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手練れのゲームクリエイターと役者陣が「人狼ゲーム」で激突。ハイレベルなバトルが繰り広げられた「アルティメット人狼」レポート
人狼伝道師こと眞形隆之氏の主催で行われたこのイベントは,その名の通り“人狼ゲーム好きゲームクリエイター”が集う「ゲームクリエイター人狼会」と,人狼ゲームを使ったアドリブ演劇を行っている集団「人狼TLPT」が対戦するというもの。共に人狼ゲームに魅せられ,日々その腕を磨いているであろう両陣営によるガチンコ対決が見られるとのことで,当日会場には多くの観客が詰めかけた。
本稿では,その模様を写真と共にレポートしていこう。
「人狼TLPT」公式サイト
ニコニコ生放送「アルティメット人狼」配信ページ
人間と人狼が頭脳で激突する「人狼ゲーム」
人狼チームは人間の振りをして正体を隠しながら,ターン毎に訪れる夜フェイズに人間を一人ずつかみ殺していき,人間を人狼の数より少なくすれば勝ち。一方人間チームは,さまざまな手がかりを元に推理して人狼を見つけ出し,昼フェイズにすべての人狼を処刑できれば勝ちとなる。
人狼ゲームの一般的なルールをもっと詳しく知りたい人は,以前に掲載した「人狼特集」内の紹介記事をチェックもらうとして,今回の「アルティメット人狼」におけるローカルールを確認しておこう。
まず13人のプレイヤーのうちには,必ず3人の「人狼」が紛れ込んでいる。残る10人が村人(人間)となり,このうち役職持ちは「予言者」「霊媒師」「狩人」「狂人」が各1人。それ以外の6人が一般の「村人(人間)」となる。陣営で分ければ,「狂人」は人狼陣営なので,人狼チーム4人と人間チーム9人の対決となるわけだ。なお「狩人」は連続で同じ人物を守ることはできず,「狂人」は誰が「人狼」かを事前に知ることはできない。
●各役職の能力
- 「人狼」:夜フェイズごとに,任意に指名した人物一人をかみ殺す。また「人狼」同士はお互いの正体を知ることができる。
- 「予言者」:夜フェイズごとに,任意に指名した人物が「人狼」か否かを知ることができる。
- 「霊媒師」:昨日の昼に処刑された人が,「人狼」か否かを知ることができる。
- 「狩人」:夜フェイズごとに,任意に指名した一人を,人狼の襲撃から守ることができる。(連続して同じ人を守ることはできない)
- 「狂人」:特別な能力は持たないが,人狼陣営が勝つことで,自身も勝利となる。
さて,ここからは実際の試合のレポートとなるが,この対戦の模様はニコニコ生放送でもストリーミング配信されていたため,視聴期限内であればタイムシフトでの観戦も可能だ。こちらも合せてチェックしてみてほしい。
第一回戦はゲームクリエイター側の人狼勢が大活躍
さて,いよいよ始まった「アルティメット人狼」。三度にわたる戦いの舞台に登ったのは,以下の13人だ。
●出演者一覧
「ゲームクリエイター人狼会」
- イシイジロウ氏(ゲームクリエイター人狼会主宰)
代表作「タイムトラベラーズ」「428〜封鎖された渋谷で〜」
- 大野 聡氏(B.B.スタジオ)
代表作「機動戦士ガンダム バトルオペレーション」
- 外山圭一郎氏(SCE)
代表作「SIREN シリーズ」「GRAVITY DAZE」
- 小高和剛氏(スパイクチュンソフト)
代表作「ダンガンロンパシリーズ」
- 藤澤 仁氏(スクウェアエニックス)
代表作「ドラゴンクエストシリーズ」
- 森本茂樹氏(ゲームフリーク)
代表作「ポケットモンスターシリーズ」
「人狼TLPT」
- 松崎史也さん(医師マドック)
- 森本未来さん(踊り娘ドリス)
- 横山可奈子さん(修道女エスター)
- 寺島絵里香さん(菓子職人デイジー)
- 都倉伶奈さん(未亡人キャシー)
- 加藤靖久さん(局長サミー)
- 児玉健さん(賢者コーダ)
まず第一回戦は外山氏と局長サミーこと加藤さんのプレイングが光る,ハイレベルな戦いとなった。
1日目昼は,外山氏の「自分は人間なので,ほかの人の情報がほしい」という提案に森本氏が賛同し,「能力者が名乗り出るべきか否か」という議論からスタートした。
