プレイレポート
「ディアブロ II リザレクテッド」のαテストをプレイ。オリジナル版の経験者がじっくりと見比べてみた
本作は,PC向けに2000年に発売された「ディアブロ II」のリマスター版である。グラフィックスを中心に大幅にアップグレードされており,それでいてオリジナル版の醍醐味が損なわれないように,細心の注意が払われている。
今回は,20年前のオリジナル版にハマっていた筆者が,リザレクテッドにおいてどの部分が変わり,そしてどの部分が変わっていないのかを隅々まで確かめてみた。オリジナル版の経験者は,ぜひ一読してほしい。
グラフィックスは高解像度かつ3Dで刷新。暗闇に映える光源など,没入感は格段にアップ
まずはグラフィックスから見ていこう。解像度は,オリジナル版が640×480で,拡張ディスク「ロード オブ デストラクション」を導入しても800×600ほどだ。それに対し今回のリザレクテッドでは,最大4K解像度かつワイド画面に対応しているほか,キャラクターやオブジェクトの大半が3Dで新たに描かれている。掲載するスクリーンショットを見れば瞭然だろうが,画面から受ける印象は,オリジナル版とはまるで別物だ。
また,単純にグラフィックスを緻密にしているのではなく,新たなデザインが追加されている部分もある。これはBlizzard Northにあったオリジナル版の開発資料をもとに,必要に応じて描き加えたものだという。
リザレクテッドとオリジナル版で同じシーンを見比べると,細かなオブジェクトが追加されていたり,見慣れたモンスターも装備の装飾が緻密になっていたりするのだが,とくに違和感は覚えなかった。オリジナル版もリザレクテッドも,同じ資料をもとにデザインされているからかもしれない。
ライティング周りは今回のゲームプレイ全体を通して,とくに印象に残った部分のひとつだ。クラス選択時に足下で燃えている焚き火や,プレイヤーキャラが放つ魔法のエフェクトなど,光源が周囲をリアルタイムで照らしており,とても美しい。
ちなみにリザレクテッドはワイド画面に対応したことで,画面内に表示できる領域が左右に広がっている。だが,プレイヤーキャラの視界の広さは変わらないので,たとえばダンジョンの内部や夜間において,画面内を暗闇が占める割合はオリジナル版より増すことになる。この,“黒”がより強調された画面構成が,ライティングをいっそう引き立てているのだ。
ゲーム開始直後は慎重に進まねばならないが,そんなときにファイアボルトやチャージボルトなどを暗闇に向けて放つと,その一瞬の光でモンスターや地形が浮かび上がるので,これを利用した索敵が有効である。物陰にいるキャスタータイプの敵からいきなり攻撃魔法を放たれて,ギョッとするようなこともあった。
こういったグラフィックスの進化に,リマスタリングされたBGMやSEなどが加わることで,ゲーム全体の不気味さや没入感などが際立っている。
刷新されたグラフィックスの裏でオリジナル版が同時に動く。操作時の手触り感はまさにディアブロ II
グラフィックスが刷新され,フレームレートが引き上げられているにもかかわらず,プレイヤーキャラを操作するときの手触り感は,オリジナル版から変わっていない。なぜそう感じるのか。実のところ本作では,刷新された3Dグラフィックスとは別に,オリジナル版のエンジンがバックグラウンドで同時に動いている。そして,プレイヤーが操作入力を行うと,最初にオリジナル側で処理され,その結果が3Dグラフィックスにも直ちに反映されるという仕掛けになっているのだ。
こういった仕様のため,たとえばスキルボタンを押してから実際に攻撃判定が発生するまでのちょっとした間なども,オリジナル版とほぼ同じように感じた。リザレクテッドのグラフィックスは見違えるほどきれいになっているのに,テストプレイの最中は常に「これはディアブロ IIだ」という確かな感触があるので,オリジナル版を覚えている者からするとなんとも不思議なプレイフィールである。
なお,ゲーム中に[G]キーを押すと,3Dグラフィックス版(リザレクテッドモード)と,2Dグラフィックス版(レガシーモード)を瞬時に切り替えられる。レガシーモードは画面解像度なども含め,オリジナル版とほぼ同じ仕様で動作する。
ディアブロ IIらしさを損なわない範囲で機能拡張も
オリジナル版の登場から20年を経て,アクションRPGのジャンルは大きく進化している。それらがリザレクテッドでどこまでキャッチアップされているかについて,端的に言うと,“ディアブロ IIから逸脱しない範囲内で”ささやかな機能拡張が行われている。
