レビュー
やみつきになってしまう奇想天外な魅力に溢れた痛快作
ScreamRide
日本マイクロソフトから2015年3月5日に発売された「ScreamRide」(Xbox One/Xbox 360)。本作は,とてもじゃないが人体が耐えられるとは思えない危険なジェットコースターに搭乗したり,人間が乗り込んでいるキャビンやコースターを建物にぶつけて破壊したり,オリジナルレイアウトのコースを作って世界中に配信したりできるジェットコースター制作シミュレーションゲームだ。
架空の会社「SCREAMWORKS」の絶叫マシン開発施設が舞台となっており,ここでは人間の反射神経および身体能力の限界を超える実験を行い,人類の未来に貢献している。プレイヤーはその会社の研究者として,端から見ると激しくバカバカしいことを真剣に研究しているというわけだ。
本作の開発を手がけたのは,「Kinect: ディズニーランド・アドベンチャーズ」や「Zoo Tycoon」,そして遊園地経営シム「ローラーコースタータイクーン3」にも携わっている英国の老舗デベロッパ,Frontier Developmentなので,ジェットコースターの高い再現度にも頷けるというもの。
というわけで,今回は2月19日に掲載したプレイレポートから,さらに一歩踏み込んで,小難しいことを考えずに手軽に楽しめるけれど,意外に奥深い本作の魅力をお伝えしたい。記事中には,筆者が作成したオリジナルコースのプレイムービーも掲載しているので,こちらも合わせてご覧いただきたい。
ライダーはかなり痛い思いをしているはずだが,彼らはハンパなく頑丈なのでまったく問題ナシ。遠慮なく痛い思いをしてもらおう |
視点を切り替えると,ジェットコースターに悶絶するライダー達の表情を眺められる |
「ScreamRide」公式サイト
3つのゲームモードで絶叫マシンを
“乗りこなす”“壊す”“作る”
本作の「キャリア」には,ロケーションの異なる6つのSERIES(レベル)が用意されており,それぞれのSERIESは「スクリームライダー」「破壊のエキスパート」「エンジニア」という3つのゲームモードで構成されている。最初からプレイできるのはSERIES 1のみだが,さまざまなステージをクリアして勲章を獲得すれば,新たなSERIESがアンロックされていく仕組みだ。
3つのゲームモードで,できるだけ多くの勲章を獲得しよう。ボーナスチャレンジもサクッとクリアしておきたいところだ |
登場するSERIESは計6つ。後半になればなるほど,難度の高いステージが用意されている |
●スクリームライダー[乗りこなす]
「スクリームライダー」は,我々が知っている身を委ねるだけのジェットコースターとは違い,プレイヤーが4輪コースターを操作して絶叫マシンで走行するモードになっている。
とにかくコースをいかに速く回れるか,さらに高スコアを出すためにコースターを乗りこなせるかを競うもので,アクセル[右トリガー]やブレーキ[左トリガー],コースターを傾けるバランス制御[左スティック],ターボ[Aボタン],チャージ[Xボタン]を駆使して,アクロバティックなコースを走り抜ける。次から次からへとスリリングな場面が連続するので,イヤでもアドレナリンがブシュブシュ出てきちゃうのだ。
コースターを猛烈に加速させるターボはゲージを消費することで使用可能だ。スピードが上昇する反面,コーナーで脱線しやすくなるので,どのポイントで使うのかは腕の見せどころ |
もちろん高速でコーナーに突入すると,遠心力で片輪が浮いて脱線してしまうため,内側に重心を置くようにバランスを制御する必要がある。これにより片輪が浮くのを押さえつつ,高速で曲がり切れるようになるのだが,コース上に設置されている「キッカー」では強制的に2輪走行になってしまう。コースの状況にも気を配り,スピードを出し過ぎないように注意が必要だ。
また,左右どちらかのレールには,接触するとクラッシュ(=ミス)になってしまう障害物「レールブロッカー」が置かれていることがある。これを避けるためには2輪走行で通過する必要があるのだが,左右交互にレールブロッカーが設置されているコースも存在し,タイミング良く素早く2輪走行を切り替えるというスリリングなアクションが求められる。
レールの片側を塞ぐように設置されているレールブロッカーは,2輪走行を駆使して避けないとクラッシュしてしまう |
コースターを加速させるターボは,ボタンを押している間だけゲージを消費しながら使用可能だ。スピードが急上昇するので脱線しやすくなるとはいえ,恐ろしくなるほどのスリルはやみつきになる。
