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東京レトロゲームショウ2015:第25回 ホラーRPGの名作「ラプラスの魔」で,名状しがたきものに立ち向かえ!
今回の「東京レトロゲームショウ2015」で紹介する「ラプラスの魔」は,1987年にハミングバードソフトから発売されたホラーRPGだ。ゲームの舞台は1920年代のアメリカ東部。マサチューセッツ州の外れ,ニューカムの街に建つウェザートップ館では奇怪な事件が相次ぎ,呪われた館とウワサされていた。プレイヤーはそんな幽霊屋敷にやって来たゴーストハンターとなり,狂気に満ちた館の謎を探ることになる。
探索や謎解きをメインにしたホラーアドベンチャーは数多いが,RPGにおいては何と言ってもファンタジーやSFが主流であり,純粋なホラーをテーマにしたものは珍しい。もしかしたら筆者が知らないだけなのかもしれないが,パッと思いつくのは本作と「スウィートホーム」くらいだ。何かほかに,有名な作品はあったかしら?
そして,ホラーを題材にしたゲームの中でも,とくに人気の高いテーマがH・P・ラヴクラフトによって生み出された「クトゥルー神話」だろう。本作もクトゥルー神話をモチーフとしており,グループSNEの安田 均氏が原作を手掛けている点が見どころの1つ。1994年には続編の「パラケルススの魔剣」が発売されており,こちらも安田氏が原作を務めている。現在はどちらも,D4エンタープライズが運営する「プロジェクトEGG」で配信されているので,ぜひ遊んでみよう。
プロジェクトEGG「ラプラスの魔」(PC-8801版)
(C)2014 グループSNE(C)2014 D4Enterprise Co.,Ltd. / (C)2014 MSX Licensing Corporation.
さて,話を戻すと,本作では最大4人のパーティで呪われた館の探索に乗り出すことになるのだが,そこで選べる職業がまず個性的だ。ゲームには,探偵,霊能者,ジャーナリスト,科学者,ディレッタントという5つの職業が登場し,習得できるスキルやステータスなどに差があるので,バランスのいいパーティを組みたいところ。
ぶっちゃけ,字面からは何ができる職業なのかが想像しにくいが,詳しく書くとキリがないので思い切って省略して,ディレッタントについてのみ補足しておくと,これは要するにアマチュアのオカルト研究家のこと。豊富な知識を生かした情報収集や,後述する精神力の回復などを得意としている。
いざパーティを組んで館に乗り込むと,背後で扉が閉まり,外に出られなくなってしまう。そこで,まずは館から脱出する方法を探らなければならないという,ホラーものではおなじみの展開が待っている。
館の中にはさまざまなモンスターが徘徊しているが,注意すべき点はモンスターをいくら倒してもお金が手に入らないというところ。お金はモンスターの写真を撮って,街で売ることで入手できるので,写真撮影が得意なジャーナリストは必ずパーティに加えておこう。
戦闘時には体力(HP)だけでなく精神力(MP)のパラメータにも気を配る必要がある。本作には,物理攻撃と精神攻撃の2種類の攻撃方法があり,前者の攻撃を受けるとHPが,後者だとMPが減少する。HPがゼロになったキャラクターは当然ながら死亡するが,MPが尽きた場合は発狂し,操作不能になってしまう。まあ,クトゥルー的にはよくある話だ。窓に! 窓に!
職業別に見てみると,例えば探偵はHPが高く,物理攻撃に長けているので頼りになるが,意外と豆腐メンタルなのかMPは少なく,精神攻撃が弱点。また,敵の中には精神攻撃でしか倒せないものも存在するので,それを得意とする霊能者や,機械を使って精神攻撃できる科学者も,ぜひパーティに入れておきたい。いったい,どんな機械だろう?
このほかにも,本作にはさまざまな面白い要素があり,必ずしも敵を倒さなくても経験値が手に入るというのもその1つ。館の中の罠を解除したり,戦闘中にモンスターを撮影したり,降伏してきた敵を尋問したり,極端な話,戦わずに逃げてしまったりしても経験値がもらえる。ちなみに,戦闘から逃亡した場合,フロア内のランダムの場所に移動してしまうのだが,よほど必死に逃げたに違いないと思うと,何だか同情してしまう。分かるわー,その気持ち。
本作では,ただ単に敵が強いだけでなく,謎解きも難しく,全体的なゲーム難度はかなり高い。適当に作ったパーティで館をうろうろしていると,あっという間に全滅してしまうこと間違いなしだ。しかし,不気味な館の謎を1つずつ解き明かしながら探索していくホラーな雰囲気は抜群で,世界観と絶妙にマッチしたゲームシステムも見事。
ゲームの後半は館を離れ,さらに手ごわいダンジョンが待ち構えているので,ぜひじっくりと腰を据えてチャレンジしてほしい。オススメです。
プロジェクトEGG「ラプラスの魔」(PC-8801版)
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