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「そうだ アニメ,見よう」第26回は吉成 曜監督の「リトルウィッチアカデミア」。魔女を目指す少女アッコの成長物語
過去最高の作品数となった,2017年春アニメがいよいよスタート。見たいアニメの数が多すぎて,寝不足の人も多いのではないだろうか。
さて,第26回のタイトルは,「リトルウィッチアカデミア」。本作は,第1作が2013年に文化庁若手アニメーター育成プロジェクト「アニメミライ2013」の参加作品として公開され,その後,続編となる「リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード」が劇場公開。その2作品をTVサイズに作り直したという,ちょっと特殊な経緯を持った作品だ。
ちなみに,第1作は期間限定でYouTubeにアップされ,海外を中心に高い評価を獲得。それを受けて制作が決定した「魔法仕掛けのパレード」は,制作費をクラウドファンディングサイトのKickstarterで募り,目標額の4倍となる総額62万5518ドル(約6000万円)を1か月で集めている。
TV版のは第1作と同様にTRIGGERが担当,原案・監督・キャラクターデザインは「新世紀エヴァンゲリオン」や「トップをねらえ2!」を手がけた吉成 曜氏が務めている。
「リトルウィッチアカデミア」
新たに始まる学校生活への期待に胸を膨らませるアッコだったが,一般家庭で育った彼女に魔法の授業のハードルは高く,クラスでも落ちこぼれのレッテルを貼られてしまう。
さらに,「シャリオのようになりたい」と言うアッコに対し,周囲は冷めた視線を向ける。ルーナノヴァ始まって以来の天才と呼ばれるダイアナ(CV:日笠陽子)も,シャリオを魔法界で評価するものはいないと言い放つ。
それでも信念を曲げないアッコは,ルームメイトのロッテ(CV:折笠富美子)やスーシィ(CV:村瀬迪与),教師のアーシュラ(CV:日髙のり子)に励まされながら,授業に追いつこうと努力するのだった。
どんなときでも前向きなアッコ。しかも身体もやたら丈夫だ |
シャリオのカードがアッコの宝物 |
変身魔法は失敗ばかり |
ほうきで空を飛べなくても,変身魔法がうまくいかなくても,アッコは諦めない。何度でもトライして失敗し,第13話「サムハインの魔法」では,つたないながらもついに変身魔法を成功させる。それは,幼い頃にシャリオから聞かされた言葉「信じる心があなたの魔法」を忘れないからこそできたことだ。この言葉が彼女の原動力であり,本作のメインテーマなのだろう。
シャリオはアッコにとって夢そのものとも言える存在だ |
落ちこぼれ魔女っ娘達の友情
その言葉と同様に,アッコを支えているのが,友人のロッテとスーシィだ。本にしか興味のないロッテと,毒物マニアのスーシィは,アッコの起こすドタバタに巻き込まれるだけだったが,やがて彼女を友人として認めるようになる。まだ幼くぎこちない彼女達の友人関係は,見ていて非常に初々しい。個人的には,いつもクールなスーシィがデレるところを見てみたいものである。
また,なにかとアッコとは対照的に描かれるダイアナの変化も気になるところだ。徐々に才能を開花させていくアッコに,戸惑いを隠せないダイアナ。まだまだライバルというにはほど遠い存在のダイアナが,アッコを意識しだしたのが面白い。
アッコを取り巻くクラスメート達の人間関係が,彼女の成長でどう変化していくのか,後半戦となる今後の展開から目が離せなくなりそうだ。
ちょっと夢見がちなロッテ |
アッコに対して辛らつなスーシィ |
すべてにおいて優秀なダイアナ。アッコとは正反対なキャラクターだ |
アーシュラ先生の正体はやっぱりあの人
そして,見逃せないのが学校生活の裏で展開されている,魔法世界の危機にまつわる謎だ。シャリオがある日突然,姿を消したのもこれに関係してのことらしい。第11話「ブルームーン」でアーシュラ先生の正体がついに明らかにされたが,ルーナノヴァを創立した9人の魔女の1人,ウッドワード(CV:堀江美都子)の登場で謎は深まるばかり。
アルクトゥルスの言の葉,失われたクラウソラスなど,物語の謎を紐解くキーワードが数多く登場し始めたが,その謎の中心はシャイニィロッドを持つアッコとなるようだ。なぜ,魔法世界の魔法力が低下しだしたのか? シャリオが姿を消した理由は? 魔女の奥義グラントリスケルとは? 原作がないだけに,考証マニアの人にはたまらない材料といえる。
ついに正体が明らかにされたアーシュラ先生。ヒントは彼女の名前の由来だ |
敏腕アニメーター・吉成 曜氏の初監督作品
こうしたストーリーを盛り上げているのが,吉成氏によるテンポのいいシナリオ展開と,こだわり抜かれた作画だ。吉成氏は,ガイナックスの「天元突破グレンラガン」や「フリクリ」などで手腕を振るった,知る人ぞ知る敏腕アニメーター。「ヴァルキリープロファイル」では実兄の吉成 鋼氏と共同でキャラクターデザインを手がけているので,名前を知っている人も多いのではないだろうか。
