インタビュー
新作ソーシャルゲーム「ダークメナス」で,グラスホッパー・ユニバースが目指す“次世代”とは?
一人称視点を採用したガンシューティングタイプとなる本作だが,その最大の特徴は,Wi-Fiを介した同期プレイを実現している点にある。これにより,プレイヤー同士がリアルタイムで対戦/協力プレイを楽しめるのである。
本作のメインとなるモードでは,プレイヤーがさまざまなミッションの目的に沿って宇宙船内を探索していく。探索する部屋で地球外生命体「アビス」と遭遇すると戦闘に入り,アビスの各部位を直接タップすると攻撃が行える。一つの部位を破壊するとアビスは一定時間スタン状態となり,弱点部位を攻撃できるようになる。部位破壊を繰り返し,弱点部位に一定以上のダメージを与えれば,アビスを討伐できるというわけだ。
そのほか,連射はできないが威力の高いチャージ攻撃も行えるほか,アビスから受けるダメージを軽減するシールドも用意されている。
また,前述のとおり,同期プレイにも対応しているので,協力プレイ時には簡易チャットを使ってプレイヤー同士の意思疎通を図ることもできる。全般にスマートフォン向けのシンプルな内容ではあるものの,美麗な3Dグラフィックスとあいまって,かなり本格的なガンシューティングを楽しめる印象だ。
もう一つの「デブリ回収」モードは,文字どおり「デブリ」と呼ばれる宇宙のゴミを回収していく内容のミニゲームだ。操作は極めてシンプルで,スマートフォンの画面にタッチすると,表示されているデブリが次々に回収され,回収率が上がっていく。
デブリには種類があり,赤いデブリは回収すると爆発してダメージを食らってしまう。ただし,青いデブリを回収するとバリアが発生するので,これを利用すれば赤いデブリが爆発したときのダメージを回避できる。そのほか,ゲームを進めると登場する緑や金色といった効果の異なるデブリを駆使しながら,ハイスコアを目指すのだ。
このモードをクリアすると,報酬としてミッションで消費するカードキーを入手することもできる。すなわち双方のモードを交互にプレイすることで,ゲーム全体をより楽しめるというわけである。
今回,4Gamerでは,ダークメナスの魅力をはじめ,GhUの設立意図や今後の展望などについて,以下の3名に話を聞いた。
AppStore「ダークメナス」
Google Play「ダークメナス」
GhUは次世代ソーシャルゲームをグローバルに提供
まずは日本/欧米をターゲットに
4Gamer:
本日は,よろしくお願いします。今回は,ダークメナスについてお話をうかがおうと思っているんですが,その前にGhUがどんな会社なのかを教えてください。
GhUは,ディー・エヌ・エー(DeNA)とグラスホッパー・マニファクチュア(GhM)の合弁会社として,2011年11月15日に設立された会社です。
グローバルかつ次世代のスマートフォンに向けたソーシャルゲームを提供していくという目的を持っており,現在は,iOS/Android向けのゲームを開発しています。
4Gamer:
“次世代”について,もう少し教えてもらえますか?
方野氏:
フィーチャーフォンのソーシャルゲームは,[5]キーを押しているだけで進行する──いわゆる“5クリ”のゲームが一般的ですが,それをそのままスマートフォンで提供しても,プレイしていて物足りません。また,グローバルに視野を広げると,海外のモバイルソーシャルゲーム市場はまだ未知数の部分が多く,日本のタイトルをそのまま輸出して成功したという事例も少ないです。
そこでGhUでは,DeNAさんが確立したソーシャルゲームプラットフォーム全般に及ぶノウハウに,GhMがコンシューマゲーム開発で培ってきた技術力や発想力を融合し,新たな方向性を展開していこうと考えています。
4Gamer:
最新タイトルとなるダークメナスも,そういった狙いが込められていると思いますが,従来のソーシャルゲームと比べて,大きく異なる,あるいは進化した要素には,どんなものがありますか?
