プレイレポート
「Fallout 4」のDLC第3弾「Far Harbor」をプレイ。絶海の孤島で大ボリュームの冒険があなたを待っている
本作は,これまでに同社がリリースしたDLCの中でも最大規模のボリュームと発表されており,連邦の北に存在する島「ファーハーバー」で,まったく新しい冒険が繰り広げられる。本編の発売から約5か月が経過し,「連邦はほぼ回り尽くした」という人も多いだろうが,そんなプレイヤー達に新たな“遊び場”が提供されるのだ。
今回,コンシューマ版に先がけて配信されていたPC版「Far Harbor」をプレイしたので,そのレポートをお届けしたい。絶海の孤島には,連邦で鳴らした歴戦の冒険者でも油断できない戦いが待っていた。
「Fallout 4」公式サイト
探偵といえば人探し。行方不明の女性を追い,舞台は陰鬱とした孤島へ
「Far Harbor」のストーリーは,とある無線をPip-Boyで受信することから始まる。発信元はニック・バレンタインの探偵事務所の秘書エリーで,新たな依頼が舞い込んでいるとのこと。さっそくダイアモンドシティで彼女の話を聞くと,ニックの知り合いであるケンジから「頼みたいことがある」と相談を受けたものの,その内容までは語らなかったという。依頼を受けるには直接本人に会うしかないということで,ニックと共に連邦の北東部に位置する漁村に向かうことになる。
家とは名ばかりの朽ちた小屋にたどり着き,ケンジから話を聞くと,依頼は行方不明者の捜索。ある日を境に,彼の娘カスミが消えてしまったらしい。自宅を捜索すると,どうやらカスミはラジオの声に導かれて「ファーハーバー」と呼ばれる島に向かったことが判明する。
ファーハーバーには人造人間達の居住地があり,自分が人造人間だと考えたカスミは両親に黙って家を出てしまったのだ。もはや彼女を連れ戻すにはファーハーバーまで行くしかない。探偵2人は正体不明の島まで船を走らせるのだった。
初めて足を踏み入れたファーハーバーは,とても一筋縄ではいかない場所だった。よそ者を強く嫌う島民,見たこともない強力なクリーチャー,核による世界の浄化を目指して活動するチャイルド・オブ・アトム,そして長時間触れ続けると精神まで破壊される放射能を帯びた「霧」など,同じ崩壊後のアメリカでも連邦とは相当に異なる世界がそこにある。
とくに霧は放射能の危険があるだけでなく,クリーチャーの活動場所としても機能し,日々島民の生活を脅かしているのだ。今や島のほぼ全域が霧に埋め尽くされ,島民はわずかな居住地を「霧コンデンサー」と呼ばれる一種のバリアで守り,何とか耐えているという有様だという。
また,ただでさえ危険なファーハーバーだが,事態を一層悪化させているのが,島民とチャイルド・オブ・アトムの泥沼の争い。放射能を崇める信者達は,霧を「アトムの奇跡」と信じて島の所有権を主張する。逆に島民は,霧を「チャイルド・オブ・アトムの仕業」と考え,一触即発の状態になっている。そんな中,カスミが向かったという人造人間達のコミュニティ「アカディア」の調査を進めると,彼らもまた中立を装いつつ何らかの計画を進めていることが明らかになる。
劣悪な自然環境,強力なクリーチャー,そして人間,人造人間,アトム信者の三つ巴の戦い。ただの人探しに向かったはずの探偵達は,途方もない面倒ごとに巻き込まれてしまうのだった。
多くのミッションと探索ポイントが用意されたファーハーバーは,まさに「ミニ連邦」だ
ファーハーバーはお馴染みの連邦とは完全に別のマップであるが,一度移動さえしてしまえば,ファストトラベルで瞬時に行き来できるようになる。四方は完全に海に囲まれ,海岸線には「フォグ・クロウラー」,廃墟には霧によって理性をなくした元人間「トラッパー」,山中や水辺には「ガルパ」「アングラー」といった新クリーチャーが続々登場する。さらにマイアラークやグールなどが現れるので,高レベルでも装備が整っていないと厳しい戦いを強いられるだろう。強い個体も高い頻度で出現するため,中途半端に弾薬をケチろうものなら痛い目に遭うはずだ。
島は広く,探索するだけでも結構な時間を要する。そのうえ,平地や山地を問わず島中を包み込んでいる「霧」により,常に視界は悪い。また,「放射能汚染を発生させる」という特性を持っており,マップ全体が連邦の「輝きの海」といった感じになっている。それゆえか,強力な放射能変異体のクリーチャーがどこにでも頻繁に現れる印象だ。陰鬱とした風景と強力な敵,そして島を覆う霧は,どことなく「Fallout 3」のポイントルックアウトを思い起こさせる。
クエストも充実しており,前述した3つの組織から,さまざまな依頼を受けられる。依頼の内容は「○○を取ってこい」といったシンプルなものが多いが,広大な島に多数点在する施設を回ることになるので,ボリュームは十分だ。また,新たなコンパニオンも登場するので,新鮮な気分で冒険ができるのが嬉しい。
最初はすべての組織からクエストを受けられるが,八方美人には限界がある。どこかの段階で厳しい決断を迫られるのも本編と同様だ。否が応にも組織間のもめ事と大義名分に巻き込まれる状況は,本編を追体験しているようでもあり,「人間ってどこでも変わらないな」とあらためて感じさせる。
とはいえ,連邦ではただの敵だったチャイルド・オブ・アトムの内情を知るどころか,入信してアトムのために働けるのはかなり興味深い。
連邦に引き続き,ファーハーバーでも町作りが可能で,居住地はいくつか用意されている。あらかじめ人が住んでいることもあった本編とは違い,死の霧が充満するこの島ではファーハーバーの町しか住民がいないに等しいので,「ゼロからの復興」という燃える展開が待っている。
大規模な町作りに必須のPerk「Local Leader」で機能する供給ラインは,連邦の居住地と接続できるので,すでに十分な資材のストックがあるなら,スムーズにクラフトを進められるだろう。連邦に負けない都市を死の島に作ってみるのも一興ではないだろうか。
DLC第2弾「Wasteland Workshop」があれば,さらにこだわりの町作りが可能