その吉成 曜氏の初監督作品となる本作は,丁寧な人物の動作や,けれん味のあるアクションシーンなど監督のこだわりが詰め込まれた作品となっている。
そのほかにも,アニメを愛する監督ならではの,さまざまな過去のアニメ作品のオマージュが随所に仕込まれているので,探してみるのも面白いかもしれない。
ファンタジックなシーンも本作の魅力 |
パワフルなアッコのアクションは見応えアリ |
ちなみに,本作をまだ見てない人向けに,前半1クールのダイジェストPVが公開されている。約64分もの長尺に前半ストーリーの見どころが詰め込まれているので,重要な場面を見逃してしまったという人にもオススメのPVだ。
メイン&エンディングテーマを一新
第14話から本作のメイン&エンディングテーマが変更されている。オープニングテーマはYURiKAさんの「MIND CONDUCTOR」,エンディングテーマは大原ゆい子さんの「透明な翼」で,どちらのアーティストも前半クールから引き続きの登場だ。
「MIND CONDUCTOR」は,前半の「Shiny Ray」のようにポップな曲調で本作の持つファンタジックな雰囲気にぴったりの曲。「透明な翼」はしっとりとした曲調が印象的な曲だ。それぞれ,5月24日にアニメ盤とアーティスト盤が同時に発売予定となっている。
・第1クールOP「Shiny Ray」ノンテロップ映像
・第1クールED「星を辿れば」ノンテロップ映像
本作は,少女の成長物語というシンプルなテーマを描きながらも,視聴者を飽きさせないさまざまな工夫が凝らされた,非常にクオリティの高い作品だ。派手なアクションや奇をてらった展開で視聴者を驚かすのではなく,夢や友情といったごく当たり前のことを丁寧に描き,万人が楽しめるものに仕上げている。
もし,続編があるのなら,ぜひ朝の時間帯で子供に見てほしい,そう願ってしまう作品なのだ。
2クール目となる第14話以降は,アーシュラ先生の正体を知る,謎の教師クロワが登場し,物語はますますヒートアップしていく。アッコの夢は叶うのか,魔法世界の危機はどうなってしまうのか,今後も「リトルウィッチアカデミア」から目が離せない。
「リトルウィッチアカデミア」公式サイト
放映データ |
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2017年1月〜 |
キャスト |
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アツコ・カガリ:潘 めぐみ |
ロッテ・ヤンソン:折笠富美子 |
スーシィ・マンババラン:村瀬迪与 |
ダイアナ・キャベンディッシュ:日笠陽子 |
アマンダ・オニール:志田有彩 |
コンスタンツェ・アマーリエ・フォン・ブラウンシュバンク=アルブレヒツベルガー:村川梨衣 |
ヤスミンカ・アントネンコ:上田麗奈 |
アーシュラ先生:日髙のり子 |
クロワ・メリディエス:竹内順子 |
スタッフ |
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原作:TRIGGER/吉成 曜 |
監督・キャラクター原案:吉成 曜 |
シリーズ構成:島田 満 |
メインキャラクター:半田修平 |
美術監督:野村正信 |
色彩設計:垣田由紀子 |
撮影監督:奥村大輔,萬 直樹 |
メインアニメーター:堀 剛史 |
デザインワークス:芳垣祐介 |
編集:坪根健太郎 |
音楽:大島ミチル |
音響監督:渡辺 淳 |
音響効果:川田清貴 |
制作:TRIGGER |
オープニングテーマ:「Shiny Ray」YURiKA |
エンディングテーマ:「星を辿れば」大原ゆい子 |
第2クールオープニングテーマ:「MIND CONDUCTOR」YURiKA |
第2クールエンディングテーマ:「透明な翼」大原ゆい子 |
■Blu-ray&DVD情報
Blu-ray&DVD Vol.1 初回生産限定版
2017年4月19日(水) 発売
収録話数:第1話〜第3話収録
【Blu-ray】
品番:TBR27086D
価格:¥6800+税
【DVD】
品番:TDV27095D
価格:¥5800+税
初回封入特典
◆オリジナルメイキングブック
(キャラクター設定,美術設定,コンテ解説等を収録した48P)
◆復刻版シャリオカード(2枚:シャイニィロッド/パピリオディア)
初回仕様
◆半田修平描き下ろし三方背アウターケース
基本仕様
【Blu-ray】
1080p High Definition 16:9ワイドスクリーン/片面1層/
リニアPCM 2.0ch ステレオ/英語字幕
【DVD】
16:9LB/片面2層/リニアPCM 2.0ch ステレオ/英語字幕
※仕様・内容は変更になる可能性があります。
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