プレイレポート
「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」プレイレポート。激しいバトルとRPGらしい要素が組み合わさった,高難度アクション
本作は,コーエーテクモゲームスのTeamNINJAと共同開発しているタイトルだ。TeamNINJAといえば,ハイスピードバトルの「NINJA GAIDEN」や,“戦国死にゲー”こと「仁王」シリーズなど,アクションゲーム作りに定評のあるチームである。本作も,キビキビとしたアクションが楽しい,TeamNINJAらしい仕上がりとなっている。
発売前の製品版を触る機会を得たので,プレイレポートをお届けしていこう。
黒いクリスタルを携えた戦士たちが,カオスを倒すために戦う
本作はタイトルに「FINAL FANTASY ORIGIN」とあるとおり,初代「FINAL FANTASY」を背景にした作品だ。「FINAL FANTASY」の最終ボスとして登場したカオスを倒すべく戦う,ジャック,アッシュ,ジェド,ネオン,セーラの5人の物語が描かれる。
そのため,本作を遊ぶうえで“「FINAL FANTASY」はクリスタルを持つ4戦士が主人公となった物語である”という概要は,押さえておいたほうがいい。本作の世界は確かに「FINAL FANTASY」のそれだし,ジャック,アッシュ,ジェド,ネオンは「FINAL FANTASY」の主人公たちと同様に,クリスタルを携えている。しかし,4人のクリスタルは,主人公たちのそれとは違って真っ黒。果たして彼らは何者なのだろうか……。
最も,主人公のジャックの正体は,開発者インタビューなどですでに語られている。彼のフルネームを知ると,察する人はいろいろと察してしまうと思うが,この情報は公式サイトでは非公開なので,知らない人はそのままプレイするのも楽しいと思う。
ジャックのキャラクター性は,かなり尖っている。鬱々としつつも荒々しい男で,カオスを倒すことしか頭になく,周囲の人間に対する配慮も薄い……と,RPGに出てくる英雄像からはほど遠い。そんな彼が4人の仲間とどのように触れあい,どんな結末を迎えるかが,本作の物語の肝と言える。
テンポ良いアクションゲームの面白さと,属性を意識するRPGの楽しさ
本作は,ステージ制で進行する。主人公のジャックを操作し,最大2人の仲間を引き連れてモンスターのひしめくダンジョンに飛び込み,ボスの撃退など指定された条件を満たすとクリアになる。難度やステージにもよるが,1ステージが30分ほどで終わることもあってテンポがいい。
ダンジョンの要所には「キューブ」と呼ばれる休憩ポイントがあり,HPやMPが回復し,回復アイテムである「ポーション」の使用回数も補充できるが,代わりに倒したモンスターも復活する。このあたりのルールは「仁王」シリーズ,もっと言えば“ソウルライク”なタイトルと同様だが,本作はそれらと比べてシビアなバランスではない。敵に倒されて経験値を落とすことはないし,高所から落ちても即死せず,体力を減らされるだけで済む。また,ジャックは攻撃や回避でリソース(スタミナ)を消費することはなく,能力値の振り分け要素もないため,プレイ感はかなり違うものとなっている。
また,公式サイトでは「高難度アクション」と銘打たれているものの,本作には「STORY」「ACTION」「HARD」と3つの難度が存在しており,自由に変更できる。デフォルトの「STORY」は「普段アクションゲームを遊んでいない方に向けた,戦闘と物語を楽しむことのできる難易度」とされており,ボスを初見で倒せることもあるぐらいだ。
戦闘に連れて行ける2人の仲間はそれなりに耐久力があるので,彼らに頼るのもアリ。難しいボスも,ジョブを変えて後方からの攻撃に徹したらサックリ勝てた……なんてこともあった。まずは難度を下げてゲームを先に進め,良い装備を集めてから高難度に挑戦するのも手だろう。
