連載
「そうだ アニメ,見よう」第27回は5月6日公開の「劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-」。南川達馬監督へのインタビューも掲載
2017年春アニメは過去に類を見ないほどの混戦模様。この中から飛び出してくる作品はあるのか? 各作品の今後の展開が気になるところだ。
さて,第27回のタイトルは,「劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-」。原作は真島ヒロ氏が「週刊少年マガジン」で連載中のファンタジーコミック「FAIRY TAIL」で,アニメはもちろん,スマホ向けRPG「FAIRY TAIL 極・魔法乱舞」(iOS / Android)といったゲーム化作品など,さまざまなメディアに進出している人気タイトルだ。その劇場版アニメ第2弾となる本作が,5月6日から全国で公開される。
制作は,TVアニメ第1期と同じA-1 Pictures,監督は「ラブライブ!サンシャイン!!」や「進撃の巨人」の演出を手がけた南川達馬氏が務めている。今回はその南川監督に本作の見どころを語ってもらっているので,見逃さないように。
「劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-」
そんなある日,フィオーレ王国の神殿に祀られた魔法の杖「竜の涙(ドラゴンクライ)」が,王国の反逆者ザッシュ(CV:斉藤次郎)によって奪われ,ステラ王国の国王アニムス(CV:古川 慎)の手に渡ってしまう。竜の涙は,人間達に葬られたドラゴンの怒りが宿る杖で,世界を滅ぼすほどの力を秘めているという。
杖奪還の依頼を受けたナツ達フェアリーテイルの一行は,ステラ王国へと潜入する。そして竜の涙を巡る攻防の中で,彼らはアニムスに仕える魔導士ソーニャ(CV:悠木 碧)と出会うのだった。
竜の涙を我が物にしようとするアニムスの狙いは? 国を救いたいと願うソーニャの秘密とは? さまざまな思惑が交錯する中,フェアリーテイルは世界の危機に立ち向かう。
2006年にコミック連載がスタートし,10年以上経った今でも人気が衰えない「FAIRY TAIL」。ついに原作は最終章へと突入しているが,劇場版ではその最終章に至るまでの“起源(ルーツ)”が描かれているという。
本作のシナリオは,真島ヒロ氏がこの劇場版用に描き下ろした200ページに及ぶネームをもとにした完全オリジナルストーリー。ポスタービジュアルには,半竜と化したナツの姿と「その力は、希望か破壊か」というコピーが添えられ,PVでも「真の力に目覚める」と謳われている。
滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)としてドラゴンに育てられたナツのエピソードが,今回の物語の軸となるようだ。
南川達馬監督が語る「劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-」の魅力
そして,原作には登場しないゲストキャラクターとして,アニムスとソーニャ,ステラ王国軍所属の“スリースターズ”の面々が登場する。
アニムスとソーニャは,ナツ達とどう関わってくるのか? ナツは本作でどうなってしまうのか? 気になる本作の見どころを監督の南川達馬氏に語ってもらった。
「FAIRY TAIL」は,連載10周年を迎えた人気作品ですが,その劇場版アニメの監督ということでプレッシャーなどは感じられたのでしょうか? 本作のオファーが来たときの率直な感想をお聞かせください。
南川達馬氏(以下,南川氏):
原作コミックが有名タイトルであるほど,アニメとして作る場合,どうしてもズレが生まれます。動かすときの都合というか,映像化すると漫画で見るコマとは違ってきますよね。有名なタイトルであるほど多くのファンがいるわけで,その違いに気づく人が多くなるわけです。
4Gamer:
コマ以外の部分は読者のイメージで補足していますしね。
南川氏:
その読者が持っているイメージの中で,どれがいちばん大多数になるのだろうと考えたのですが,結局はコマから読み取るシンクロ率が,どれだけ高いかによって変わると思うんです。なので読み解くのはなかなか難しい。どれだけの人のイメージに近づけることができるのか,これがいちばんのプレッシャーでしたね。
4Gamer:
「FAIRY TAIL」は,過去にTVアニメシリーズ2回と劇場版が1回制作されていますが,その3作品と今回の「DRAGON CRY」では,どのような差別化がされているのでしょうか。
南川氏:
仕事を請けるとき,過去作があるものは必ずリサーチしています。とくに歴史の長いものは,アニメにしてもコミックにしても,どの辺りの絵柄でいくのか決める必要があるので,かなり綿密に調べましたね。
原作コミックが60巻も刊行されている「FAIRY TAIL」は,第1巻と30巻付近ではまるで絵柄も変わってきます。長期のTVアニメだとそれに合わせて設定を起こし直すときもあるんです。TVアニメ版「FAIRY TAIL」は,現在の絵柄とは違う部分も多いということもあり,今回はキャラクター設定を劇場版用に新しく起こし直しています。
200ページにも及ぶ真島ヒロ先生のネーム
4Gamer:
今回のストーリーは,真島ヒロ先生が描き下ろした約200ページに及ぶネームをベースにしていると聞いていますが,これはどのようなものなのでしょうか?
