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「夜廻」は夜の静寂が醸し出す,子供の頃に味わった恐怖を再び体験できるアクションアドベンチャーだ
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印刷2015/10/28 00:00

プレイレポート

「夜廻」は夜の静寂が醸し出す,子供の頃に味わった恐怖を再び体験できるアクションアドベンチャーだ

 日本一ソフトウェアは,PlayStation Vita用ソフト「夜廻」を,2015年10月29日に発売する。夜の闇に消えた愛犬と姉を捜すために,主人公の少女が1人で夜の街を探索するアクションアドベンチャーで,レトロで素朴な雰囲気からは想像できないようなショッキングでプレイヤーを恐怖させる描写が特徴となっている。本作を発売前にプレイしたので,さっそくプレイレポートをお届けしたい。

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昭和な雰囲気の夜の街で,ショッキングな恐怖体験を味わう


 夕暮れの街を愛犬ポロとともに散歩する少女。しかし,突然の事故でポロがいなくなってしまう。切れたリードを引きずって帰ってきた少女を見た彼女の姉は,愛犬を探しに夜の街に消えていくのだった……。
 細かな描写のネタバレはしないでおくが,本作はそんなショッキングなオープニングから始まり,これがかなり精神的に“来る”。そして少女は,愛犬と姉を捜すため,1人で夜の街を歩き回ることになるのだ。

夕暮れの街に散歩に出ていた少女とその愛犬。少女が取った行動が,愛犬がいなくなるきっかけに……
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 彼女が歩く夜の街並みは2Dのクォータービューで表現されている,そのたたずまいにはどこか懐かしい昭和の雰囲気が漂い,子供の頃に感じた夜の闇の不気味さを思い出させてくれる。デフォルメされたキャラクターもうまくマッチしたグラフィックスで,一見,可愛らしいのだが,見た目に騙されて安心していると,その後に味わう体験とのギャップで打ちのめされるので注意が必要だ。

帰ってきた少女の姿を見た姉は,いなくなってしまった愛犬を探しに出たまま戻ってこなくなってしまう
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とにかく逃げるしかない,恐ろしいもの達の追跡


 ゲームシステムは,街の中を歩き回って探索していくことで行ける範囲が広がり,ときにイベントなどが発生してストーリーが進んでいくというシンプルなものだ。「夜道探索アクション」とジャンル付けされているものの,どちらかというとアドベンチャーゲームの要素のほうが強い印象を受ける。

少女の頭に「?」のマークが出たら,前方に調べられるものがある。「!」に変わったところを調べてみよう
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少女はダッシュすることで早く移動できる。ダッシュ時は画面下のゲージを消費し,ダッシュをやめればゲージは回復していく
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 ゲームを始めるとほどなく,プレイヤーは奇妙な現象に遭遇することになる。特定の場所に近づくと心臓の鼓動が早くなる音が聞こえてきて,街灯の下などに黒い影のような姿が見えてくる。これが本作で少女の敵として登場する「お化け」達だ。敵といっても少女に対抗する手段はなく,ダッシュして逃げるか,草むらや看板の裏などに隠れてやり過ごすしかない。彼らに捕まればほとんどの場合その場でミスとなってしまう。

少女の目の前に黒くぼんやりと見えているのがお化けだ。懐中電灯を照らすことで見えるものもいる
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 お化けが近くにいる間,心臓の鼓動が早くなる演出は「心臓音システム」と名付けられていて,このときは少女がダッシュ(左スティックか方向キー+[R]ボタン)できる時間が極端に短くなり,さらに行動にも制限がかかってしまう。街を探索しているときはこの心臓音を頼りにお化けの接近を察知し,その場所を迂回したり,手近な物陰に隠れたり,[□]ボタンで投げられる小石でお化けの気を引いたりすることが,身を守る手段となるのである。

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心臓音システムの発動中は,ダッシュゲージの中央が赤く光り,減りが大きくなる。長距離を走れなくなるということだ
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草むらなどに隠れると,周囲にいるお化けの位置がぼんやり赤く表示される。これが離れていったら,お化けが近くからいなくなった証拠だ
お化けに捕まると問答無用でミスになってしまう。画面の演出もかなりショッキングだ
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 ちなみにお化けに捕まると,ショッキングな演出のあと,セーブポイントの自宅か中間セーブができるお地蔵さんの場所から復活する。重要アイテムを拾ったときなどの一部のフラグ立てや,探索することで開いていく地図の範囲などは,ミスをしても継続されていた。

お地蔵さんは中間セーブのポイント。街で拾った10円を供えると,ミスしたときにそこから再スタートできる
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少女が描いたと思われる手書きの地図はSTARTボタンでいつでも見られる。探索を続けると,地図が完成していく
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これまで出会ったお地蔵さんの場所は自由に行き来ができるようになっている。いわゆるファストトラベルだ