では,本作のバトルの面白さはどこにあるかというと,“属性を選び,敵の弱点を突いた攻撃をする”RPG的な側面の強い遊びと,“敵のモーションを覚えて見切り,適切な防御を行う”アクションゲーム的な遊びが,うまく組み合わされているところだ。
RPG的な側面を強調しているのが,一撃必殺のトドメ技「ソウルバースト」である。敵にこちらの攻撃を当てると,敵の「ブレイクゲージ」が減少する。これがゼロになると,体勢を崩した「ブレイク状態」になるので,そこにボタンを押すとソウルバーストが発動。雑魚ならHPが残っていても即座に倒せるし,ボスにも大ダメージを与えられる。
相手の種類によって演出が異なっているのも見どころで,敵から奪った杖で串刺しにしたり,翼をもぎ取ったり,抱え上げて背骨折りをかけたり,頭から真っ逆さまに地面へ落としたりと迫力満点だ。ジャックの力で敵を水晶のような石にして技をかけるため,荒々しいが陰惨さは薄く,敵がバリーン!と砕け散るのも相まって爽快感がある。
ソウルバーストを決めるうえで重要になるのが,前述した敵のブレイクゲージは,弱点属性で攻撃すると効率よく減らせること。炎が燃え盛る「ボム」なら水属性,ガイコツのような「スケルトン」は杖や槍を用いた砕属性の技を使うというように,弱点属性を把握しておくのが重要な仕組みがRPGっぽい。
このソウルバーストの最中は完全無敵であり,さらに衝撃波で周りも攻撃できる。そのため,敵の群れが待ち受けている場合,普通なら1体1体倒していくのがセオリーになるが,本作なら一気に突っ込んでソウルバーストを狙うのも有効だ。
続いては,“敵のモーションを覚えて見切り,適切な防御を行う”アクションゲーム的な遊びについて。これはジャックのブレイクゲージとガード,そして特殊防御「ソウルシールド」「ジャストガード」といった,防御回りのシステムで堪能できる。
ジャックがガードを固めれば,ガード不能技以外の攻撃を防ぐことが可能だ。しかし,ガードするとブレイクゲージが削られていき,ゼロになるとジャックの体勢が崩れ,一定時間行動不能になってしまう。敵の攻撃の威力が高いほど,防御時に多くのブレイクゲージを削られる。攻撃をギリギリで防ぐジャストガードを決めれば,ブレイクゲージの回復が早まるものの,筋骨隆々の「オーガ」や巨体のボスなど,一発のデカい相手にガード一辺倒で挑むのは危険だ。
こうした相手には,ソウルシールドの出番となる。これで攻撃を防ぐとモンスターがよろめくので,即座に逆襲できる。しかし,ソウルシールドは構えているだけでブレイクゲージがどんどん減少していく。普段はガードで凌ぎつつ,デカい一発に対してピンポイントでソウルシールドを出すのが理想だ。そのためには,相手のモーションを覚えて大技に対処することが重要となる。
つまり,本作にはガード関連で2種類の行動を取れる。敵が見え見えのコンビネーションを出してくるなら,途中までガードして最後の一発にソウルシールドを合わせる,なんてこともでき,自分の上達を感じられる。
ただし,ガード不能技はガードでもソウルシールドでも防げない。乱戦の中で周囲の敵に気を配りつつ,大技にはソウルシールドで割り込み,ガード不能技の予兆である赤い光が見えたら逃げにかかる……という臨機応変の立ち回りが求められるわけで,なかなかにスリリングだ。
敵が使ってくるアビリティの中には,ソウルシールドで吸収すると,ジャックがこれを奪って一時的に使えるものもある。各種の魔法はもちろんのこと,トンベリの「みんなのうらみ」をはじめとしたお馴染みのアビリティも奪える。飛び道具やその場設置の攻撃フィールド,毒攻撃などバリエーションも豊富で,うまく使うとなかなかに便利だ。新しい敵が出るたびに「こいつからはどんなアビリティを奪えるかな?」と楽しみになってくる。
