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「Hearthstone」のe-Sports展開に関する特別講義が東京アニメ・声優専門学校にて開催。Blizzardのプロダクション・ディレクターが事例を用いて学生にレクチャー
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印刷2016/09/13 21:19

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「Hearthstone」のe-Sports展開に関する特別講義が東京アニメ・声優専門学校にて開催。Blizzardのプロダクション・ディレクターが事例を用いて学生にレクチャー

 2016年9月12日,Blizzard Entertainment(以下,Blizzard)のジェイソン・チェイズ氏が,「東京アニメ・声優専門学校」の北葛西校舎にて,e-Sportsに関する特別講義を行った。

Blizzard Entertainment プロダクション・ディレクター ジェイソン・チェイズ氏
画像集 No.018のサムネイル画像 / 「Hearthstone」のe-Sports展開に関する特別講義が東京アニメ・声優専門学校にて開催。Blizzardのプロダクション・ディレクターが事例を用いて学生にレクチャー

 チェイズ氏は,2008年にBlizzardに入社し,「Battle.net」チームのリード・プロデューサーとして活躍したほか,「StarCraft II」と「Diablo III」の開発にも携わった人物だ。
 現在は同社のオンラインカードゲーム「Hearthstone: Heroes of Warcraft」PC / iOS / Android,以下「Hearhstone」)のプロダクション・ディレクターを務めており,開発チームのマネジメントや戦略実行,人事,そして社内のほかのチームとのコーディネートなどを担当している。

 今回の講義では,チェイズ氏が東京アニメ・声優専門学校の学生に向けて,Blizzardがe-Sportsに取り組む意義や実際の活動を,「Hearthstone」の事例を交えて紹介した。

講義の冒頭では,Blizzardの歴史が紹介された。社屋の敷地に設置された銅像には,Blizzardのミッションステートメントである「Gameplay First」(ゲームプレイ第一)が刻まれているという
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 チェイズ氏によると,「Hearthstone」はもともとBlizzardの主要IPの1つである「Warcraft」の世界観やキャラクターを使ったカードゲームを作るという,小規模の企画だったとのこと。

 最初に考えたのは,すでにたくさんの競合タイトルが存在している中,誰もがより気軽にプレイを始められるカードゲームにすることである。チェイズ氏は,「それまでカードゲームに触れたことがない人でも,5分程度で面白いと感じられるもの」との説明を加えた。
 次に考えたのは,たとえ始めるのが容易であっても,ゲーム自体は奥深くなっており,マスターするのが決して簡単ではない内容にすることだった。この「親しみやすさ」「奥深さ」という2つのテーマを両立することは,極めて難度の高いミッションだったという。

15名でスタートしたという「Hearthstone」チームだが,今やかなりの大所帯となっている
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 その一方で,e-Sportsタイトルとして展開するためには「戦略・戦術的な側面」と「観て面白い」という,2つの命題をクリアする必要があるとのこと。さらにチェイズ氏は,Blizzardが目指すe-Sportsのゴールとして「プレイヤーとの関係強化」「ゲーム認知の拡大」「プレイヤーの成果の称賛」の3つを挙げた。

 プレイヤーとの関係強化は,せっかく用意したコンテンツを,プレイヤーがひと通り楽しんだだけで終わらせてしまうのは残念という思いに基づく考え方である。
 そのためにBlizzardでは,たとえばストーリーの最初で正義と悪の戦いを描き,それが進行するにしたがって,プレイヤー同士の世界トーナメントにつながるような流れを意図的に作っているという。無論その流れの中には,世界各地における代表決定戦の開催や,それらの試合をオンラインで観戦できる仕組みを作ることも含まれる。

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 ゲーム認知の拡大の説明では,Blizzardがアメリカで「Heroes of the Storm」の大学対抗戦を開催し,さらにそれをゲーム専門のケーブルテレビで中継していることが紹介された。そうすることにより,多くの人が観戦という形でe-Sportsに触れることができるというわけである。

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 プレイヤーの成果の称賛は,文字どおり対戦の勝利者を褒め称えること。チェイズ氏は,対戦で勝利すること,あるいはたとえ負けてしまってもトーナメントのトップに立つのが誰なのかを見届けることは人間の自然な欲求であるとし,それを汲み取ることは重要であると語った。