南川氏:
約200ページですから単行本1冊分ぐらいでしょうか。セリフなども手書きの,いわゆる漫画のネームでした。
4Gamer:
アニメは通常,物語はシナリオ,シーンのカットは絵コンテを元に製作されますが,漫画のネームとはかなり作りが異なりますよね。現場のスタッフも戸惑われたのでは?
南川氏:
普段はシナリオを起こして,それに対して絵コンテを描く際のカット数を計算するんです。ペラ何枚のシナリオだったら,尺20分でTVサイズになるとか。それを計算しつつ絵コンテに入らないと,仕上がった時点でとんでもなく尺がオーバーしてしまうことになります。
ネームでいただいた場合,コマとコマの行間が計算できないんです。バトルシーンなどは,漫画だと2コマで済んでいるところも実際には5,6回攻撃が入っていることもあるじゃないですか。アニメだと間に入るカットもあるので,その時間は何倍にもなります。ちょっと時間を計算するのが難しかったですね。
4Gamer:
なるほど,文字と絵の違いですね。
南川氏:
ただ,やはり文字ではなく,絵でいただいているので,真島先生のやりたいことが明確に伝わってくるという,メリットがありました。話のつながりなどを整えるにしても,ここを外さないようにすれば,先生の意図を外すことはないだろうという判断がしやすかったですね。
4Gamer:
真島先生は,今回どの程度監修されたんでしょうか?
南川氏:
先生のネームを元にシナリオを起こして,打ち合わせを始めたんですが,設定だったり,コンテだったり,すべてチェックしていただいてます。「ここをちょっと切っちゃいましょうか」といった編集的なところまで,ご協力いただきました。
4Gamer:
かなり詳細にわたってチェックされたんですね。週刊連載を抱えているので,お忙しいはずですが……。
南川氏:
1週間に一度,打ち合わせの日を設けて,きっちり監修していただきました。
4Gamer:
聞くところによると,真島先生は趣味のゲームをプレイする時間を捻出するために,急ピッチで原稿を上げたこともあるとか。相当,作業の早い方だと聞いてます。
南川氏:
はい,そう聞いています(笑)。それに作品に対する熱もすごいですしね。言ってしまえば,僕らが映画を作るということは,他人が自分の作品に手を入れるということじゃないですか。自分の作品をやるからには,ちゃんとやってほしいという熱意がすごく伝わってきました。
打ち合わせの場で絵を描いてもらったり,絵コンテも途中まで出来上がったところで見てもらって大きく修正を入れていたりもします。全面的にやり直したシーンもあります(笑)。もちろん,そのぶん非常にクオリティの高い内容になっていますよ。
初挑戦となる監督業への手応えは?
南川監督はこれまで「ラブライブ!サンシャイン!!」や「銀魂(3期)」など,数多くの作品の演出を手がけてますが,監督としてアニメに携わるのは初めてと聞いています。監督ならでは手ごたえなどがありましたら,お聞かせください。
南川氏:
アニメの演出と監督は,それほど変わらないと思っています。演出イコール話数監督と言われているぐらいなので,じつはやることはそれほど違いはないんです。ただ,権限は広がります。普通だったら演出,絵コンテ処理から入って,脚本に口を出すことは基本的にありません。しかし,監督になると,脚本(シリーズ構成)にも介入できるので,絵コンテもそれに沿ったものを作成できる。
考えることは増えますが,作品全体をコントロールできるという点が違いますね。そのぶん,作品の出来に対してのプレッシャーはすごいですが(笑)。
4Gamer:
TVシリーズと劇場版という違いもあると思うのですが。
南川氏:
そうですね。TVシリーズと比べると劇場作品は作られる本数がかなり少ないです。当然,アニメ関係者でも関わる回数が少ないので,関われたらすごく名誉なことだと思っているんですよ。さらに,TVシリーズと違って,見る人はお金を払って劇場に足を運ぶわけです。そして,興行収入という形ですぐに結果が出る。
名誉なことなんですが,そのぶん,覚悟と責任がすごい。夜も寝られない感じです(笑)。
4Gamer:
初体験の監督業で戸惑われたことは?
