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最高クラスのスペックを誇るAtom搭載Windowsタブレット「ThinkPad 10」。その設計に秘めたこだわりをLenovoが解説
さて,Lenovoといえば,いまやPC市場シェアで世界1位の座にあるグローバル企業だが,そこの製品であるThinkPad 10が日本で設計された製品であることは,あまり知られていないのではないだろうか。その開発と設計を担当したのが,横浜市のみなとみらい地区にある「大和研究所」だ。旧IBM時代から歴代ThinkPadの開発を担当し続けている部門であり,PC部門がLenovoに売却された後も,高度な技術を要するノートPCやタブレットの開発を行っている。
2014年8月6日,Lenovoの日本法人であるレノボ・ジャパンは,横浜市内で記者説明会を開催し,ThinkPad 10の製品コンセプトと,それを実現するために大和研究所が盛り込んだ技術について解説した。ここでは豊富な写真を中心に,どのような技術や工夫がこらされているのかをレポートしたい。
高性能と堅牢性,多彩な周辺機器がThinkPad 10のコンセプト
ThinkPad 10の説明を担当したのは,レノボ・ジャパン製品事業部 ThinkPad製品担当の吉原敦子氏と,同社大和研究所 タブレット開発 部長の加藤敬幸氏。吉原氏が製品コンセプトを,加藤氏は実際に導入された技術についてを説明するという形で,説明会は進行していった。
レノボ・ジャパン製品事業部 ThinkPad製品担当の吉原敦子氏(左)と大和研究所 タブレット開発 部長の加藤敬幸氏(右) |
- 携帯性と堅牢性の両立
- 仕事をこなせるパフォーマンスと使いやすさ
- 豊富で便利なアクセサリ
- ビジネスをサポートするWindowsプラットフォーム
まずは,携帯性に関わる“薄さと軽さ”から,加藤氏は説明を始めた。
ThinkPad 10のサイズは,256.5(W)×177(D)×8.95(H)mm。重量は約590g(※デジタイザ対応モデルは約598g)となっている。世界最薄最軽量とはいえないものの,Atomシリーズを採用する製品としては,かなり薄く軽いのは間違いない。
それを実現したのが,アルミ合金製の背面カバーの採用だ。Lenovoが2012年に発売したビジネス向けWindowsタブレットの「ThinkPad Tablet 2」では,厚さ約1.2mmのプラスチック製背面カバーを採用していた。それに対して,ThinkPad 10では厚さ0.8mmのアルミ製カバーを採用したことにより,薄くても剛性を保ったボディを実現できたのだという。
また加藤氏によると,アルミ製カバーは製品の質感を高めることにも役立っているそうだ。
液晶パネル側にも薄型化の工夫は盛り込まれている。表面を保護するカバーガラスに,Corning製の強化ガラス「Gorilla Glass 3」を採用。カバーガラスと液晶パネル,タッチセンサーを含めた「LCDタッチモジュール」は厚さ3.25mm,重量は約59gを実現したという。ThinkPad 10のLCDタッチモジュールはThinkPad Tablet 2のそれと比べて,15%薄型で12%軽量化されていると,加藤氏は誇らしげに語った。
薄型化に合わせて堅牢性確保の工夫もこらされており,ボディ内部にマグネシウム合金製のフレームを配置し,液晶パネルやベゼル部分と一体化させることで構造を強化。また,HDMI Micro Type D出力端子やフルサイズのUSB 2.0
本体左側面。カバーを開けるとフルサイズのUSB 2.0ポートが顔を出す。その右側に見える四角いコネクタは,専用ACアダプタの接続端子だ |
本体右側面。写真左から,HDMI Micro Type D出力,micro SDカードスロットとmicro SIMカードスロット,音量調節ボタン,3.5mmミニピンのヘッドセット端子が並んでいる |
本体裏面の左上には,800万画素のアウトカメラを装備。その周囲には[電源/スリープ]ボタンと,画面の自動回転をオン/オフするボタンがある |
背面の左右端にステレオスピーカーを内蔵。10インチ級タブレットでは,ステレオスピーカーの搭載が当たり前になりつつあるように思える |
さらに,内蔵する無線LANや4G LTE用のアンテナも,ThinkPad Tablet 2に比べて小型化されているという。そのうえ,背面に金属であるアルミ製カバーを使っているため,無線LANの通信に支障が出ないようにアンテナと無線LANモジュール側にも特別な改良を施しているという。ものすごく簡単に説明すると,電波の発信,受信感度がともに大きくなるように出力を強めているのだそうだ。
ただし,
堅牢性確保の工夫を説明したスライド。こうした工夫を盛り込んでも,9mm未満の厚さを実現しているのは賞賛に値する |
アンテナの小型化を説明したスライド。ThinkPad 10の場合,本体上側面にLTE用アンテナを2基,右側面側に無線LAN用アンテナを2基備える |
マルチプラットフォーム対応ベンチマークテストである「3DMark」を使い,Androidタブレットと性能比較をしてみるとどんな結果が出るのか,興味が湧いてくる。
そのほかにも,高解像度液晶パネルによって消費電力が増加しないように,低消費電力LEDをバックライトに採用したThinkPad 10専用のカスタム液晶モジュールを導入したことや,デジタイザペン対応モデルでは,ペンの精度を向上させるために独自のチューニングを施して,画面の端でも精度が落ちないようにするといった,細かな改良点も説明された。実に細かい部分まで,突き詰めた設計が行われたようだ。
専用キーボードは2種類用意。専用カバーやドックも登場