 お化けは,いわゆる心霊現象的なものから,民話や都市伝説で語られている妖怪のような存在まで,数多くの種類が登場しているので,子供の頃に恐怖におののいたトラウマ的な存在が,この中に1つ2つはいると思われる。暗闇で不気味な姿に遭遇するとドキっとさせられるだろう。

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 最初に遭遇するであろう「街灯下の影」などの一部のお化けは,明かりを照らせば姿を確認できる。そのため,「懐中電灯」を使って目の前を照らしてみるなり,前述の心臓音システムを頼りにするなりして,その存在を事前に察知するのがゲームの基本だ。ただし,懐中電灯の光に反応して追ってくるお化けと,懐中電灯でしか見つけられないお化けが混在する場所などもあり,どうやって進むか頭を使うシーンもある。

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 そのほか,予期しないタイミングで少女に襲いかかってくる,“初見殺し”的なお化けもいるので,探索中は気が抜けない。彼らのほとんどは,静寂の中で突然現れるので,プレイヤーの心臓音まで一気に早めてくれる存在でもある。ホラーとしてはベタな演出ではあるが,そのあたりは覚悟してプレイに挑んでほしい。

本作にBGMはなく,プレイヤーの耳に聞こえているのは効果音のみだが,その静寂がプレイヤーの恐怖をあおってくる
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 また,イベント的に現れるお化けの中には,特定の手順を踏まないと逃げ切れないものもいる。ゲーム中に具体的なヒントは提示されないため,何度かトライ&エラーを繰り返して,彼らから逃げ切るための手段を探っていく必要があるのだ。少女はできることが限られているので,攻略法も自ずと限られるわけだが,一部のお化けには筆者もかなり手こずらされた。このあたりはアクションゲームとして楽しめるポイントだ。

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 以上のような内容になるので,本作をプレイするにあたって,最大限楽しむためには,雰囲気作りが必須となるだろう。
 まずは音響関連。心臓音システムの鼓動を確実に聞くのはもちろんのこと,背景に聞こえる虫の声や古びた街灯のノイズ,風や川の流れの音など,夜の静寂や恐怖を演出する効果音を楽しむために,ヘッドフォンやイヤフォンは用意しておくのがオススメだ。
 またゲーム中の画面が暗めなので,周囲があまり明るいと画面が見づらくなってしまう。外へ持ち出せるPS Vitaのタイトルだからといって,さんさんと輝く太陽の下で本作をプレイする人は少ないと思うが,できれば周囲を暗くしたほうが,雰囲気を楽しめるだけでなく,ゲーム自体も遊びやすくなるはずだ。

アイテムには重要なものとそうでもないものがあるようだ
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重要なアイテムは「ノート」に記録され,必要な場所で使うことができる
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特定のイベントをクリアすると,少女の思いがつづられたノートのページが表示される。次の探索先のヒントが書かれていることも


「死」と向き合う少女の心と一体化する,怖くて切ない物語


 実のところ筆者は本作をプレイするまで,そのグラフィックスなどから雰囲気重視の手軽なゲームかと思っていたのだが,その予想はいい意味で裏切られた。
 主人公の少女が探索する街はかなり広く,入り組んだ街並みはフィールドというよりはダンジョンを思わせる。いつどこから襲ってくるかもわからないお化けの存在に恐れおののきながら進めることで,少しずつ地図が開いていく感覚がことのほか楽しい。ゲームに詰まってしまったら,地図の開いていない場所に行ってみるというのも,このゲームの確実な進め方である。

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 街中というシチュエーションも,本作の魅力の1つ。郊外の住宅街から巨大な学校,商店街や田園,山道,崖など,夜に歩き回るのは怖いながらも,好奇心が刺激される舞台が揃っていて,おもむくプレイヤーを飽きさせない。ゲーム中はセーブポイントの家にいつでも帰れるので,やめたいときにやめられて,遊びたくなったらいつでも再開できるのも嬉しいところだ。
 メインストーリー以外にも一部のイベントで登場するお化けにはちょっと切ないエピソードなどが添えられ,ゲームを進めていくことで,この物語で初めて「死」と向き合う少女の心と一体化することができるはず。恐怖体験を味わいつつも,絵本を読んでいるような感覚にもなるのは,彼女の仕草やセリフなどの影響が大きいようにも思えた。

少女の心理描写やセリフ(音声はない)は独自のフォントで表示される。漢字が使われていないのも印象的だ
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 プレイヤーの腕にもよると思うが,サクサク進んですぐ終わりという内容ではない。ホラーゲームをプレイするには少し季節外れではあるが,この秋から冬にかけての夜長にじっくりとプレイして,ノスタルジックな恐怖体験を味わってもらえればと思う。

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