そして,何よりも重要なのが,ソウルバーストやソウルシールドを決めると,MP上限アップ&MP回復の効果が得られることだ。ジャックはジョブに応じた「アビリティ」を使うことができ,そのためにはMPが必要となるのだが,初期状態のジャックのMP上限は低く,通常のアビリティなら2回しか使えない。しかし,ソウルバーストやソウルシールドを決めていけばMP上限も少しずつアップしていき,最終的には初期状態の3倍,普通のアビリティなら6回分にまでアップする。
MPは攻撃を当てることでも回復するが,その場ですぐにMPが欲しい場合も,これらの手段は有効だ。特にボス戦は攻撃のチャンスが限られているうえに瞬間火力も求められるし,アビリティの中には強力だが使うとMP上限が下がる大技も存在している。システムを理解してうまくソウルバーストやソウルシールドを決め,アビリティや大技の回転率をアップさせていきたい。
なお,MP上限のアップは一時的なもので,ステージをクリアすると元に戻ってしまう。また,ジャックがやられた時もMP上限が下がる(こちらはオプションで無効化することが可能)。
本作において特に印象的なのが,ジョブの「固有アクション」,打撃から派生する「コンボアビリティ」,バフや回避といった「コマンドアビリティ」という,発動条件も効果もさまざな3系列のアビリティを組み合わせて,キャラクターをカスタマイズできるシステムだ。
竜騎士は「ジャンプ」で跳んで急降下攻撃を行い,格闘士は連続パンチ「爆裂拳」を放つなど,各ジョブはシリーズでお馴染みのアビリティ「固有アクション」を使用できる。ジャックは手持ちのジョブから2種をピックアップでき,バトル中にボタン1つで切り替えられる。切り替えは瞬時に行われ,クールタイムのような制限もない。敵と離れた状態では魔術師の魔法で攻め,接近したら剣士に切り替えて戦い,また距離を取って魔術師に切り替える……というようなマルチな活躍も可能だ。
また,ジョブのピックアップ自体はメニューさえ開ければいつでもOKなので,敵の姿を確認した後にジョブを選んでもいい。接近戦のジョブで苦戦していたボスも,魔法で攻めればサックリとクリアできた,なんてこともあるため,いろいろな組み合わせを簡単に試せるのが嬉しい。
敵を倒して経験値を得ると,ジョブのレベルがアップする。得られた「ジョブポイント」を使えば,各ジョブ専用のスキルツリー「ジョブツリー」から,能力値を底上げしたり,高度なジョブをアンロックできたりする。格闘士と短剣士のレベルを上げていけば上位ジョブのシーフ。そしてシーフと侍で最上位ジョブの忍者……というように,テンポ良くジョブが増えていくため,どれを試そうかと目移りしてしまう。
高度なジョブの固有アクションほど癖が強く,下位ジョブは汎用性が高いため,状況次第では下位ジョブが役に立つのもポイントだ。例えば,魔術師は固有アクションで魔法を使える。魔法の詠唱時には自動でMPが回復するため,MPが切れていても,とにかく詠唱さえすればなにがしかの魔法は撃つことが可能だ。これが上位の黒魔道師や最上位の賢者になると,固有アクションで魔術師よりも強力で多彩な魔法を扱えるのだが,こちらにはMP回復の能力はない。MPが少ないけれど魔法を使いたいなんて場合は,黒魔道師でも賢者でもなく,下位ジョブの魔術師が役立つのだ。
このほかにも,近接系ジョブでは一番下の「剣士」が強力な自動反撃の固有アクションを持っていたり,格闘士の爆裂拳が簡単に火力を出せたりと,下位ジョブが単なる通過点にならないのが面白い。
そして,バフ系の固有アクションはジョブを切り替えても効果が続くものもあるため,いろいろな組み合わせを考えるのも楽しいところだ。例えば,バーサーカーの「バーサク」は一定時間攻撃力が上がる代わりにポーションを使えなくなる。しかし,もう1つのジョブを戦士にし,HP自動回復の「ウォークライ」も併用すればリスクを下げられる……といった具合だ。
