステージと,後半の難度が高めのステージを体験できるというものだった。
人形劇がモチーフというだけあって,本作では劇場をイメージした画面の中で,常に「劇」が行われる感じでゲームが進んでいく。声優の藤原啓治さんの前口上が愉快なオープニング,主人公クウタロウとそのパートナーである空飛ぶ猫「インヤン」が繰り広げるチュートリアル,そしてゲーム本編と,徹底してコミカルな寸劇が展開されていくのだ。
このあたりの演出は,グラスホッパー・マニファクチュアの「Black Knight Sword」(PS3/Xbox 360)に似ていると感じたが,あちらは平面的で影絵に近いイメージだった。一方本作は,同じ人形劇でも,次々と入れ替わる舞台装置の中,木彫りの立体的なパペットが生き生きと動くので,見た目に派手な演出となっている。
本作の最大の見どころは,この舞台装置の仕掛けがとにかく凝っており,アクションステージの最中であっても,目まぐるしく舞台が入れ替わっていくことにある。劇の中に「同じシーン」がないのと同じように,本作では少し進めるごとに違うシーンへと舞台が切り替わり,それに合わせて敵や演出なども次々と変化していくのだ。アクションゲームのステージというと,雰囲気を統一するために,ステージ内で背景や演出の一部などを使い回すこともあるが,本作にはほとんどそれが見られない。これでもかというぐらい,さまざまなシーンが同じステージ内に盛り込まれており,プレイしていて愉快で飽きないのだ。
また,ゲーム中は常にキャラクターやナレーターがしゃべり続けているのも劇らしい演出で,むしろセリフのないシーンの方が少ない気さえする。このテンションがステージの最初から最後まで続いていくのはとにかく痛快だ。セリフの内容は少々ブラックなのだが,これは本作でクリエイティブディレクターを務めるギャビン・ムーア氏が,イギリスのコメディグループ「モンティ・パイソン」を好きな影響でそうなったらしい。
さてゲーム本編の手触りはというと,主人公のクウタロウが魔法のハサミ・カリバスで行う少し変わったアクションギミックが,プレイのカギとなっている。ゲームでハサミを持ったキャラクターというと,敵キャラにはいくつか覚えがあるものの,主人公というとちょっと思いつかない筆者であるが,ともあれ彼は,自分の身長と同じぐらいの大きさのハサミを使って,敵を切り刻んでいくのだ。
[□]ボタンで敵を切って攻撃できるほか,ステージ上の切れそうなオブジェクトに向かって[□]ボタンを押すと,それもカットできてしまう。カットできるオブジェクトが連続して配置されている場合は,[□]ボタンを連打することで,カットをしながら空中を移動する「エアカット」も可能だ。切る対象がなくなると落下してしまうのでコツがいるが,ジョキジョキと切って進んでいく感覚はなかなか心地良い。基本的には,このハサミによるアクションと,移動やジャンプでステージを進めていく感じだ。
ちなみにクウタロウは,頭を盗まれて人形の姿になってしまった少年なので,ライフゲージなどは存在しない。かといって,敵に接触すると一撃で死んでしまうわけでもない。パペッティアの世界では,人形はヘッド(頭)さえあれば生存できるのだが,これをステージ中のいろいろな場所で調達できるのだ。敵からダメージを受けると,このヘッドを落っことしてしまうが,素早く拾えば問題はなし。もし拾えなくても,最大で3つまでストックしておけるので,ヘッドをすげ替えれば大丈夫だ。ただし,ストックも含めてヘッドがすべてなくなるとミスになってしまう。「人形は頭が命」というわけである。
この現地調達できるヘッドは100種類あり,クリア後のコレクションアイテムになるとともに,特定のヘッドを特定の場所で使うと,ボーナスステージが発生するなどのギミックも用意されている。また,ゲームを進めていくと,これらとは別に「ヒーローヘッド」なるものが入手でき,クウタロウが行えるアクションが増えていく。
面白いのは,本作は2人での協力プレイに対応しており,このパートナーをほかのプレイヤーが動かすことができるということ。2人で協力する場合は,アイテムを取るだけでなく,敵を倒したり,敵の攻撃やステージ上の障害物を消したりできるようになり,非常に頼もしい存在となる。
