インタビュー
轟音直撃!! 超絶ハードに仕上がったGAMADELICニューアルバム「Rebooot!!!」インタビュー
なお,本アルバムについては週刊連載「ミュージック フロム ゲームワールド」の第14回でも取り上げているので,合わせて目を通していただければ幸いだ。
ゲーマデリック公式Twitter
ATOMICを中心にメンバーが再集結し
GAMADELICの活動が再開!
ニューアルバム「Reboot!!!」を聴かせていただきました。最高にハードでヘヴィでロックなアルバムに仕上がっていて大興奮です!
GAMADELIC一同:
ありがとうございます!
4Gamer:
ではまず,GAMADELIC活動再開の話から聞かせていただけますか?
ATOMIC花田氏(以下,ATOMIC氏):
2011年に並木晃一さんがS.S.T BANDをBlind Spotとして再始動させていまして。で,2012年の12月頃に並木さんから「来年の夏に“ゲームミュージックトリビュートライブ”ってフェスをやるんだけどGAMADELICで出ない?」って誘われたんです。それが活動再開のきっかけですね。
4Gamer:
再結成メンバーはどうやって決まっていったんですか?
ATOMIC氏:
最初にMAROとMr.Kに声をかけて,その後にN'GJA三浦,RAIKAと声をかけていき,キーボードはもう1人必要だということで新メンバーにせいんと☆ぴーちが新加入しました。彼はGAMADELICのメンバーではなかったけど元データイーストではあったので。
4Gamer:
ほかのメンバーは再結成の話を聞いた時にどう思われました?
MARO氏:
ATOMICから熱いメールがきたんですよ。「昔の仲間に聴かせようぜ!」みたいな。でもその時,僕は音楽に対して腰が重い状態だったんです。なので「待ってました!」って感じではなくてね。でもGAMADELICをやり始めたら「あー,これをやりたかったんだなぁ」って思いましたね。
N'GJA三浦氏(以下,N'GJA氏):
僕はATOMICから「忘年会やろう」って誘われて。まあ普通にお酒飲むだけかなと思ってたら,そこで活動再開の話が出て(笑)。楽しそうだなとは思ったんだけど,その時は体力が持つか心配でした。GAMADELICは曲や構成がすごく複雑なので,リハビリじゃないけど,自分がやっていたものをもう一回聴きなおして「俺こんなことやってたんだ」って改めて思ったりとかね。
RAIKA氏:
僕は作曲はずっとやっていたんですけど,プレイヤーとしてはブランクがあったので参加について悩みました。でも何となく楽しそうだなって思えたので,それで参加を決めました。
せいんと☆ぴーち氏:
私は誘われたこと自体が意外で。ATOMICさんから来たメッセージもすごく熱い内容でね。あと個人的にGAMADELICの曲は好きだったし,お互い共有できる部分もあるし,ファンとして聴いていた曲を一緒に演奏できる楽しみもあったので。
4Gamer:
メンバーが揃って,いよいよGAMADELIC再始動ですね!