コンボの特定段数から派生することで,固有アクションとは別の特殊なアビリティが発動するのがコンボアビリティだ。通常技1段目からの派生,2段目からの派生,3段目からの派生,レバー入れ通常技からの派生……というように,それぞれのコンボ派生を自由に設定できるという,格闘ゲームのキャラクターエディットを思わせるシステムとなっている。
こちらは1つの武器種のコンボアビリティが,さまざまなジョブのツリーに散在しており,取得したものならジョブに関係なく自由に組み合わせられる。例えば斧のコンボアビリティなら,1段目からの派生を斧士のもの,2段目からの派生をバーサーカーのもの……というように指定可能だ。属性付きの打撃や,相手を掴んでの投げ技,攻撃を受け止める技などその特性も多彩で,ボスの弱点となる属性の技で揃えたり,汎用性を重視したりといろいろなセッティングを楽しめる。
加えて,敵からドロップする武器の中には,その武器を装備している時だけ使える,特殊なコンボアビリティが付与されたものも存在するため,アイテム集めのモチベーションとなってくれる。
そして,コマンドアビリティはショートカットから使える特殊なアビリティだ。バフや打撃,固有アクションやコンボアビリティの補佐など,独特の効果が揃っている。こちらも,習得したものはジョブに関係なくセッティングが可能だ。
長くなったが,これらのシステムを理解すると,2種のジョブの固有アクション,コンボアビリティ,コマンドアビリティという3系列のアビリティを組み合わせて,ジャックをカスタマイズできる。
TeamNINJAのアップテンポかつ主人公のスペックが高い超人バトルは,今作でも健在だ。キャラクターがキビキビ動くことも相まって,戦っていて気持ちがいい。敵のモーションを見切るのが楽しいソウルシールドと,敵の弱点属性を突けば効率よく仕留められるソウルバーストによって,アクションゲームとRPGの面白さがうまく組み合わさっている印象を受ける。
特にTeamNINJAらしいのが,「チェインキャンセル」を活用した,ジョブを切り替えつつのコンボだ。チェインキャンセルとは,通常攻撃から各種のアビリティを使った後にジョブを切り替えることで,通常よりも早いタイミングで行動可能になるというもの。ジョブ1で攻撃→アビリティを使う→ジョブ2に切り替え→ジョブ2で攻撃→アビリティを使う……というようにバリバリ技がつながっていく。低難度の敵は耐えきれずに途中で倒れるが,HARDのモルボルなんかはもう最高のサンドバッグで,難度の上げがい,練習のしがいがあるというものだ。ぜひいろいろと試してみてほしい。
公式では「高難度アクション」を謳ってはいるが,難度を下げられるのに加えて仲間もいるし,死亡時のペナルティもMP上限が下がるくらいしかない。また,能力値の振り分けも存在しないため,行き詰まっても試行錯誤がしやすく,ボスにやられたときも,弱点や立ち回りに関するヒントが出るといった配慮もされている。
その一方で,画面の見やすさについては改善があっても良いように感じられた。画面が全体的に暗めで,敵の動きも素早いため,状況によってはモーションが見えにくい。また,敵の中には通常技で怯まない者もいるのだが,視認性の悪さで怯んでいるかいないかも確認しづらいことがあったのは気になる。
強面かつコミュ障なジャックのキャラクター性,謎が謎を呼ぶ物語,独特のシステムなど,クセの強い部分もあるタイトルだが,アクションRPGとして,TeamNINJAらしい面白いものに仕上がっている。2022年4月19日までは,製品版に引き継げる体験版が配信されており,マルチプレイも楽しめるので,興味がある人はまずはそちらを試してみよう。
「STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN」公式サイト
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- ライター:箭本進一
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