ThinkPad 10の魅力に,豊富な純正オプションが用意される点がある。iPadシリーズやAndroidタブレット向けの周辺機器は,すでに膨大な種類が市場に存在する。そんな状況で,Lenovoが純正オプションを用意することにこだわるのは,純正オプションであればLenovo側が動作を保証してくれるので,法人顧客が自ら,端末と周辺機器の互換性を検証しなくてすむのだと吉原氏は説明した。法人ユーザーであればその手間を省けるのは確かに利点だろう。
まずキーボードの1つとして用意されているのが,本体のカバーにもなる「ThinkPad 10 タッチケース」。MicrosoftのSurfaceシリーズの「Touch Cover」と似たようなもので,薄いカバーの上に感圧式のキーが並ぶ薄型キーボードである。タブレットの携帯性を損なわずに使えるのが利点だ。
専用キーボードの1つ,ThinkPad 10 タッチケースと合体させた状態(左)。感圧式キーボードなのでタイプ感はよくないが(右),ソフトウェアキーボードよりはかなりマシだと思う。キーボード側の重量は約435gなので,本体と合わても1kgをわずかに上回る程度に収まる |
もう1つのキーボードは,「ThinkPad 10 ウルトラブック キーボード」。ハードウェアキーボードを備えた本体のカバーにもなる製品で,入力の快適さに重点を置くユーザー向けと位置付けられている。
専用ドックの「ThinkPad Tablet ドック」は,USB 3.0(Type B)を3ポート備えるのに加えて,有線LAN端子やHDMI Type A出力などを備えている。
ThinkPad 10 ウルトラブック キーボード。同じLenovoの製品,「Miix 2 11」付属のキーボードと同じように,本体のカバーにもなるギミックを備える |
裏側から見たThinkPad Tablet ドック。ビジネスユーザーがThinkPad 10をデスクトップPC代わりに使うのに役立つ |
ちなみに,ThinkPad 10の下側面には,キーボード用とドック用で,それぞれ別々の接続インタフェースが用意されている。キーボードやドックとの合体ギミックを持つタブレットは珍しくないが,大抵の場合,合体用の接続インタフェースは1種類しかない。しかしThinkPad 10では,キーボード用にUSB 2.0ベースの「Pogo Pin」を,ドック用にはDisplayPort出力やUSB 3.0などを兼ねた「Docking Port」を個別に用意。接続するオプションによって使い分けているのだという。
下側面に接続するオプション同士は必ず排他利用になるのだから,そこまで凝らなくてもと思わずにはいられなかったが,そんな部分にもこだわるというのが,大和研究所のイデオロギーなのかもしれない。
本体下側面には,オプション接続用に2種類のインタフェースを用意(左)。右写真は実機のインタフェース部分。左側がDocking Portで,右側がPogo Pinである |
そのほかにも,背面をカバーで覆った状態でもアウトカメラが使える専用オプション「ThinkPad 10 クイックショットカバー」や専用防水ケースなども披露された。オプション類の充実は目を見張るほどで,LenovoがThinkPad 10に力を入れているのがよく分かる。
背面に回した状態でもアウトカメラで写真が撮れるThinkPad 10 クイックショットカバー(左)。ThinkPad 8用のクイックショットカバーと比較してみると(右),アウトカメラの位置が左右逆なのが分かる。説明員によると,ThinkPad 8が縦持ち使用前提で設計されたのに対して,ThinkPad 10は横持ち使用が前提であり,それに合わせて使いやすい側を選んだとのことだ |
ThinkPad 10 クイックショットカバーは,中央で折り曲げて簡易スタンドにもなる(左)。本体を支えるカバーの端部分には滑り止めのゴム素材がついているため,簡単に倒れたりはしないという |
こちらは,欧米で販売されているスマートカードリーダー搭載モデルの背面。膨らんだ部分にスマートカードリーダーがある(左)。さらに,本体上側面側にLTE用のアンテナも内蔵する(右)。写真を拡大すると,上側に背面パネルと区切られた一角があるのが分かるが,そこにアンテナがある仕組みだ。なお,スマートカードリーダーが日本ではまったく需要がないため,この構成の製品は国内販売されないとのこと |
大和研究所がこだわって作ったThinkPad 10は,タブレットでもスペックにこだわる人には魅力的な製品に仕上がっていると感じた。ビジネスユーザーをターゲットにした製品であるが,個人向けの販売も開始されている。直販価格は7万1280円(税込)と,決して安価な製品ではないが,「高性能なWindowsタブレットが欲しい」という人なら,選択肢に上げる価値のある製品ではないだろうか。
●ThinkPad 10の主なスペック
- サイズ:256.5(W)×177(D)×8.95(H)mm
- 重量:約590g(デジタイザペン対応モデルのみ約598g)
- OS:Windows 8.1 Pro 64bit,またはWindows 8.1 with Bing 32bit
- プロセッサ:Atom Z3795,動作クロック 1.6GHz
- ディスプレイ仕様:10.1インチ液晶パネル
- ディスプレイ解像度:1920×1200ドット
- メインメモリ容量:2GB,4GB
- ストレージ容量:内蔵64GB
- 3G/LTE通信:非搭載
- 無線LAN:IEEE 802.11a/g/n
- Bluetooth:4.0 搭載
- NFC:非搭載
- センサー類:GPS,加速度,磁気,環境光,近接,ジャイロ
- 外側カメラ:800万画素
- 内側カメラ:200万画素
- バッテリー:33Wh,無線LAN使用時で最長10.2時間駆動
ThinkPad 10 製品情報ページ
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ThinkPad,Miix,YOGA
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