なお,ターボで消費したゲージは,コース上のブルーゾーンでチャージ可能で,その方法はブルーゾーンを通過中にボタンを押すと若干回復するというもの。また,ブルーゾーンの端ギリギリでボタンを押すと,ボーナスとして通常よりも多くゲージが回復する。
とはいえ,ギリギリのタイミングを狙うあまりにボタンを押すのが遅れてしまえば,当然ながらまったく回復しない。加速したいのにターボが使えない状態が続くので,ハイスコアを狙うにはツラい状況になってしまう。また,ジャンプの着地時にも,タイミングを合わせてボタンを押すQTEイベントが発生するのだが,これも良いアクセントになっている。
建物の隙間をハイスピードで駆け抜ける爽快感が気持ちイイ。脱線しても,コースターが激突して崩れていく建物を眺めてスカッとしよう |
レールが片側1本しかないエリアは2輪走行で通過する。ターボで一気に抜けられるようにゲージを残しておくといいだろう |
当然,後半のステージになればなるほど難度が高くなり,同じ場所で何回も脱線するハメに……。ただ,即座に途中のチェックポイントからの復帰や,スタート地点からリトライが可能で,ほとんどストレスなく繰り返し挑戦できる。どこでターボを使うべきか,このコーナーはブレーキが必要なのかと試行錯誤しながらコースを攻略していたら,ついつい時間を忘れてプレイしてしまった。
●破壊のエキスパート[壊す]
「破壊のエキスパート」は,巨大なピッチングマシーンのような装置(ライド)を使って,人間が乗り込んでいるキャビンを放り投げたり,スキーのジャンプ台の要領でコースターを飛ばしたりして建物を破壊するモードだ。
重要なポイントは,いかにして正確に狙ったところにキャビンを投げられるか。だが,これが本当に難しい。操作自体は,方向とパワーを定めて,Aボタンを押し続けると回転がスローモーションになるので,タイミングを見計らってボタンを放すだけ。これでキャビンが発射されるという,いたってシンプルなものだ。
ただし,パワーを上げれば回転が速くなり,発射のタイミングを調整するのが難しくなる。キャビンのコントロールは空中でも多少はできるものの,ほぼ発射角度で決まると思って間違いないだろう。ほんのわずかなタイミングのズレによって,とんでもないところに飛んでいくキャビン……。そんなガッカリ感を味わってもらいたい。
プレイヤーの目的は,ライダーが乗り込んでいるキャビンを放り投げ,建物にぶつけて壊すこと。建物の内部に爆薬が仕掛けられていると,予想外の倒壊に連鎖するのが面白い |
もちろん,狙いどおりに発射して建物に命中すれば,あとは倒壊していく様子を見守るだけだ。意外にも(?)緻密な物理演算に基づいてリアルにシミュレートされているので,思わぬ形で崩れていく建物を眺めるだけでも結構楽しい。
また,建物の近くに設置されている爆薬が誘爆を繰り返し,隣りの建物までも巻き込んだりすると,思わずガッツポーズでもしたくなる。ゲーム開始から終了まで,ステージ内の全オブジェクトに対して常時物理演算がされているため,徐々にダメージが蓄積された建物の倒壊が突然始まったりと,予想外のことが起こるのも面白い。
狙ったところにキャビンを放り投げるのは意外と難しい。それだけに狙いどおりに投げられたときの嬉しさは格別。自画自賛したくなるほどだ |
キャビンの種類は,標準のボールキャビンのほかに,3つに分離するフラグキャビン,空中での操作性が高いスーパーアフタータッチキャビン,ゴムのように弾むバウンドキャビン,着弾と同時に爆発するボムキャビンがある。
キャビンではなくコースターを飛ばすステージもあり,こちらも複数のタイプが用意されている。標準のロケットコースターはロケットブースターで目標に突進し,グライディングコースターは空中で翼を展開してグライダーのように飛行可能だ。また,爆弾コースターは空中であまりコントロールできないが,着地時や空中で爆発させられる。
数種類のキャビンが登場するステージも。どのキャビンをどこに当てるのかも攻略の鍵となる。大連鎖を狙おう |
ジャンプ台のようになっているレールからコースターを発射。ライダーの安否はひとまず忘れて,豪快に建物にぶつけるのだ |
●エンジニア[作る]
「エンジニア」は,さまざまなパーツを組み合わせて,各ステージに設定されているクリア条件に見合うジェットコースターを作成するモード。コースの大部分は組み上がっているので,一部の接続されていない部分にパーツを選択し,完成させていく。
レールのパーツには,ループやコークスクリューなどがあり,適当に組み合わせていくだけで,簡単にすごいコースが作れてしまう。通常のパーツも左右にカーブさせるのはもちろん,自由な角度にねじれるようになっている。また,自動的に最短ルートをレールでつないでくれるオートコンプリート機能が用意されているので,サクッと仕上げたいときには便利だ。
