レビュー
PS4と一体化した状態で使えるHORI製の小型液晶ディスプレイを試す
HORI フルHD液晶モニター for PlayStation 4
HORIがこの種のディスプレイを扱うのは,本機が初めてではない。2001年にPlayStation用として発売された「コンパクトTFTモニター」という製品以来,据え置き型ゲーム機に取り付けて、一体化した状態で利用できる小型液晶ディスプレイをリリースし続けている。その系譜は表にまとめたとおりだが,HORIのPlayStationシリーズ用“合体型液晶ディスプレイ”は定番シリーズだったりするのだ。
製品名 | 対応機種 | 画面 サイズ |
解像度 | 発売年 |
---|---|---|---|---|
コンパクトTFTモニター | PlayStation | 5インチ | 未公開 | 2001年 |
コンパクトTFTモニター2 | PlayStation 2 (SCPH |
7インチ | 未公開 | 2005年 |
HD液晶モニター3 | PlayStation 3 (CECH |
11.6インチ | 1366×768 ドット |
2010年 |
HD液晶モニター3 HDMI対応 | PlayStation 3 (CECH |
11.6インチ | 1366×768 ドット |
2012年 |
フルHD液晶モニター for PlayStation 4 | PlayStation 4 | 11.6インチ | 1920×1080 ドット |
2014年 |
そんな歴史と伝統のある“合体型液晶ディスプレイ”の最新モデルは,PS4に対応したことと,画面の高解像度化が大きな特徴である。前世代に当たるPS3用のHD液晶モニター3シリーズは,11.6インチサイズで解像度が1366×768ドットだった。一方,PS4-014はサイズこそ同じであるものの,解像度は1920×1080ドットのフルHD解像度になっており,大幅に高精細化されているのだ。
発売からだいぶ間が開いてしまったが,PS4-014を実際に試用する機会を得たので,その使い勝手や表示品質をチェックしてみよう。
PS4本体との一体感が高いデザインが魅力
PS4-014の製品ボックスを開けると,ディスプレイ本体に加えて,PS4に本機を取り付けるための固定用アタッチメントが2つ,長さ25cmのHDMIケーブルと給電用のACアダプターが1本ずつ出てくる。
液晶パネルを閉じた状態での本体サイズは,実測で279
PS4-014本体はクラムシェル型ノートPCのような形状をしており,ノートPCのように開くと,11.4インチの液晶パネルが顔を出す。
開いた状態の右側ヒンジの手前には,6個の丸いボタンが並んでいるが,これらは電源ボタンや,後述するOSDメニューの設定用ボタンだ。
本体手前側には,小さなステレオスピーカーが埋め込まれている。ただ,スピーカーの出力や直径といったスペックは公表されていない。なお,サウンド入力ソースはHDMIのみである。
接続端子類はPS4-014の背面側にまとめられている。ビデオ入力インタフェースとしては2系統のHDMI(Type A)端子が用意されているので,合体相手のPS4とは別に,ほかのゲーム機やPCを接続して使うこともできる。背面には3.5mmミニピンのヘッドフォン出力端子が2つあるため,ヘッドフォンを使ってPS4の音声を2人で聞くという使い方も可能だ。
なお,PS4-014は奥行き方向のサイズがPS4よりも3mmほど大きいため,取り付けた状態ではわずかにPS4-014の後部が出っ張る形になるが,実用上は問題あるまい。
それではPS4-014をPS4に取り付けてみよう。まずは,PS4の上にPS4-014を重ねて,PS4本体前面とPS4-014前面が面一(つらいち)になるよう位置を調節する。ここで固定用アタッチメントの出番だ。固定用アタッチメントは,“片方の横棒が短い「コ」の字型”をしているのだが,このうち,長いほうには2つ穴が空いており,こちら側が最終的にPS-014側の突起と合うことになる。
次に,固定用アタッチメントの下側をPS4の側面にあるスリット部分に引っかけてから,PS4-014側にはめ込むように取り付ける。これだけで取り付けは完了だ。あとはPS4のHDMI出力端子とPS4-014のHDMI入力端子を,PS4-014付属のHDMIケーブルで接続するだけでいい。
なお,PS4の側面スリットは吸気孔となっているので(関連記事),ここをふさがないようにする必要があるわけだが,固定用アタッチメントはその点でよくできており,側面スリットはほとんどふさがない。取り付けても吸気の邪魔にはならないわけだ。
実際に装着状態で使ってみても,PS4に内蔵された空冷ファンが余計に動くようなことはなかった。PS4-014がPS4本体の冷却を妨げる心配は無用と言っていいと思う。