再結成から半年はリハビリ期間でした。まず演奏する身体を作るところからのスタートだったので。反射神経的なところはブランクがあると鈍ってるので,そこを思い出したり。でも,割と身体は覚えてるもんだなと。
N'GJA氏:
「WALK LIKE SUPERCOP」も初期の音源ではブレイクが無かったんですよ。「あそこブレイクだよね?」って言われて,僕とMr.Kが「いや無かったよ?」「じゃあ,もう一回聴いてみよう」って聴いたら「あ,本当だ」っていうのがあって。
ATOMIC氏:
「WALK LIKE SUPERCOP」はアルバムではブレイクがないけど,ライブではあったんですよ。そんな感じで頭では忘れてるけど身体が覚えてるということがあって。あのリハビリ期間がそういう時期だったんですよね。データイーストでゲーム音楽を作っていた20代半ばから後半って充実していた時期だったから体力も記憶力もあったし,そこで集中して一生懸命やっていたからこそ刻み込まれている。あの時期にGAMADELICをやっていたことが各メンバーの中で大きな位置を占めていたんだなってことに,復活して初めて気がつきました。
4Gamer:
再開後の渋谷公会堂でのライブ“ゲームミュージックトリビュートライブ”はどうでしたか。
MARO氏:
「ゲーマデリックのテーマ」が始まった時にお客さんが一斉に立ち上がって,大歓声が上がった時はグッときましたよ。
N'GJA氏:
僕も一緒。久しぶりだったし,ちょっと緊張してたんだけど,あのドカンときた瞬間に「あ,昔に戻った!」って感じがしてね。
せいんと☆ぴーち氏:
私は新メンバーだから,ファンには「あいつ誰だよ」みたいな反応されるんじゃないかと思っていたんですが,温かく迎えていただいたのが嬉しかったですね。
RAIKA氏:
ライブ前はいろいろとままならなかったので,正直ボロカス言われるんじゃないかと思ってステージに立ってたんですが,そうでもなかったのでホッとしました。
MARO氏:
人前での演奏は,ちょっとしたセッションや小さいライブハウスでっていうのはありましたけど,あんな広い会場というと,デビュー時の中野サンプラザの時の気持ちに近いものがありましたね。
4Gamer:
その後ワンマンライブがあり,そのライブアルバムも出ました。
ATOMIC氏:
本来はフェス出演だけのつもりだったんですが,それだけで終わるのはもったいないから,もう1回ライブハウスでやらないかって話になりまして。
MARO氏:
1か月後くらいだったんで,同じセットリストでいくってことでリハもやってなくてね。その代わり,手品をやったりソロパートを入れたりと,いろいろなコーナーを挟んでバラエティさを出したライブをやりました。
過去にGAMADELICで演奏できなかった曲を
今の自分達でアレンジして演奏したかった
4Gamer:
ではニューアルバム「Rebooot!!!」ですが,アルバムを作ろうという話はいつぐらいから上がっていたんですか?
ATOMIC氏:
“ゲームミュージックトリビュートライブ”が終わって,これからどうする? って話になりまして。ここで止めちゃってもいいし,続けてもいいしって感じで選択肢はいくつもあったんですよ。年に1回くらいライブに呼ばれたら出るとか。でも年に1回だけのためにリハをやるのもどうなの? って話になり……。
4Gamer:
ライブ予定がないのにリハだけ継続するのもツライですからね。
ATOMIC氏:
そうなんですよ。ちなみにデータイースト時代のGAMADELICの活動って,新作のプロモーションのためだったんです。だから昔の曲を新たにアレンジして演奏する機会がなくて。でも過去に演奏する機会がなかった曲を今の自分達が演奏したらどうなるのかな,やってみてもいいんじゃないかな,データイーストのゲームミュージックバンドとして定番のタイトルをやってみようと。そこからメンバーで曲をピックアップして20曲くらいに絞って。さらにそれを12曲に絞り込みました。
4Gamer:
メンバーの方はアルバムを作ることに関してどう思いました?
昔の曲もそうだし,自分で作ったけどGAMADELICでできなかった曲が結構あるんですよ。そういう曲をやりたいっていうのもありました。あと今回はコミカル路線は無しってことをコンセプトで決めました。コミカル路線も好きなんですけど,あれもこれもやりたいと考えていくと,ちょっとおちゃらけるのはもったいないかなと思って。
N'GJA氏:
ライブは形に残らないけど,アルバムとして形に残るっていうのは良いなと。自分がGAMADELICに参加してるCDは部屋の棚に並べているので,そこに新たな1枚を追加できることになるのは嬉しいことだなって。
せいんと☆ぴーち氏:
私はアレンジを作り込むほうが得意なので,そのアプローチを新生GAMADELICでやれたことで,私が加入した意味があったなと。結果的にプログレ風ロックになった「Legend Of The Dark Seal」では自分の色が出せたと思います。
RAIKA氏:
当時のGAMADELIC時代にやり残したことが結構あったので,あの曲ができるじゃん! っていう嬉しさがありましたね。元々はデータイーストのファンだったこともあり,自分が作ってない曲でも良い曲がたくさんあるので,それを形にできるチャンスが巡ってきたなという感じですね。
4Gamer:
アルバムタイトルが「Reboot!!!」に決まった理由はなんでしょうか?