しかし,これは人狼である外山氏が仕掛けた罠。人間のふりをして能力者をあぶりだそうとする狙いだ。マドックはこれに引っかかり,自分が予言者であることを明かしてしまう。さらに外山氏は,1日目の投票であえて人狼仲間である大野氏に投票するという大胆な手にでる。これにより人間陣営の大野氏への注意を逸らすことに成功し,同時に夜にはマドックを殺害して,勝利への足がかりを築いていった。
一方外山氏の援護を受けた大野氏は,「自分が予言者だ」と宣言して,偽の予言で人間達を混乱させ,見事な連携を見せた。
第一回戦で見事な人狼プレイを披露した外山氏。ゲームクリエイター側勝利の原動力となった |
「人狼」だった大野氏。予言者を演じ,偽の予言で人間側を混乱させた |
二日目昼は「霊媒師が名乗りを上げるべきかどうか」という議論に。サミーとコーダがそれぞれ「自分が霊媒師だ」と名乗り出たが,「霊媒師」は一人しかいないのでどちらかが偽者ということになる。コーダは「サミーこそが人狼である」とする意見を披露したが,実はコーダは「狂人」で,サミーこそが本当の「霊媒師」。コーダの誘導に引っかかった人間達は相次いでサミーに投票し,本物の「霊媒師」を処刑してしまうことに。
本物の「霊媒師」だったサミーだが,人間の投票で処刑されることに |
狂人であるという正体を隠し通し,最後まで生き残ったコーダ |
「予言者」と「霊媒師」が相次いで消えたことで,人間側の勝利は絶望的となった。結果として,大野氏,外山氏,藤澤氏という「人狼」全員と「狂人」のコーダが生き残り,最後に「狩人」である小高氏を殺害して,なぜかゲームクリエイター側に偏った配置となった人狼陣営の勝利となった。
こうして,すべての結果が分かってから振り返ることで,さまざまな駆け引きが展開していたことが分かる。会話による頭脳戦,これが人狼の面白さなのだ。
■第1回戦 結果
- イシイ氏:人間
- 大野氏:人狼
- 外山氏:人狼
- 小高氏:狩人
- 藤澤氏:人狼
- 森本氏:人間
- 医師マドック:予言者
- 踊り娘ドリス:人間
- 修道女エスター:人間
- 菓子職人デイジー:人間
- 未亡人キャシー:人間
- 局長サミー:霊媒
- 賢者コーダ:狂人
第二回戦は忍耐の勝負に
すべての役職をシャッフルしてスタートした第二回戦では,「人狼」となった森本氏が大活躍を見せた。本来,「予言者」を残したままプレイを進めることは人狼陣営に不利なのだが,ぎりぎりまで予言者に手を出さないことで自分への疑いを最小限にとどめたのだ。
ぎりぎりまで予言者を始末しないという忍耐のプレイングで勝利した,人狼の森本氏 |
小高氏に花を渡す外山氏。花を一番多く集めてしまった(=一番疑われている)人が昼間の終わりに処刑されるが,間違って人間を処刑してしまうと,人狼側の勝利に貢献してしまうことになる |
2日目の昼,本物の「予言者」であるキャシーが「自分こそが予言者である」と名乗り出る。人狼陣営としてはすぐにでも始末したい相手だが,あえて手を出さないことで人間側に疑念の種を植え付けた。”自分の正体を言い当てられるかも知れない人狼が予言者を放っておくわけがない。実はキャシーこそが人狼なのでは?”と思わせたのである。
「人狼」仲間であるエスター,そして藤澤氏が処刑される中,森本氏はキャシーに手を出さずにじっと耐え続けた。その甲斐あって,予言者キャシーは5日目に味方であるはずの人間の手によって処刑され,6日目にマドック,イシイ氏,森本氏が生き残る。これをしのぎきれば森本氏の勝利が確定するという状況だ。
本物の「予言者」だったキャシー。2日目に名乗り出て,人間側の勝利に向けて予言をし続けた |
「霊媒師」を引き当てたデイジー。「霊媒師」は前日に処刑されたプレイヤーの正体を知ることができる,重要な役職だ |
キャシーは処刑される前に森本氏こそが人狼であるという正解を導き出していたが,森本氏は「キャシーは本物の予言者ではなかった」と主張することで状況を混乱させることに成功。人間であるマドックとイシイ氏がお互いを疑った結果,イシイ氏が処刑されることになり,最後に生き残った森本氏がマドックを殺害,人狼側の勝利となった。
■第二回戦 結果
- イシイ氏:人間