コースの未完成な部分にレールを敷設して,クリア条件に合ったジェットコースターを作成しよう。シンプルなものから,心臓が弱い人なら失神しそうな過激なものまで手軽に作れる |
レールは曲げる角度や捻る角度を細かく変えられるので,レールや建物の隙間を縫っていくようなレイアウトも実現できる |
コースが完成したら,テスト走行と調整作業を繰り返しながら,最良の結果が出るように悪戦苦闘することになる。コースの出来を判断する材料としては,「スクリーム」「激しさ」「吐き気」というパラメータが用意されている。テスト走行中にパラメータの変化をチェックすれば,絶叫マシンとしては物足りないのか,はたまた激しすぎるのかといったことが分かる仕組みだ。
また,テスト走行後にコースの調整作業を行うと,「ライダー放出」「高-横G」「高-激しさ」といったように問題のあるポイントが表示され,改善方法が分かりやすくなっている。
コースレイアウトを少し変えただけなのに,まったく異なる結果が出たり,大幅に改善したつもりが大して結果に結びつかなかったりと,ほかの2つのモードにはない奥深さを味わえるだろう。
通常のレールのほか,ループやロール,コークスクリューなどのスペシャルパーツを選べるステージも |
テスト走行中は改善すべき点がコース上に表示されるので,1つずつ潰して修正するのだ |
前述のとおり,3つのゲームモードでステージをクリアすると,トータルスコアに応じて最大5つの勲章(メダル)が獲得でき,その数に応じて,新たなSERIESがアンロックされていく仕組みだ。
たとえばスクリームライダーでは,「2輪走行ボーナス」「きれいな着地スコア」「残りのターボスコア」など,さまざまなボーナススコアが加算される。なるべくアグレッシブでトリッキーな走りを狙いたいところだ。
また,各ステージには「6回PERFECTターボを獲得」「脱線せずに満タンのターボを一度に使い切る」「3回ターゲットにキャビンを通過」「飛行船を爆破」などのボーナスチャレンジも用意されている。5つの勲章を獲得したうえで,すべてのチャレンジをクリアすると,さらにもう1つゴールド勲章を獲得可能だが,そう簡単には達成できないチャレンジが用意されており,やりこみ要素も十分というわけだ。
パーフェクトなタイミングでターボチャージを連続して行うと,ボーナススコアが増加。慎重に狙いたいところだ |
海上を高速移動中のボートや空中を飛んでいる飛行船にキャビンを命中させると,ボーナスを獲得できる |
トータルスコアに応じて,5つまで勲章を獲得できる。さらにすべてのボーナスチャレンジをクリアすれば,金色の勲章を獲得可能だ |
コースの可能性は無限大!
自分だけのオリジナルジェットコースターを世界へ
さて,ここまでは3つのゲームモードを紹介してきたが,前回のプレイレポートではお伝えできなかった「サンドボックス」についても触れておこう。「サンドボックス」とは,ジェットコースターや,「破壊のエキスパート」に登場するようなライドを使ったアトラクションをイチから作成できるモードである。
何もない更地から,土台やジェットコースターのコース,建物,さまざまなオブジェクトなど,すべてをプレイヤーが手がけられるという点で,「エンジニア」とは大きく異なる。プレイヤーだけの完全オリジナルジェットコースター&ライドを作成できるのだ。
土台からレール,建物,さまざまなオブジェクトなどを1つずつ配置して,自分だけのオリジナルジェットコースターを作り込める「サンドボックス」。プレイヤーのセンスが問われるモードでもある |
大まかな流れを説明すると,ステージのロケーションを選択したら,土台となるアイランドを建設して,建物やオブジェクトを配置,そしてコースターやライドを作成していくことになる。もちろん,周回数や勲章,ボーナスチャレンジなども設定可能だ。順番は多少前後しても,このような流れで1つのステージを作っていく。
ただし,これだけでは完成と言えない。実際にプレイをして作成したステージがちゃんと遊べるのかをテストし,すべてのオブジェクトが適切であるかなどのチェックをクリアすると,ようやく“自分の作品”として,Xbox Liveを介してシェアできるようになる(Xbox One版のみ)。
各カテゴリのアイテムを配置して,景観を作っていく。キャリアモードを進めておかないと,すべてのアイテムは使えない |
最初にステージロケーションを選択すると,最小限の地面しか設置されていないので,どんなジェットコースターにしたいのかを考えながら,まずは土台となる地面を配置していこう。ジェットコースターのコース作成については,「エンジニア」と同様になっている。
