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イルカになって青い海を泳ぐ「Jupiter & Mars」は,環境問題へのメッセージを伝える。プレイインプレッション&ミニインタビューをお届け
「Jupiter & Mars」公式サイト
「Jupiter & Mars」はPlayStation 4およびPlayStation VR向けのアクションアドベンチャーゲームだ(PS VR装着時の操作はHMDとコントローラを併用し,PS VRなしでもプレイ可能)。人類が消滅し,気候変動の果てに水没した世界が舞台になっており,プレイヤーはイルカとなって冒険をくり広げる。欧米では8月の発売が予定されている(日本発売は未定)。
今回,筆者はPS VRでのプレイを体験した。HMDを装着すると,そこはもう海の中。とにかく水中の景色が美しい。
プレイヤーはイルカのJupiterとなり,もう1頭のMarsと一緒に行動する。視線を進みたい方向に向けて,[R2]ボタンを押すと泳いでいくのだが,上を向いて水面に向かえば陽光が美しく輝き,下を向いて潜れば周囲が暗くなり,海の美しさと恐ろしさが伝わってくる。
左右に曲がるときには首を傾けることになる。これに慣れてくると,自分がイルカになった気分が強く感じられる。
[×]ボタンはエコーを放って周囲を探索でき,水中の地形が分かりやすく表示される。また,水鉄砲やビート板など人類文明の遺産が入った貝,行く手を遮る鉄の柵を発見することもあり,[○]ボタンによってMarsが突進してこれらを開いてくれる。こうして2頭のイルカが協力し合って,海中を探索していくのだ。
印象的だったのが,戦闘の要素がまるで存在しないこと。海中の赤いクラゲに触れると,チェックポイントまで戻されてしまうが,[□]ボタンの「集中エコー」を浴びせれば,一時的に消える。あくまで戦うのではなく,水中を探索していくゲームであり,暑い夏にのんびり遊ぶのにピッタリだと感じた。
会場では,Mielke氏に「Jupiter & Mars」やTigertronの成り立ち,そしてBitSummitにかける思いを聞くことができた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。Tigertronを立ち上げ,「Jupiter & Mars」を開発するに至ったきっかけを教えてください。
James Mielke氏(以下,Mielke氏):
僕は20年ほどゲーム業界に関わってきました。自分のクリエイティビティを満足させるために,会社を立ち上げようと考えたのが第1のきっかけです。もう1つのきっかけは,子供が生まれたことです。子供の将来にどんな世界を残せるのかを考えたとき,ゲームを通して環境問題について関心を持ってもらうという,僕なりの取り組みができるんじゃないかと思いました。
そして環境問題に関するゲームを作るTigertronを立ち上げ,第1回作品「Jupiter & Mars」が世に出たんです。
4Gamer:
ご自身の中で,2つのテーマが組み合わさったということですね。
Mielke氏:
ええ。「Jupiter & Mars」にはロンドンやギリシャ,ニューヨークといった都市が水没した形で登場します。このまま地球温暖化が進んで水位が上がるとどうなるか,プレイヤーさん自身が体験できるんです。
4Gamer:
「Jupiter & Mars」では環境保護団体の「Sea Legacy」「The Ocean Foundation」とのパートナーシップを組んでいるそうですが,これはTigertronから呼びかけた形でしょうか。
Mielke氏:
はい。環境問題に関するゲームを作るのが,Tigertronの取り組みですから。戦闘や残酷なシーンが出てくることはなく,「Jupiter & Mars」は家族で遊べるゲームです。
ただ,家族で遊べると言っても,お子様向けというわけではなく「コアなゲーマーでも楽しめる,ゲームとして面白いものを作ること」を大切にしています。
4Gamer:
水中の表現がとても美しかったです。ダイビングの経験をお持ちなんですか。
Mielke氏:
15歳の時にスキューバダイビングのライセンスを取りました。「Jupiter & Mars」の制作にあたり,もう一度,海に潜る復習をしています。
4Gamer:
そうした経験がゲームに活かされているんですね。MielkeさんはBitSummitの発起人ですが,今年の「BitSummit Vol.6」についてどう思われましたか。
Mielke氏:
ようやくBitSummitというイベントが定着した,と感じています。これからもBitSummitは続きますし,すでに来年のテーマとイメージを胸に活動を続けていますよ(笑)。
4Gamer:
出展者と来場者の距離が近く,アットホームなイベントですね。
Mielke氏:
BitSummitはご家族で参加し,皆さんが楽しくゲームを体験できるというイベントです。ゲームはすべて事前に審査していて,著作権的に問題のないものやアダルトでないものを展示するようにしています。そうしたところもアットホームな雰囲気につながっているのかもしれませんね。
4Gamer:
確かに,会場では親子連れや低年齢層が目立ちます。
Mielke氏:
BitSummitのコンセプトは,新しくて知られていないゲームや海外のゲームを体験するというものです。そうしたところでも,既存のゲームイベントと差別化ができていると思います。
よく「東京でもBitSummitをやってほしい」と言われるんですが,自分が京都に住んでいるときに立ち上げたイベントなので,関西のものとして大切にしていきたいという思いがあります。
4Gamer:
それではBitSummitに来たことのない人,「Jupiter & Mars」を楽しみにしているファンにそれぞれメッセージをお願いします。
Mielke氏:
インディーゲームというと「質が低いんじゃないか」と思われるかもしれませんが,実際に会場で目にすると,質の高さにビックリされる方が多いです。興味のある方は,ぜひとも西洋と東洋が出会うBitSummitに参加してみてください。
そして,「Jupiter & Mars」はユニークでビジュアル的にも刺激のある,カッコイイゲームにしようと思って開発を進めてきた作品です。また,ゲームというものが,環境問題という大切なメッセージを伝えられるメディアの1つであることを分かっていただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Jupiter & Mars」公式サイト
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