南川氏:
慣れていないということで,音楽の発注だとか脚本部分ですかね。演出家時代では,監督と一緒に打ち合わせに参加する機会がないと経験することはないところなので「どうなんだろう……」という不安はありましたね。
まあ,集団作業なので,やりたいことをちゃんと伝えるという部分がブレてなければ問題ないよね? と思ってはいますが(笑)。
監督だからできたこともあります。今回特殊な回想バンクを入れているのですが,その映像は特殊な処理をしているんですね。そういう通常とは違った処理を作品に反映させられたのは,監督だからこそできたことだと思っています。
4Gamer:
南川監督のカラーを反映させている部分はあるのでしょうか。
南川氏:
基本的に「これが自分はすごく得意です」とは言ったことがないんです。言ってしまうとそういう人だと見られてしまうことが嫌だったんです。アクションやギャグが得意だとか。結果として,今まで携わってきたタイトルで,この方面が得意と思われている部分はあると思うんですが,僕自身としては特化したつもりがなくて,どんなものでもできますというスタンスは変えてません。
ジャンルを問わずこれまでやっていますが,これがすごく得意と言えるほど,まだ実力もありませんから(笑)。経験を積んでいるといえば,日常系ぐらいでしょうか。あと,自身の趣味で言えば,わりとオバケとか化け物がで出てくるほうが好きですね。
カラーというよりは,劇場版としてのクオリティを高くするという部分に注力しているという感じでしょうか。
最終章につながる未公開のエピソード
4Gamer:
「FAIRY TAIL」といえば,多数の登場キャラクターによる群像劇という印象の強い作品ですが,PVを拝見したところ,今回はナツにスポットを当てて物語が展開されるように感じました。ナツの秘密などが劇中で明かされるのでしょうか?
南川氏:
はい,今回はナツに焦点を当てるというコンセプトで製作しています。最初は人数を多めに出す予定でしたが,それをやるとどうしても焦点を当てたい部分が薄れてしまうので,真島先生と相談して,キャラクターを絞って少人数が活躍する物語になっています。
ナツの過去の話というよりは,コミックで現在進行形のお話の先がちょっと明かされる形ですね。過去にも触れますが,そこは「FAIRY TAIL」の一貫したことだったりするので,比重としては少な目です。
ちょっとした仕掛けといいますか,原作につながる,語られていない部分の補完ができるような内容ですね。
4Gamer:
なるほど。現在原作では最終章を迎えていますが,「DRAGON CRY」を見ておくとさらに原作を楽しめるということですね。
南川氏:
そうですね。映像としてそれがふっとフラッシュバックすると,いい感じのスパイスになるんじゃないでしょうか(笑)。
4Gamer:
この劇場版のメインテーマをお聞かせください。
南川氏:
テーマは,原作と同様に「仲間との絆」です。ギルド「フェアリーテイル」の絆ということで,これに関しては一切ブレることはありません。
4Gamer:
今回のストーリーには,劇場版オリジナルのキャラクターとして,ソーニャ(CV:悠木 碧さん)やアニムス(CV:古川 慎さん)が登場しますが,彼らはどのようなキャラクターなのでしょうか?
南川氏:
彼らは,ナツやルーシィ達と対になるようなキャラクターです。先ほども話したとおり,今回はナツに焦点を当ててますが,いろいろな部分で彼とは対照的な登場人物となります。
4Gamer:
ナツにとってアニムスが,ルーシィにとってはソーニャが対になるということですか?