アイランドや景色,コースター,ライドなどのパーツはカテゴリ別のパレットの中から選択していくことになり,簡単に大きさや角度を変更可能だ。なお,ステージに配置できるパーツは最大で5万個,総レール長は5000メートルという上限があるものの,これだけあれば余裕で巨大アトラクションを実現できるだろう。
また,「自分で土台から作っていくのは面倒」という人には「設計図」が用意されている。設計図を利用すれば大幅に作業を短縮できるうえ,そこから自分なりにアレンジを加えるのも自由だ。
多数のパーツを組み合わせるよりも,簡単に巨大な建物を組み立てられる設計図のほうが便利。ほかのプレイヤーが作った設計図を利用することも可能だ |
「エンジニア」と同様に,用意されているパーツの中から選んでレールを敷いていく |
それぞれのパーツは,高さや向き,大きさを変更可能で,パーツを組み合わせて細長く高い壁なども作れる |
キャビンを放り投げるライドを設置すれば,「破壊のエキスパート」のようなステージも。ジェットコースターとは,また違うセンスが問われる |
プレイヤーの創造性次第で何十時間でも遊べそうな「サンドボックス」ではあるが,少し気になってしまったのがインタフェース部分。作業中に視点の回転やズームイン/アウトといった操作は可能だが,カメラ視点の角度は斜め上からで固定されているため,自分で作成したオブジェクトを見上げながらといった視点で作業できないのだ。
この点は「エンジニア」でも同様で,ステージ全体を見渡しながら作業したいときや,さまざまな角度から自分が作ったコースを眺めたいときには不便さを感じることになった。
とはいえ,世界中のプレイヤーが自作のコンテンツをアップロードできる「ステージセンター」には,原稿執筆時点で1000近いコンテンツが並んでおり,好きなものをダウンロードしてプレイできるのは嬉しいところだ。筆者も胸を張って自慢したいコースが完成した暁には,それをコースレイアウトの設計図としてアップロードしたいと目論んでいる。
作成したジェットコースターは,テスト走行してクリア条件がすべて満たされているのかをチェックする必要がある |
各ステージには5つのボーナスチャレンジを設定できる。コースレイアウトに合わせて,チャレンジングなコースを完成させよう |
オリジナルコースターはXbox Live上でシェア可能。ほかのプレイヤーに遊んでもらったり,ほかのプレイヤーの作品をダウンロードして遊んだりできる |
小難しいことは一切考えないで
奇想天外なジェットコースターの魅力を存分に楽しむべし
筆者自身,子供の頃からジェットコースターが好きだったこともあり,「ScreamRide」は発売前から気になっていたタイトルだったが,実際にプレイしてみたところ,自分で操作するジェットコースターというのも「これはこれで面白いなあ」と思った次第だ。
これまでに紹介したゲームモードや,自作のオリジナルコースで遊んでいる模様をムービーに収録してみたので,その面白さの一端でも伝われば幸いだ。
とくに目まぐるしく変化する視界は,本当にジェットコースターに乗っているような錯覚を起こさせてくれる。そんなスピード感に疲れたときは,搭乗員を乗せたキャビンを建物にぶつけて息抜きするといった遊び方もできる。
自分で奇想天外なジェットコースターを作れるだけでなく,世界中のプレイヤーが作成したコースをダウンロードできるため,ステージ数は無限大と言ってもいいだろう。現在,Xbox Games ストアでは両機種ともに体験版が配信中なので,ちょっとでも興味を持ったなら,このクセになる面白さを味わってもらいたい。
あたかも本当にジェットコースターに乗っている気分にさせてくれる本作は,ジェットコースター好きならば,ぜひプレイすべき一本だ。現実ではあり得ない,突拍子もないジェットコースターで,やみつきになるスピード感を体験してほしい |
最後は,Xbox 360版について触れておこう。当然ながら,Xbox One版と比べるとグラフィックスがやや荒く感じられるものの,もともと精細さがウリになっているわけではないためか,とくに気になるほどの違いではない。ジェットコースターの挙動もスピード感も,Xbox One版とほぼ変わらなく楽しめた。
ただ,Xbox 360版ではXbox Liveを介して,ほかのプレイヤーとステージや設計図をシェアできず,「サンドボックス」で作成したコースは自分の本体でのみ楽しめるようになっている。この点だけは注意してほしい。
Xbox 360版ではオリジナルコースのアップロードやダウンロードができない。そのほか,Xbox One版と比べるとグラフィックスの質が若干落ちるものの,楽しさやスピード感は変わらない印象だ |
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