方野氏:
やはり,アクション性の高いゲームでありながら,同期プレイをフィーチャーしている点ですね。今はWi-Fi環境が整ってきており,スマートフォンのゲームを自宅でジックリ遊ぶ方も増えてきました。そこで,より本格的なオンラインプレイを提供できないかと考え,少々リスキーではあるのですが,今回,開発に踏み切りました。
その一方,従来のソーシャルゲーム同様に隙間の時間にサクッと遊べるような要素も入れています。ある意味では,実験的なタイトルともいえますね。
4Gamer:
では,ゲームのモチーフとしてSFを選んだ理由を教えてください。
方野氏:
競合タイトルが少ないというのが,まずは挙げられます。日本では若干ニッチなモチーフですが,逆に固定観念がなく,自由な表現ができる点も魅力ですね。また,海外展開を視野に入れていますので,海外で受け入れられやすいジャンルであることも考慮しました。
ただ,欧米でSFモチーフのシューティングゲームというと,「Halo」シリーズが代表的ですが,ダークメナスではプレイヤーキャラクターの外観を含めて,デザイン部分でも差別化を図っています。
4Gamer:
Haloに限らず,欧米には多くのSFゲームタイトルがありますし,差別化は重要ですよね。
ダークメナスの海外展開は,主に北米と欧州を念頭に置いているということでしょうか?
方野氏:
ええ。メディアでも報じられているとおり,DeNAさんには海外展開への強い意向がありますし,欧米ではDeNAさんのマネタイズのノウハウが注目を集めています。そしてGhM自体は,以前から非常に欧米に強いデベロッパですから。
それらの観点から,まずダークメナスは日本と欧米で展開することに決めました。
課金システムはガチャに頼らない
新たなマネタイズを模索中
4Gamer:
これまでソーシャルゲームにおけるマネタイズはアイテムガチャが中心でしたが,2012年5月以降,風向きが変わっています。その状況下で,ダークメナスも,ガチャ以外の要素をフィーチャーしたマネタイズを考えなければならないと思うのですが。
方野氏:
KPIを日々チェックしたり,市場調査を行ったりと模索している段階で,正直なところ,まだ確たる答えは見つかっていません。
とはいえ,ガチャだけに頼るのであれば,わざわざダークメナスのようにリスクを含んだ内容にする必要はありません。カードではなく装備を集めるようにしたり,ゲーム性を高めたり,あるいは同期プレイを入れたりしたのは,この先はガチャ頼みではやっていけないという判断が開発当初からあったからです。
ダークメナスにもガチャは入っているんですが,その先の可能性を見いだせるような課金要素を盛り込んでいます。
具体的には,有利にミッションを進めたり,コンティニューしたりすることにお金を使っていただくような試みです。これらの試みの結果によっては,今後,ガチャを採用しないタイトルも出てくるかもしれません。
4Gamer:
コンティニューの課金というと,アーケードゲームのようにゲームオーバーになっても,お金を払えば続きが遊べるといったイメージでしょうか。
高屋氏:
そういうことです。例えばアビスと戦っている最中で,ゲームオーバーになったとします。ここでカードキーを使えば,ダメージを与えて体力を減らしたアビスと,そのまま戦い続けられるわけです。
このカードキーは,ログインボーナスとして一日に三回,一定数を無料で配布します。そして,もっと遊びたいという方に向けて,有料販売を行います。
4Gamer:
協力プレイをしている最中に,一人のプレイヤーだけ体力が尽きた場合はどういう扱いになるのでしょう? その都度,カードキーを使うのでしょうか?
高屋氏:
いえ,協力プレイ中は,参加プレイヤー全員で残機を共有します。残機を使い切ってしまったとき,参加プレイヤーがカードキーを持っていれば,コンティニューできます。
4Gamer:
なるほど,「モンスターハンター」シリーズに近いわけですね。
それでは,ダークメナスのゲーム部分について教えてください。プレイする上で,プレイヤー自身の腕前や技術はどの程度必要になりますか?