南川氏:
いえ,2人の関係そのものです。先ほどの“絆”のあり方の違いだったり,どういう感じで関わっているかだとかが,すべて真逆になっている。それを見ることによって,じゃあナツ達はどうなんだと,改めて思っていただけると,原作にもさらに入り込みやすいと思います。
4Gamer:
劇場版ならではの仕掛けや,見どころをお聞かせください。
南川氏:
劇場作品第2弾ということで,僕らの技術も向上しています。映像のクオリティは見応えありますし,お馴染みの魔法のエフェクトに関してもド派手なものになっています。さらに,ポスターを見てもらうと分かるんですが,竜を示唆していまして,なかなか普段ならばやらないような巨大な敵が登場します。そのアクションに関しては,とにかくスゴイので楽しみにしていてください。
4Gamer:
最後に読者へのメッセージをお願いします。
南川氏:
僕もスタッフもがんばって取り組みまして,とてもいい映像になっております。ファンのみなさんの期待に応えられる作品に仕上がってますので,ぜひとも劇場へ足を運んでもらいたいです。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
10年以上も続いてきた「FAIRY TAIL」の総決算という意味合いも強い本作。どんな作品に仕上がっているか,5月6日の公開が待ち遠しい。
なお,劇場では,真島ヒロ氏描き下ろしクリアファイルが付属するムビチケカードが販売されている。価格は一般が1400円(税込)で,小人が900円(税込)。数量限定なので,気になる人は公式サイトで詳細をチェックしておこう。
「劇場版 FAIRY TAIL -DRAGON CRY-」公式サイト
公開データ |
---|
2017年5月6日公開 |
キャスト | |
---|---|
ナツ・ドラグニル:柿原徹也 | ルーシィ・ハートフィリア:平野 綾 |
ハッピー:釘宮理恵 | グレイ・フルバスター:中村悠一 |
エルザ・スカーレット:大原さやか | ウェンディ・マーベル:佐藤聡美 |
シャルル:堀江由衣 | アニムス:古川 慎 |
ソーニャ:悠木 碧 | ザッシュ:斉藤次郎 |
スワン:たかはし智秋 | ドール:竹内良太 |
ガプリ:八代 拓 |
スタッフ |
---|
原作:『FAIRY TAIL』真島ヒロ (講談社「週刊少年マガジン」連載) |
監督:南川達馬 |
脚本:米村正二 |
キャラクターデザイン・総作画監督:山田裕子 |
音楽:高梨康治 |
音響監督:はたしょう二 |
制作:A-1 Pictures |
製作:劇場版フェアリーテイルDC製作委員会 |
配給:ギャガ |
(C)真島ヒロ・講談社/劇場版フェアリーテイルDC製作委員会 |
真島ヒロ総合プロデュース
『劇場版FAIRY TAIL -DRAGON CRY-』
前代未聞!超衝撃!入場者プレゼント決定!!!
原作者描き下ろし劇場版原案ネーム
約200P完全収録スペシャル小冊子!!!!!!
この度、映画『劇場版FAIRY TAIL -DRAGON CRY-』(配給:ギャガ)が2017年5月6日(土)より全国公開することが決定致しました!
「週刊少年マガジン」で連載中の大人気コミック『FAIRY TAIL』の新たな物語がスクリーンに刻まれる。2006年に連載が始まった『FAIRY TAIL』は、幅広い年齢層に愛され、TVアニメは全277話という長期に渡り放送され、さらには海外からも高い評価を受け、全世界累計発行部数6,000万部を超える大ベストセラーとなった。そして、今回の劇場版は、原作者・真島ヒロが自ら描き下ろした約200ページに及ぶ渾身のネームを基に創られたオリジナルストーリーだ。
断崖絶壁に囲まれた孤島、ステラ王国を舞台に、ナツやルーシィたちおなじみのメンバーに加え、魅力的な劇場版オリジナルキャラクターたちがスクリーンを彩る。連載中の原作は既に最終章に突入!!
興奮と感動が加速する中、その起源が、スクリーンで遂に明かされる!?
本作への期待が高まる中、超豪華入場者プレゼントが解禁!
第一弾にはなんと、「数量限定!真島ヒロ執筆 劇場版原案ネーム」が決定!!!原作者の真島ヒロ先生が今回の劇場版のために自ら執筆、本作の原案となった、幻のネームがまさかの完全収録!そのボリュームは、驚愕の約200ページ!単行本一冊に相当する厚みだ!真島先生の劇場版にかける熱い思いが凝縮された、贅沢で貴重な冊子。ファンは勿論、全アニメファン必見!話題騒然間違いなしの入場者プレゼントが実現した!!!
また第二弾には、「キャスト複製サイン入り キャラクターブロマイド全3種(ナツ、ルーシィ、ソーニャ)」も決定!主人公・ナツ、ヒロイン・ルーシィ、劇場版新キャラクターソーニャのイラストに各キャストの複製サインが入った、ブロマイドをプレゼント!公開2週目の5/13(土)より、数量限定で配布が決定、超貴重な数量限定・ブロマイドをぜひ劇場でゲットしよう!!
- 関連タイトル:
FAIRY TAIL 極・魔法乱舞
- 関連タイトル:
FAIRY TAIL 極・魔法乱舞
- この記事のURL:
キーワード
(C)真島ヒロ・講談社/フェアリーテイル製作委員会・テレビ東京
(C)COPRO
(C)真島ヒロ・講談社/フェアリーテイル製作委員会・テレビ東京
(C)COPRO