まず,拠点エリアにあるStash(アイテムの収納箱)は大きく拡張され,同一アカウント内におけるキャラクター間での共有も可能となった。別キャラへのアイテム移動も手軽に行えるわけだ。
ちなみにオリジナル版で同様のアイテム移動を行う場合は,地面にいったん置き,信頼のおけるほかプレイヤーにゲームを維持してもらいつつ,別のキャラでログインし直して回収しなければならなかった。リザレクテッドではそういった手間もなく,安心してキャラクター間のアイテム共有ができるのが嬉しいところ。
詳しくは以下のスクリーンショットを見てもらいたいが,そのほかにもドロップしたゴールドはクリックしなくても自動回収できるほか,透過マップが画面右上に小さく表示されるなど,細かな部分でいろいろと遊びやすくなっている。
2021年に登場するアクションRPGなら,上記の機能はあって当たり前と思う人もいるかもしれない。だが,本作に限らずリマスター化するときに,オリジナル版の仕様をどこまで保持するかの判断は非常に難しいだろう。もしかすると,「俺にとってのディアブロ IIは,地面のゴールドをクリックして拾うことなんだよ!」という人だっているかもしれない。
この悩ましい判断に対し,今回のリザレクテッドでは,オリジナル版の体験を極力尊重したうえで,追加機能に関してはそれぞれオン・オフで選べる仕様となっている。レガシーモードの解像度を800×600から640×480に落とすことすら可能なので,「オリジナルこそ最高!」な人も安心してほしい。
思いのほか快適だったゲームパッド操作
右手の腱鞘炎はDiabloプレイヤーにとっての勲章のようなものだと考えていたが,リザレクテッドではゲームパッドに鞍替えするかもしれない。本作はPCのほかコンシューマ機向けにもリリース予定で,つまりゲームパッドでの操作にも対応している。今回のαテストはゲームパッドでもプレイできたが,これが想像していた以上に快適であった。
画面下部のHUDをはじめ,インベントリやステータス,スキルツリーなどの各種メニューは,従来の「マウス+キーボード用」と「ゲームパッド用」の2種類が実装されている。ゲームパッドは接続するだけで追加設定は要らず,プレイヤーが入力に使うデバイスに応じて,UIが丸ごと切り替わる仕組みだ。
ゲームパッドでの操作中は,プレイヤーキャラの向きなどに応じて攻撃ターゲットが随時切り替わる。攻撃対象のモンスターはハイライトされ,周囲に敵がわんさかいるような状況でも,アナログスティックを微妙に傾けるだけで,任意のモンスターを狙いやすい。遠距離攻撃による引き撃ち(逃げ撃ち)のような繊細なアクションも,問題なく行えた。
ショートカットキーはトリガーボタンとの同時押しにも対応しており,合計で15個まで登録可能。タウンポータルの巻物のような,頻度は高くないが確実に使うアクションも含め,一通りカバーできるだろう。
αテストでは,開いたインベントリからポーションを直接飲むような,ごく一部の操作には対応しきれていなかったようだが(これは緊急時に必須のアクション),ゲームパッドでもほぼほぼストレスなくディアブロ IIを遊べたのには驚いた。
オリジナルに対するリスペクトが感じられたリマスター仕様
今回のαテストでプレイできたのはAct2までで,選べるクラスはバーバリアン,アマゾネス,ソーサレスの3種類のみと,ゲーム全体としてはごく一部である。そのため,まだすべての仕様を把握したわけではないが,今回プレイした範囲に限っていえば全体的に好ましい内容であった。
オリジナル版に対する,開発チームのリスペクトが随所から感じられるリマスター仕様となっているので,その点は安心してほしい。
個人的には,Blizzardにとって1つ前のリマスター作品にあたる「Warcraft III: Reforged」のクオリティが絶望的に低かったため,今回のディアブロ IIも心配していたのだが,いざ蓋を開けてみればまったくの杞憂であった。
それどころか気の早い話だが,本作の開発作業が完了したら,ぜひ初代「Diablo」も,同じ開発チームとコンセプトでリマスター化してくれないものかと期待している。
開発作業が順調に進めば,この「ディアブロ II リザレクテッド」は2021年内にリリースされる予定だ。今後は再度テストが行われる見通しなので,続報を楽しみに待とう。
「ディアブロ II リザレクテッド」公式サイト
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