ただし,逆にクウタロウの頭をもぎ取ったり,わざと障害物を消さずに焦らせたりと,イタズラもできてしまう。どう遊ぶかはプレイヤー次第だが,今回パートナーをプレイした担当編集は「魔が差した」などと言ってしょっちゅう邪魔をしてきた。
協力プレイを行う時は「マルチプレイモード」のようなものを選択する必要はなく,2プレイヤー側のコントローラを操作するだけでシームレスに協力プレイへと移行する。やめたいときは,しばらく操作せずに放っておくだけで,操作権が1プレイヤー側に戻る仕組みだ。
開発陣によると,この仕組みはメインプレイヤーが本作をリビングでプレイをしているとき,前述の見ているだけでも面白いステージ展開に興味を持った家族や友達が飛び入りで遊ぶことを想定しているそうだ。かなり昔の話で恐縮だが,筆者はこれを見て,メガドライブの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」を思い出してしまった。ただし本作での協力プレイの存在感は同作よりはるかに大きい。
というのも,本作は1人でプレイするとだいぶ歯ごたえある難度なのだが,2人でプレイした場合は,難度がグっと下がるようなレベルデザインになっているのだ。協力プレイがクリアに必須というわけではなく,パートナーはいつでも参加・離脱ができるという設計なので,オンラインが主流のマルチプレイとは少し違った楽しみを味わえるのではないだろうか。
こうしたリビング向けの仕組みや,全体的な雰囲気やグラフィックス,そしてハイクオリティな作り込みを見ると,なんとなく海外産ゲームのように思えるかもしれない。ところが,実は本作はSCEジャパンスタジオが製作している純国産のアクションゲームで,同スタジオとしては「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動」に次ぐ,完全内製のタイトルなのだそうだ(ディレクターのギャビン氏はイギリス人だが日本が大好きらしい)。PS3というハードが成熟期に入っているとはいえ,これだけ密度が濃く,細かい部分までとにかく作り込まれたアクションゲームを出してくるあたり,さすがはファーストパーティという印象である。
ギャビン氏を筆頭に,SCEジャパンスタジオの精鋭クリエイター達が手掛けた,渾身の一作になりそうなパペッティア。ぜひ発売の9月まで注目していてほしい。
クリエイターメッセージ
ギャビン・ムーア氏(中央),水谷 崇氏(右),佐藤一信氏(左)
ギャビン・ムーア
SCEヨーロッパ「The Getaway」にリードアニメーターとして携わり,2003年にSCEジャパンスタジオに入社。「SIREN」シリーズへリードアニメーターとして参加。本作ではディレクターをつとめる。
「立案のキッカケは息子と一緒に遊べるゲームを作ること。結果コアゲーマーとライトユーザーが一緒に遊べるゲームが作れると考えたからです。このゲームはリビングルームに笑い声を届けます。ぜひ家族,恋人,友人など大切な人と一緒にパペッティアの世界を楽しんでください」
水谷 崇
「METAL GEAR SOLID」シリーズ,「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS」でリードアーティスト。SCEジャパンスタジオではビジュアルアートグループをマネジメントしつつ,「サルゲッチュ」シリーズのテクニカルアーティスト,アートディレクターを担当。本作のプロデューサーをつとめる。
「SCEジャパンスタジオが自信を持ってお送りする,AAAアクションゲームです。流行に左右されない大娯楽作になっております。どうぞご期待ください」
佐藤一信
「SIREN」や「SIREN 2」とリードキャラクターデザイナーとして携わり,「SIREN : New Translation」はシステムディレクターとしてゲームデザイン担当。本作ではリードプランナーとしてゲームデザイン全般を担当。
「パペッティアは1人で遊ぶと歯ごたえのあるアクションゲーム,2人で協力すると難易度がグッと下がり,ワイワイ遊べるアクション+クリックゲームになるよう設計しております。1人で困ったときは家族や友人に直接助けてもらってください。きっと楽しんでいただけると思います」
「パペッティア」公式サイト
- 関連タイトル:
パペッティア
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