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NVIDIA,「GeForce GTX 960」発表。気になる製品概要を徹底チェック
NVIDIAはかねてより,上から2桁めの数字が6のGPUを,価格帯性能比が重視されるボリュームゾーンに向けた製品として位置づけてきたが,このクラスのGPUが登場するのは,2013年6月の「GeForce GTX 760」以来ということになる。
今回は,報道関係者向け事前説明会で明らかになった情報を中心に,ミドルクラスMaxwellの製品概要をまとめてみたい。
「GM204の半分+4Kデコーダ」となる
GM206コアを採用したGTX 960
TSMCの28nmプロセス技術を用いて製造され,トランジスタ数は29.4億個,ダイサイズは227mm2。同52億個,398mm2のGM204と比べ,GPUの規模自体は56〜57%程度ということになる。
さて,ここであらためておさらいしておくと,MaxwellアーキテクチャのGPUは,“ミニGPU”的な存在である「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)と,それを構成する演算ユニット「Maxwell Streaming Multiprocessor」(以下,SMM),さらにSMMの要素となるシェーダプロセッサ「CUDA Core」という3つのレベルから成り立っている。
GPCで共有するL2キャッシュの容量はGM204の2048KBからGM206で1024KBに,16基のROPユニットを束ねてあるROPパーティションの数はGM204の4基から2基に,64bitメモリコントローラの数も4基から2基に,といった具合で,ものの見事に半分となっている。
なおNVIDIAは,第2世代Maxwellアーキテクチャにおいて,メモリ圧縮効果により,メモリインタフェースの効率がKepler世代比で33%改善したとし,それを根拠に「実効クロック」(Effective Memory Speed)という概念を採用している。
グラフィックスメモリの動作クロックが7010MHz相当(※実クロック1753MHz)で,実効メモリクロックが9333MHz相当となるのはGM204とGM206で変わらないため,実効メモリバス帯域幅は,GM204比でやはり半分の148.8GB/sということになるわけである(表)。
では,冒頭で触れた「+α」とは何かというと,それは新設されたビデオデコーダということになる。
GM204では,統合されるリアルタイムビデオエンコーダ「NVENC」がH.265/HEVC(HEVC:High Efficiency Video Coding)に対応し,NVIDIA独自のリアルタイム録画システム「ShadowPlay」における4K/60fpsサポートを実現したのが,1つの大きなトピックとなっていた(関連記事)。
ミドルクラス以下のGPUを購入する人は,ビデオ関連の性能も重視する傾向にあることを考えると,GM206における4K/60fpsデコードのハードウェア支援追加というのは,理にかなった実装といえるかもしれない。
低い消費電力と高いOC耐性
MFAA&DSRサポートがウリ
「性能だけで言うなら,競合はRadeon R9 280あたりだと思うが,それだと消費電力が違いすぎるだろう?(笑)」(Walker氏)。
NVIDIAが動く前から準ファンレス仕様のクーラーを市場投入していたメーカーは,自社のアルゴリズムをそのまま使うケースもあるが,GTX 960の世代では,そうでないメーカーからも,多くの準ファンレスカードが登場することになるという。
また,低消費電力を生かし,オーバークロックマージンは多めに取られているそうで,メーカーレベルのクロックアップ版カードが多数登場することと,そこからさらに自己責任でオーバークロックを狙える可能性が高いことも,氏はアピールしている。
ただし,ここでいう「最大で70%」には,「4x MSAAおよび4x MFAAを有効化すれば」という注釈が付く。
簡単にいうと,MFAA(Multi Frame Anti-Aliasing)とは,MSAA(Multi Sampled Anti-Aliasing)よりも一段低いサンプル数でMSAAと同等の品質を実現すると謳われるアンチエイリアシング技法のこと(関連記事)。一段低いサンプリング数で済むということは,GPUとグラフィックスメモリにかかる負荷が低くて済むということでもあるため,GTX 960のようなミドルクラスGPUでアンチエイリアシングを利用する場合には最適というわけだ。
これまでは,特定のタイトルでしかMFAAは有効にならなかったが,「もともと,すべてのタイトルでMFAAは有効化するつもりだった」と述べるWalker氏によれば,アルゴリズムの最適化により,今回,広く有効化できるようになったとのことだ。
なおNVIDIAは現在,DirectX 9世代のタイトルでもMFAAを有効化できるよう,開発を進めているという。
以上,GTX 960の概要をまとめてみた。GeForce GTX 980比で半分のスペックながら,高いクロック設定がなされていることと,H.265デコーダを搭載していること,120WというTDPが注目のポイントとなるはずだ。
そんな気になる製品を,4Gamerではさっそくテストにかけているので,ぜひ,レビュー記事をチェックしてもらえればと思う。
「GeForce GTX 960」レビュー。第2世代Maxwell初のミドルクラスGPUは,得手不得手のはっきりした低消費電力モデルだ
日本ではMETAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROESバンドルキャンペーンも
ところでNVIDIAは,GTX 960に合わせ,日本限定のキャンペーン「METAL GEAR, RETURNED TO PC WITH GEFORCE」(メタルギア,GeForceでPCに帰還)の開催も発表している。
これは,PC版(=Steam版)の「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」が対象のGeForce搭載グラフィックスカードおよびゲームPCにバンドルされるというもので,対象となるGPUは「GeForce GTX 760」以降になるとのこと。実際にどのカードやゲームPCでバンドルされるかは,メーカーによって異なるという。
ちなみに,「PCに帰還」がどういう意味か分からないという人のために補足しておくと,これは,KONAMIの初代「METAL GEAR」が,8bitマシンである「MSX2」向けにリリースされ,次いでCommodore 64(コモドール64)版などが発売されたというエピソードにちなんだものだ。いまから20年以上前の話なのでまさに「故事」といったところだが,もともとMETAL GEARは“パソコン用ゲーム”だったのである。
METAL GEAR, RETURNED TO PC WITH GEFORCEキャンペーンページ
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