高屋氏:
基本的には,一般的なソーシャルゲームと同じく,ゲームの進行は武器や装備の強さに左右されます。そこに動体視力などのプレイヤーの資質が加われば,より有利になります。
4Gamer:
ゲーム全体のボリュームはどのくらいになりますか?
高屋氏:
サービスイン当初は,70前後のクエスト,15前後のミッションを用意しています。それにプラスしてイベントのステージがありますし,今後,アップデートでどんどん追加していきます。
インゲームイベント,ステージや武器の追加,新しいアビスの登場など,月に数回のアップデートを実施予定です。長い期間遊んでいただきたいですから,プレイしていて飽きが来ないよう,さまざまな追加要素を準備していますのでご期待ください。
4Gamer:
いわゆるやり込み要素としては,プレイヤー自身が着用する武器や装備のコレクションがありますよね。例えば実績システムのようなものはあるのでしょうか?
高屋氏:
実績ではないのですが,ほかのプレイヤーとスコアを競うランキングを用意しています。
方野氏:
デブリ回収モードでは,「グッド」や「エクセレント」など,テクニックに応じた数段階の評価を用意して,それぞれ報酬の内容も変えています。社内で実施したフォーカステストでは,Excellentを狙ってひたすらデプリ回収ばかりやっているスタッフもいたくらいですから,十分にやり込み要素になっていると言えます。
4Gamer:
今後,追加を予定しているシステムや機能はありますか?
杉山氏:
フレンド関連のやり取りの機能ですね。
フレンドのログイン状態を確認して,お互いに誘ったり誘われたりしやすくなるようにするなど,さらに気持ちよくコミュニケーションを取れるシステムを予定しています。
また,マッチングシステムの改良も,今後行っていきます。
高屋氏:
あとはアイテムのトレードに関して,MMORPGのフリーマーケットのようなシステムを用意して,プレイヤーがゲーム外で取引をしなくともいいような環境を整えようと考えています。
もっとも,フリーマーケットが最善策かどうかは分かりませんから,今でもさまざまな方向性を模索している最中です。
2013年内に複数のタイトルを展開予定
自社IPとのコラボも予定?
4Gamer:
話が前後してしまうのですが,ダークメナスのアイデアはいつ頃出たのでしょう?
2011年11月のGhU設立時に,企画の一つとして上がりました。最初はかなり難航しましたね。
高屋氏:
開発していく中で,仕様が次々に変わっていって……。当初は,企画を立てて仕様を切って,あとは作るだけのつもりだったのですが。
方野氏:
私達がこれまで手がけてきたコンシューマゲームの企画は「コレ,面白そうでしょう?」という勢いが重要だったりしたんですが,ソーシャルゲームの場合はデータ重視なので,少し戸惑ったというのが実情です。
4Gamer:
ソーシャルゲームの企画は,ここで何人プレイヤーが流入して,ここで離脱が予想されて……結果,これだけの利益になります,みたいな内容だとよく聞きます。
方野氏:
ええ,今も数字に追われています(笑)。
ただそれだけじゃなく,従来のカードバトルタイプとは異なるゲームですから,企画書や仕様書からは見えてこない部分があり,やってみて初めて分かることも多かったんです。それもあって,ダークメナスの開発にはずいぶん時間がかかってしまいました。それこそ,コンシューマゲーム開発と同様の“クラッシュ&ビルド”をやってきましたね。
杉山氏:
5クリタイプに,3つの選択肢を組み合わせたような簡単な仕様を試したこともありました。最終的に今の形に落ち着くまでには,本当に紆余曲折がありましたね。
方野氏:
結果,現在の形でいろんな方にプレイしていただいて,「面白い」という反応が返ってきているので,ひとまず安心しています。
4Gamer:
プレイしてみると,グラフィックスもプレイ内容も充実していますよね。基本無料のソーシャルゲームより,売り切り型のアプリにしたほうがいいのでは? という意見もありそうですが。
実際,「このクオリティなら,有料でも大丈夫なんじゃないの?」という意見をいただくこともあります。
方野氏:
もしもダークメナスが高い支持を得られるようであれば,ミッションに特化したスピンオフタイトルを作ってみたいですね。それを売り切りにするのかどうかは,また別途検討する余地がありますけれども。
4Gamer:
分かりました。
それでは,今後のGhUの展開について教えてください。すでにダークメナス以外のタイトルも複数開発中と小耳に挟んだのですが。
方野氏:
詳しいことはまだお伝えできませんが,それは事実です。繰り返しになりますが,GhUはすべてのタイトルにおいて,グローバルかつ従来なかった要素を掲げており,さらに新しい挑戦を盛り込んでいます。この挑戦には,例えばコンシューマゲームやMMORPGにある要素を,いかにソーシャルゲームに持ち込むかといったようなことも含んでいます。
まだ詳しくは言えないんですが,開発中のあるタイトルでは,これまでゲームにはなかったようなビジュアルに挑戦しています。
4Gamer:
今までにないビジュアルといますと?