PS4本体のサイズと形状に合わせてデザインされているおかげで,PS4-014を合体させた状態でも,全体の外観にはあまり違和感がない。HORI歴代のシリーズと比べても,違和感のなさという点では優れたデザインといっていいと思う。
ただ,前述したとおり,PS4-014自体の厚みが約28mmあるので,PS4本体とPS4-014を重ねた状態では,ディスプレイを閉じても実測で約85mmの厚さがある。一体化させると3段重ねした重箱のような雰囲気になるのは好みが分かれそうだ。
実際,合体した状態で電源インジケータの光を確認してみたが,まったく問題なく視認できた。PS4はシャットダウン中やスリープ移行中にインジケータの光が動くのだが,以下に掲載した写真でも分かるとおり,光は問題なく確認できている。ささいなことかもしれないが,使い勝手を損なわないこうした細やかな工夫は歓迎したい。
映像の精細感は高いものの
バックライトのムラがやや気になる
PS4-014が使っている液晶パネルの種類は明言されていないのだが,横方向から見たときの変色傾向からして,おそらくはTN方式のパネルであろう。液晶パネル表面はグレア(光沢)加工がされており,正面から見る限り,輝度や発色は良好だ。
しかし,使っているといくつか気になる点があった。まずひとつは,机の上で本機を取り付けたPS4を使うと,グレア加工されたパネルに照明が映りこみやすいことだ。使い勝手を考えると,ノングレア加工のほうがよかったのではないか。
また,輝度を上げて使っていたときに,シーンの切り替わりなどで画面が暗転すると,画面中央に楕円形の黒いムラが一瞬浮かび上がるのも気になった。個体差という可能性はあり,また,暗転時に一瞬だけ見えるだけなので,ゲームプレイに支障を来すほどではないのだが,念のため書いておきたいと思う。
ここで「ユーザー」を選択すると,コントラストやブライトネス(輝度),サチュレーション(彩度)やシャープネスの4項目を0〜100までの1刻みずつ調整可能だ。いずれも初期値は50だった。
また,4種類の画質モードとは独立した設定として,ディスプレイの「色温度」設定が用意されていた。こちらは「ノーマル」「ウォーム」「クール」という3種類のプリセットから選択するだけ。ただし,どのプリセットが色温度で何K(ケルビン)に当たるのかは,OSDメニューはもちろん,説明書にも記載されておらず,不明だ。
画質モードを選ぶ「ピクチャーモード」では,派手な色合いの「ヴィヴィッド」,標準的な「ノーマル」,映画向けにやや暗めの「ムービー」,そしてカスタマイズ可能な「ユーザー」を選択できる |
画質モードと独立した「色温度」設定は,「ノーマル」「ウォーム」「クール」という3種類のプリセットから選ぶ仕組み。ただし,どのプリセットが色温度で何Kに当たるのかは明示されていない |
サウンド関係の設定をまとめた「オーディオ」では,「サウンドモード」設定から「スタンダード」「ミュージック」「ムービー」「ビビッド」という4種類のプリセットか,カスタマイズ可能な「ユーザー」を選ぶ。ここで「ユーザー」を選んだ場合は,高音域と低音域の強弱が,0〜100までの1刻みずつで調整可能だ。また,これらとは別に,左右の音量を調整する「バランス」という設定もある。
もっとも本機の場合,スピーカーの音質以前ともいえる問題がある。本機でゲームをプレイする場合,PS4本体が目の前に置かれる格好になるのだが,この状態ではPS4本体に内蔵されたファンの動作音がかなり大きく聞こえるため,スピーカーの音とノイズの両方が耳に入ってきてしまうのだ。これでは興ざめである。
PS4-014をPS4と一体化させた状態でゲームのサウンドも楽しみたいなら,ヘッドフォンを使うべきだろう。
なお,映像とサウンド以外の設定項目としては,映像信号未入力時にPS4-014をスリープさせる時間や,OSDメニューの無操作時自動オフ時間を指定できる「タイム」と,OSDメニューの表示言語や表示映像のアスペクト比を設定する「ファンクション」の2種類が用意されていた。
以上のように,PS4-014の設定項目は最小限といえる程度しかないが,もともとHORIの小型液晶ディスプレイシリーズは,設定をシンプルにして分かりやすくしてあるのが特徴だった。据え置き型ゲーム機に取り付けて使うという商品コンセプトからすれば,このシンプルさも妥当なものではないだろうか。
1フレーム程度の表示遅延を確認
PS4-014は480i,720p,1080i,1080pという4種類の入力解像度に対応しているが,PS4で使う場合は1080pが基本となるだろうから,今回は1080pでのみテストすることとした。また,映像設定では,ピクチャーモードをユーザーに設定したうえで,撮影しやすいようにブライトネスを初期値の50から60へと上げている。それ以外のパラメータは,すべて初期値である50のままだ。
