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目に,耳に「ヒプマイ」世界が殴りかかってくる。「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.1-」ゲネプロレポート
原作の音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」(以下,「ヒプマイ」)といえば,2017年のプロジェクト始動からCDリリース,声優陣によるライブ,コミカライズなどさまざまなメディアミックスを行い,公式Twitterのフォロワー数は59万人,YouTubeのチャンネル登録者数は63万人超という話題のプロジェクトだ。
原作「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」
ストーリー(※公式サイト引用)
H歴 武力による戦争は根絶された…
争いは武力ではなく人の精神に干渉する特殊なマイクにとって代わった。
その名も【ヒプノシスマイク】
このマイクを通したリリックは人の交感神経、副交感神経等に作用し、
様々な状態にすることが可能となる。
人々はラップを歌い,優劣を決する。
男性は中王区外のイケブクロ・ディビジョン、ヨコハマ・ディビジョン、
シブヤ・ディビジョン、シンジュク・ディビジョン等の区画で生活をすることになる。
各ディビジョン代表のMCグループがバトルをし、
勝った地区は決められた分の領土を獲得することができる。
兵器ではなく言葉が力を持つことになった世界で今、
男たちの威信をかけたテリトリーバトルが始まる。
この度の舞台化では,「ヒプマイ」に登場する4つのディビジョンのうちイケブクロとヨコハマが参戦。それに加えて,舞台オリジナルキャラクター「アカバネ・ディビジョン“North Bastard”」と,「ディビジョン・ダンス・バトル“D.D.B”」と称したダンサーたちが登場する。
本稿では,初日に行われた関係者・マスコミ向けのゲネプロ公演の模様をお届けしよう。
圧倒的なエンターテイメントで魅せた
「ヒプステ」の世界
銃撃戦や空爆のような荒々しいSEが流れるなか,スクリーンにプロジェクションマッピングで「中王区」と掲げられた鉄のゲートが現れる。どこかで聞いた声によるナレーションが流れ,映画を思わせるかのような壮大なオープニングで「ヒプステ」は幕を開けた。
ステージにはLEDスーツを身にまとったダンサーたちが現れ,続いてキャラクターたちが思い思いのラップを聴かせながら登場する。イケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”の山田一郎,二郎,三郎の三兄弟の手には,それぞれのMCネームのついたマイク。
ヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”の碧棺左馬刻はスカルモチーフのスタンドマイク,入間銃兎は無線機型マイク,毒島メイソン理鶯はトランシーバー型マイクを手にしていた。
歩き方,立ち姿や仕草1つとっても,まさに原作キャラクターたちそのままの雰囲気だ。
そして,舞台オリジナルキャラとなるアカバネ・ディビジョン“North Bastard”の堂庵和聖,狐久里梁山,蛇穴健栄が登場。1人は黒ずくめのフード姿で登場し,これから起こる波乱を予想させる。
キャストたちの迫力は言うまでもないが,それを一層引き立てていたのは演出だ。ステージ上にある可動式のスクリーンや,壁に映し出される映像など,本劇場の特性が最大限に利用されている。これにより視覚,聴覚いっぱいに「ヒプマイ」の世界観が殴りかかってきた。さらにその衝撃は上演中,何度も塗り替えられていくことになる。
物語は,「ヒプマイ」ではおなじみのラップバトルをテーマに,各々の確執(原作に登場する4つのディビジョンのリーダーがかつて組んでいたTDDこと「The Dirty Dog」も含む)や,兄弟愛,友情などを描いていく。
シナリオはごくシンプルなもので,おそらく「ヒプマイ」に触れるのが初めてという人にも分かりやすいだろう。ストーリーのピンポイントでさまざまなタイプのラップ曲が披露されるのだが,イメージとしては“ラップ版ミュージカル”が近いかもしれない。
なお,本作は2部制となっており,物語が語られる1部でのラップはそれぞれの曲すべてのリリックがプロジェクションマッピングで映し出される。また,さまざまな風景や心情イメージ,ヒプノシススピーカーの演出なども視覚的に見ることができるので,どこか“コミックを読んでいるような”感覚も感じられた。
ミュージカル的でもあり,ライブ的でもあり,コミック的でもあり,ときに映画的でもあり……次々と繰り出される演出にはとにかく驚きっぱなしで,いい意味でひとときも休まる暇がない。本作はいわゆる2.5次元舞台だが,あらゆるエンターテイメントの手法を取り入れているように感じた。
イケブクロ・ディビジョン“Bustar Bros!!!”は,楽曲でもドラマでも,3兄弟の絆が胸熱なディビジョンだ。舞台でもそれは健在で,何かと衝突する二郎と三郎,彼らをときに叱り,ときに大きな包容力で包む長兄の一郎に「やっぱりイケブクロだな……」と思わされる。
一方ヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”は,メンバーがヤクザ,悪徳警察官,元海軍と一筋縄ではいかないディビジョンなのだが,それぞれの持ち前のスキルで活躍していく様は「だからヨコハマは最高!」と感じさせられた。
そして舞台オリジナルのアカバネ・ディビジョンNorth Bastardは,本作においてこれ以上ない存在感を見せつけた。小説や漫画,映画などのエンターテイメントは敵対するライバルや悪役が魅力的なほど面白くなるものだが,アカバネの3人は見事にその役目を果たしたと言えるだろう。
2部では,本編でも活躍したD.D.Bが再び驚異的なダンスを見せてくれた。続いて,1部で激しい戦いを見せたキャラクターたちが再登場し,ダンスあり客降りありのラップで会場を熱く盛り上げていく。
本作で唯一舞台ならではの“惜しい”ポイントを上げるとすれば,オリジナルでこれだけの素晴らしい楽曲の数々を聴くことができるにもかかわらず,観客側が座ったままの鑑賞になることだろう。しかしこの作品が,舞台でなくては叶わなかった「ヒプマイ」の世界を表現できたのも事実だ。
筆者がどれだけ言葉を尽くしても,プロのカメラマンによる写真でも,この作品の良さはおそらく伝えきれない。本稿が公開されるころにはすべての公演が終了しているが,2020年春にはシブヤ・ディビジョン“Fling Posse”と,シンジュク・ディビジョン“麻天狼”を中心とした第2弾「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.2-」の上演も控えている。次の機会にも,多くの観客が「ヒプステ」に魅了されることとなるだろう。
<公演概要>
公演タイトル
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.1-
期間・劇場
2019年11月15日(金)〜12月1日(日) 品川プリンス・ステラボール
原作
EVIL LINE RECORDS
演出
植木 豪
脚本
亀田真二郎
キャスト
イケブクロ・ディビジョン“Bustar Bros!!!”
山田一郎:高野 洸
山田二郎:松田昇大
山田三郎:秋嶋隆斗
ヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”
碧棺左馬刻:阿部顕嵐
入間銃兎:水江建太
毒島メイソン理鶯:バーンズ勇気
アカバネ・ディビジョン“North Bastard”
堂庵和聖:岸本勇太
狐久里梁山:南部海人
蛇穴健栄:松浦 司
ディビジョン・ダンス・バトル“D.D.B”
Toyotaka RYO gash! SHINSUKE HILOMU Dolton KENTA Gen 松永一哉
主催
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage製作委員会
公式サイト
https://hypnosismic-stage.com/
公式Twitter
https://twitter.com/hm_rtstage
- 関連タイトル:
ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-
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ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-
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(C)『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage製作委員会