方野氏:
横井軍平さんの言葉を借りるなら“枯れた技術の水平思考”で,ほかの分野では既出でも,ゲームとしては新しいものになっています。これ以上は,続報を待ってください。
4Gamer:
なるほど。これから2013年度にかけて,ダークメナス以外にもGhUのソーシャルゲームがサービスインすると考えていいですか?
方野氏:
今のところ,3タイトルくらいを予定しています。
4Gamer:
それぞれ,GhUが運営を手がけるわけですよね。運営面の方策として,従来のソーシャルゲームとは異なるようなものを考えていたりはしますか?
まだ具体的にお話できる段階ではないのですが,ほかのGhM/GhUタイトルとのコラボレーションをやってみたいという話はよくしています。
弊社タイトルでも,先にサービスインした「フロッグミニッツ」とダークメナスでは,プレイヤー層が大きく異なると思うんです。そこで,まずは「こういうゲームもあるんだ」と知っていただいて,「この会社のこのゲームも無料だから,一度遊んでみようか」「遊んでみたら面白かった」「この会社のゲームはいつも面白そうだ」という流れを提供したいですね。
方野氏:
また,これもアイデアレベルですが,MMORPGなどでいうところのMODを取り入れられないかとも話しています。あとは,GMが操作するモンスターが突然ポップして,それをプレイヤーが力を合わせて倒すようなGMイベントの実施とか。
当面は,普通に運営を進めて,サービスを軌道に乗せることを第一に考えなければなりませんが,余裕ができたらいろいろ挑戦したいですね。既存のスタイルを踏襲しつつ,その上に新しいものを乗せていく感じで。
4Gamer:
それでは最後に,ダークメナスをはじめ,今後のGhUのタイトルに期待する人に向けてメッセージをお願いします。
方野氏:
今,ソーシャルゲーム業界は,コンプガチャの問題で厳しい局面に立たされています。しかしGhUでは,これをピンチではなくチャンスと捉え,ガチャに頼らない新しいマネタイズを研究しています。
過去に例の時代に突入しており,なかなか結果が予測できないので難しい面も多々ありますが,GhUでは今後も新たな挑戦を続けていきますので,ご期待ください。
4Gamer:
ありがとうございました。
インタビューでも言及されているとおり,GhUの母体となるGhMは,日本のコンシューマゲームデベロッパでありながら欧米に厚いファン層を擁しており,ダークメナスもまた,日本だけでなく欧米をターゲットにしたタイトルである。新たな要素を数多く採用し,かつ当初から欧米展開を想定した日本産ソーシャルゲームという前例の少ないタイトルなので,正直なところ,どのような結果になるかはまったく読めない。
しかしその一方,現在主流のカードバトルタイプのように,完成されたシステムに絵柄や設定を乗せ変えただけのようなタイトルばかりでは,やがてプレイヤーに飽きられてしまうというのも想像に難くない。
ダークメナスをはじめとするGhUのタイトルが,GhMのクリエイティブとDeNAのマネタイズの融合体となり,ソーシャルゲーム業界に一石を投じ,その未来を牽引する存在を牽引する存在となることに期待したい。
AppStore「ダークメナス」
Google Play「ダークメナス」
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