テストの比較対象としては,4Gamerのディスプレイレビュー用リファレンス機であるBenQ製液晶ディスプレイ「XL2410T」を用意。XL2410T側は最も表示遅延が短くなるように,残像感低減機能となる「AMA」を無効化しつつ,いわゆるスルーモード的な機能である「インスタントモード」を有効化した。
この状態で,Gefen製スプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)を使ってPCのDVI出力を2系統に分けたうえで,どちらも同じDVI-HDMI変換アダプターを介して,PS4-014とXL2410Tに接続。この状態でカシオ製のハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-FH100」(以下,EX-FH100)から240fps設定で録画することとしている。
というわけで,まずは応答速度を検証してみよう。公称値では,PS4-014の応答速度は平均25msとされており,今時(いまどき)の液晶ディスプレイとしてはかなり遅いほうだが,実際はどうなのだろうか。検証には,EIZOが配布している「Motion Blur Checker」(β)を使い,解像度1920×1080ドットの4Gamerロゴ壁紙を1ドット単位でスクロールさせて,見え方の違いをチェックするという方法で検証することとした。
テストの様子をEX-FH100で撮影した動画は以下のとおり。左下にある小さな画面がPS4-014のものだ。左に流れるロゴ画像を見てみると,XL2410Tと比べてPS4-014の表示には残像感が感じられるだろう。ゲーマー向けディスプレイのシャープな表示に比べるともっさりした印象を受ける。
そこでいくつかのゲームで残像の影響を確認してみた。まず「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」では,とくに問題を感じることもなく,快適にプレイできている。しかし,バイクレースゲームの「トライアルズ フュージョン」をプレイしてみたところ,横スクロールする画面で残像感を感じたのだ。
筆者は普段,PS4をソニー製の液晶テレビ「KDL-40EX500」に接続して使っている。これは2010年発売のテレビで,最近のソニー製テレビが備える低遅延重視の「ゲームモード」といった機能は備えていない。しかし,それと比べても,トライアルズ フュージョンにおけるPS4-014の残像感は強めに感じた。
ゲームによって影響の程度は変わるだろうが,応答速度の遅さから残像を感じることがあるという点は,押さえておく必要があるだろう。
続いては表示遅延の検証だ。検証に使用するアプリケーションはお馴染みの「LCD Delay Checker」(Version 1.4)で,ディスプレイ2台の設定や接続,配置は応答速度のテストと同様である。
その結果が下の動画で,見てのとおり,XL2410T比で1フレーム程度の遅延を確認できる。とくに高画質化の機能があるわけでもないPS4-014で遅延が生じるというのは,少々気になるところだ。
PS4と一体化可能な「セカンドディスプレイ」
このコンセプトに魅力を感じる人向けの製品
一方で,普段使いでは大型のテレビやディスプレイに接続しているが,それらが他の用途で使われているときにもPS4でゲームをしたいという場合や,PS4と一緒に持ち出してゲームをしたいという場合など,セカンドディスプレイ的な用途であれば,PS4-014は役立つだろう。未使用時にはPS4本体に取り付けたままにしておけるデザインも,たまに使う用途に適している。
新ハードが出るたびに,据え置きゲーム機用一体型液晶ディスプレイの新製品がリリースされ続けているという事実は,このシリーズに根強い需要があることを示すものだ。一体化できるセカンドディスプレイというコンセプトに魅力を感じる人なら,試してみる価値のある製品といえるだろう。
フルHD液晶モニター for PlayStation 4 製品情報
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●PS4-014の主なスペック
- パネル:11.6インチワイド,方式不明,グレア(光沢)
- バックライト:未公開
- パネル解像度:1920×1080ドット
- 輝度(通常):最大350cd/m2
- 色域(通常):未公開
- 表示色:26万2144色
- コントラスト比:未公開
- 視野角:未公開
- 応答速度:25ms(平均)
- 接続インタフェース:HDMI入力×2(Type A),アナログサウンド出力(3.5mmミニピンステレオ)×2
- 消費電力:24W(最大時)
- サイズ:279(W)×275.8(D)×28(H)mm
- 重量:約1.2kg
- 保証期間:1年
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