町作りに触れたついでに,4月19日にリリースされたDLC第2弾「Wasteland Workshop」を紹介しよう(関連記事)。本作はクラフト要素を強化した追加コンテンツで,導入すればイベント等をこなす必要もなく,即座に新しいオブジェクトを設置できるようになる。
注目のオブジェクトは,クリーチャーを捕獲してくれる「檻」だろう。電気を通しておけば,自動で目的の敵を捕獲してくれる装置で,敵対化を解除させる装置「ベータ波発生機」と組み合わせれば,居住地の護衛役としてデスクローを放し飼いにするといったことが可能になる。檻の作成には餌となる肉のストックが必要だが,さらにベータ波発生機はCharismaの必要ランクが高い「Wasteland Whisperer」のPerkがないと作れず,全体的な条件はなかなか厳しい。だが,居住地限定とはいえ強力なクリーチャーが仲間となってくれるわけで,苦労する甲斐はある。
捕獲したクリーチャーは用心棒として使えるだけでなく,アリーナの挑戦者としてほかのクリーチャーや住人と戦わせることができる。クリーチャー同士は種族が違えば自動的に戦い始めるが,それに住人を参加させるには「アリーナ出場者」というオブジェクトに住人を「配置」してやればいい。もちろん住人同士のバトルも可能で,それぞれレッドチームとブルーチームに配置すればいいだけだ。
ただし,アリーナ自体はプレイヤーがゼロから作らなければいけないこと,レイダーやスーパーミュータントにはベータ波発生機の効果がないこと,戦わせた住民はあっさり死んでしまって居住地の人口が減ってしまうことなど,不便に感じるポイントもそれなりに多かった。アリーナ専用の居住地を別に用意したほうがいいかもしれない。
そのほかには,通過するだけで放射能汚染から回復できる「除染アーチ」,電気が不要な照明器具のランタンやロウソク,任意の文字で壁を飾れるネオンなど「痒いところに手が届く」オブジェクトが数多く追加される。クラフトが一層楽しく,こだわれるようになるだろう。従来と同じ電気を使う照明も種類が増えるので,筆者のような「暗い夜を明るく快適にしたい」という人には嬉しいはずだ。
クエストの追加は一切なく,前述したようにアリーナ関係の不親切さが否めないが,価格は600円(+税)と安い。クラフト環境をより充実させたい人には,ぜひおすすめしたいDLCだ。
まさに「最大規模」のスケール。連邦をしゃぶりつくした人も,もう一度冒険に出かけよう
閑話休題。「Far Harbor」に話を戻そう。本作には強力な敵が登場するが,それだけに対抗手段となる装備品も数多く用意されている。港町ということもあってか,海をモチーフにしたものが多く,中には「ロブスターを捕まえる罠」をそのまま被るというネタ的なヘルメットも存在する。
ただ,武器には大型のモリを発射する「ハープーンガン」,手軽に放射能ダメージが与えられる「ラジウムライフル」などインパクトが強いものが多く,戦闘を楽しませてくれる。
ストーリーはニックが発端となるだけあって,会話と探索で「隠された秘密を暴く」という流れは探偵モノを彷彿とさせる。その道中には,今までになかった一人称視点の本格的なパズルが挿入されるなど,プレイヤーを飽きさせないための工夫を感じさせる。
その一方で,遠く離れた島に来ているのに,本土の居住地の防衛要請が普通に来るのはいかがなものかと思ったり,翻訳に関していくつか「おや?」と首を捻ったりしたのも事実だが。
とはいえ,「Fallout 4」を存分に楽しんだ人が2280年代のマサチューセッツに戻ってくるには,十分な質と量を「Far Harbor」は兼ね備えている。とくに島のスケール感は,DLCとは思えないほど広いものだ。連邦の青い空に慣れた冒険者には,ファーハーバーの暗い空は新鮮に映るだろう。ゲームを再開するには,もってこいのタイミングだと言える。
今回の「Far Harbor」で,詳細が判明しているDLCはすべて配信されたことになるが,既報のとおり,今後もDLC展開が予定されているという。来るE3の直前,6月12日(現地時間)に開催されるベセスダ・ソフトワークスのプライベートカンファレンスで何らかの発表があるのか,ファンとしては目が離せない状態が続きそうだ。
「Fallout 4」公式サイト
キーワード
(C)2015 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Bethesda, Bethesda Softworks, Bethesda Game Studios,ZeniMax, Pip-Boy, Vault-Tec and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Fallout, Vault Boy and related logos are trademarks or registered trademarks of Bethesda Softworks LLC in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.
(C)2015 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Bethesda, Bethesda Softworks, Bethesda Game Studios,ZeniMax, Pip-Boy, Vault-Tec and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Fallout, Vault Boy and related logos are trademarks or registered trademarks of Bethesda Softworks LLC in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.