- 大野氏:人間
- 外山氏:狂人
- 小高氏:狩人
- 藤澤氏:人狼
- 森本氏:人狼
- 医師マドック:人間
- 踊り娘ドリス:人間
- 修道女エスター:人狼
- 菓子職人デイジー:霊媒師
- 未亡人キャシー:予言者
- 局長サミー:人間
- 賢者コーダ:人間
運命の第三回戦,最後に生き残ったのは……
ラストとなる第三回戦は,序盤から人間側がかなりの優勢となった。これまでと同様,能力者をあぶりだすための議論からスタートした1日目昼。ドリス,藤澤氏,イシイ氏と三人が予言者として名乗りを上げた。本物の予言者はイシイ氏で,ドリスと藤澤氏はそれぞれ狂人と人狼なのだが,人間側の鋭い推理で藤澤氏が処刑される。
すべてのゲームで連続して人狼となった藤澤氏 |
本当の「予言者」だったイシイ氏 |
初日に仲間が倒されたことにあわてたか,「人狼」の大野氏は2日目昼,「霊媒師」の小高氏とともに「自分が霊媒師だ」と名乗りを上げ,「藤澤氏は人間だった」と主張するも,4日目昼にあえなく処刑されてしまう。残る「人狼」はエスターただ一人。人間側も絞り込みを続けるが,エスターが捜査線上に浮かびあがることはなかった。
実は,4日目昼にエスターは「人狼」仲間の大野氏に投票しており,これがエスターへの疑念を逸らす形となったようだ。人間側は最後の一人を絞り込めないまま仲間を次々と処刑してしまい,エスターが生き残って人狼側三度の勝利となった。
霊媒師の小高氏。前日に処刑された藤澤氏の正体を暴き,人間側に貢献 |
処刑された外山氏の迫真の演技に,場内も騒然 |
■第三回戦 結果
- イシイ氏:予言者
- 大野氏:人狼
- 外山氏:人間
- 小高氏:霊媒師
- 藤澤氏:人狼
- 森本氏:狩人
- 医師マドック:人間
- 踊り娘ドリス:狂人
- 修道女エスター:人狼
- 菓子職人デイジー:人間
- 未亡人キャシー:人間
- 局長サミー:人間
- 賢者コーダ:人間
イベント終了後,「ゲームクリエイター人狼会」の皆さんから一言ずつコメントをもらったので最後に紹介しよう。
イシイ氏「最初は人狼TLPTさんのワンサイドゲームになるかと思っていましたが,我々ゲームクリエイター人狼会も第一回戦,二回戦では優勢に戦うことができてびっくりしています。もしかしたら人狼TLPTの方々が手加減してくれた可能性もあるのかも知れません。次回はきっと人狼TLPTさんも本気になると思いますので,僕たちももっと高いレベルを目指していきたいと思っています」
大野氏「”普段ゲームを作っている人達がゲームをする”ということがコンテンツとして成立するのかと心配でしたが,多くの視聴者の皆さんに見ていただけてうれしいです。これからももっと色々な人々と『人狼』をしていきたいと思っています」
小高氏「『人狼』を遊んだのは久しぶりです。『ダンガンロンパ』のようなゲームを作っていると,頭がよさそうに見えるようで,どんなに凄い立ち回りをするんだろうと期待されるんですが,あえてピエロっぽく振舞うことでギャップ萌えを狙いました(笑)」
藤澤氏「三回連続で苦手な人狼側になってしまい苦しい状況だったんですが,仲間が頑張ってくれたおかげで,奇跡の三連勝ができてよかったです」
森本氏「今日は『人狼』を楽しむことができました。第二回戦に活躍できてよかったです。人狼TLPTの方々が人狼になることが少なかったのが心残りですね。」
外山氏「お客さんの生の反応を味わえる,エンターテインメントの基本に触れることができて,とても楽しかったです」
普段ゲームを作っているクリエイターが,プレイヤーとなって物語を紡ぐこととなった,今回の「アルティメット人狼」。ゲームクリエイターは必ずしもゲームがうまい,という訳ではないと思うが,今回の行われた戦いはどれも非常にハイレベルで,見応えのあるものだった。ニコニコ生放送での視聴者数も9万人を超えるほどの好評だったようで,次回の開催にも期待が持てる。次はどんな対決が見られるのか,今から楽しみだ。
「人狼TLPT」公式サイト
ニコニコ生放送「アルティメット人狼」配信ページ
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