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 これら3つのゴールを1つにまとめた例が,「Hearthstone」のチャンピオンシップツアーである。このツアーでは,世界を「北米/ラテンアメリカ」「ヨーロッパ」「中国」「日本/韓国/台湾/東南アジア/オーストラリア/ニュージーランド」の4地域に分けており,各地域で1シーズン(冬・春・夏の年3シーズン)にもっとも多くのポイントを獲得したプレイヤーが,その地域の代表選手となる。

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 そして選出された各シーズンの代表選手達は,アメリカ・カリフォルニアで例年秋に開催されるBlizzardのファンイベント「BlizzCon」にて,その年のワールドチャンピオンの座をめぐり,腕を競うこととなる。

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 チェイズ氏は,こうした一連の展開の中では「Hearthstone」がスマートフォンゲームであることが一番の強みであるとする。それは各地域の大会にて,選手達を1つの会場に集める必要がなく,地域内の20〜30の会場で同時開催することが可能となるからだ。したがって参加希望の選手は,自宅近くなど利便性の高い会場を任意に選択できるのである。
 なお大会を同時開催する各会場には,同じ壁紙を用いた装飾が施されているが,これはオンライン越しの試合であっても,まるで同じ会場で対戦しているかのような感覚を得られるようにするための工夫との説明がなされた。
 ちなみに日本では,2017年からこれらの試みを展開する予定とのこと。

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日本における「Hearthstone」の強豪プレイヤーとしてKno選手mattun選手,そして先日の日本夏季選手権にて優勝したGundamFlame選手が紹介された
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 講義の終盤では,選手以外のe-Sportsに関わる職種として「プロダクション・クルー」「フランチャイズ・マネジメント」の2つが紹介された。

 プロダクション・クルーは,試合の実況中継などを手がける職種で,さらに「キャスター」「ディレクター」「撮影クルー」に分類される。
 キャスターは,ゲームをまったく知らない人にも分かりやすく,かつ面白く伝えることが要求される。そのためにはその場の試合の流れだけでなく,ゲーム自体への深い理解が必要となるわけだ。

 ディレクターは,試合や大会の流れを視聴者にもっとも効果的に伝えるための存在である。たとえば選手の顔を映すのか,それともゲーム画面を映すべきか,局面ごとに判断していく。
 また,選手やキャスターがベストを尽くせるようにするためにはどうすべきか,ということも常に考慮しなければならない。とくに難しいのは,会場で起きる予想外のハプニングにどうやって対処するかだという。

 撮影クルーには,カメラマン,音声,照明などさまざまな専門分野があり,それぞれを統合することで,ストーリー性のある実況が生まれるとのこと。

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 もう一方のフランチャイズ・マネジメントは,「プロダクト・オーナー」「プロジェクト・マネージャー」「グラフィックス・アーティスト」の3つに分類される。
 プロダクト・オーナーは,自身が手がけるゲームをもっとも輝かせるためにどうすればいいかを考えなければならない。たとえば「Hearthstone」であれば,「世界的な大会を開催することでe-Sportsとして耳目を集める」といった判断をすることとなる。その中にはチームリーグをどうするか,トーナメントをどこでどう進行するかなどを考えることも含まれる。

 プロジェクト・マネージャーは,ゲームをe-Sportsとして展開するにあたってスケジュールを管理する職種だ。「このタイミングでは,これが発生する」といったことを予測し,複数の出来事が被らないようにスケジュールを組んだり,きちんと試合の中継ができるよう各スタッフの予定を調整したりすることとなる。

 グラフィックス・アーティストは,続々とゲームに追加されるコンテンツに合わせ,ロゴや背景など必要な派生物を作っていく。

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 講義の最後にチェイズ氏は,Blizzardのe-Sports部門が社内でも急速に成長していることを指摘し,とくに未知数の多いところが極めてエキサイティングだとした。そして,こうした伸び代の大きいe-Sportsについて,今まさに学んでいる聴講者の学生達は素晴らしいとし,ぜひ新しいアイデアと情熱を持って取り組んでほしいとエールを送って講義を締めくくった。

「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト

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