MARO氏:
メンバーでタイトル候補を出し合うなかで,ATOMICがポロッと「リブート……」って言ったら「あ,それイイんじゃない?」と。
ATOMIC氏:
再開後からアルバム制作前までは“昔のGAMADELICの再現”だったんですよ。かつてのGAMADELICを今どう再現するか。それをちゃんと再現できなければ土台が作れないので,まずそこからちゃんとやろうと。それが2014年9月のライブ“SPINOUTS!アツクテシヌゼ”までの活動でしっかりとできたなと思ったので,じゃあこの先何をやるかというのを考えるうえでの再起動=リブートという意味なんです。
4Gamer:
全曲新曲であっても,過去のGAMADELICという土台をしっかりさせたうえでの再起動ということなんですね。ニューアルバムに込めた思いが理解できた気がします。ちなみにほかはどんな候補がありましたか?
ATOMIC氏:
ほかは「Reincarnation」とか(笑)。ライブアルバムが「REUNION」だったので“RE”つながりで何かいいタイトルがないかなって考えていました。「Rebooot!!」は語呂もいいし,あとはスペルの“o”を3つにすればGAMADELICの曲「Shooot!!」にも掛かって勢いがつくんじゃないかなっていう意味も込めています。
ニューアルバム「Rebooot!!」は全曲シングルA面曲
クオリティが高くて濃いアルバムになった
4Gamer:
では続いて収録曲についてお聞きしたいのですが,今回個人的に一番やりたかった曲などありましたか?
MARO氏:
「Fire A Heavy Barrel!」ですね。「ヘビーバレル」の曲はデータイーストに入って最初に書いたロック系の曲だったんです。あと「Party Of The Ghosts」みたいなブルース系の曲も好きなので,アルバムに収録できて嬉しかったですね。ちなみに「Fire A Heavy Barrel!」は今回のアルバムの最速ナンバーです。
僕は「4078」。シンプルだけど耳に残るメロディをちょっと料理してみたかったので,楽しみながらアレンジしました。GAMADELICとしてもちょっと毛色の違う曲になったかなと思います。あとは自分が過去にアレンジした曲を再アレンジしたいっていうチャレンジの「Adventure Continuations!」ですね。
ATOMIC氏:
アルバムで聴いてると「4078」は異色の出来なんですよ。すごくアルバムのアクセントになってる。それにRAIKAは「こうくるだろうな」という予想に反することをしてくるんですよ。必ずどこかに「ひねり」を入れてくるんです。いい意味で(笑)。
RAIKA氏:
(笑)。ちなみに「Adventure Continuations!」はアルバムで最も遅いナンバーです。「絶対にテンポ120で作ってやる!」と意気込んだので(笑)。
N'GJA氏:
僕はアレンジはしていないので,レコーディングで印象に残ってる曲でいうと「Fire A Heavy Barrel!」です。MAROが言ってたとおりアルバム最速曲で,テンポ259を叩いています。
RAIKA氏:
最初は「こんな速い曲叩けないよ」って言ってたよね(笑)。
ATOMIC氏:
言ってた(笑)。「Fire A Heavy Barrel!」はライブで演奏してって言われたらどうしようって感じだよね(笑)。
N'GJA氏:
ライブでも演奏できるように,レコーディングで練習もしていましたよ。ちなみに僕は仕事でドラムの講師もしているんですが,空き時間に「Fire A Heavy Barrel!」を練習していたら,それを外で生徒が聴いていまして。終わって外に出たら「先生,すごい曲叩いてますね!」って言われちゃって(笑)。「Rebooot!!」は難しい曲が多かったけど,レコーディングを経て自分の腕前も上がったかなと。
ATOMIC氏:
自分はMAROから「ATOMICがアレンジしたほうがいいぞ」って言われた「Traitor Of The Justice」と「Party Of The Ghosts」と「The Last Fight With Monsters Of The Darkness」の3曲。アレンジしてみてなるほど,と思ったんですよ。
4Gamer:
それはどういった点で?
ATOMIC氏:
MAROが得意とするのはドカンとくるギターサウンド,ぴーちとRAIKAはテクニカルさを出したアレンジが得意。でも自分はトータルでコントロールするタイプなので,いわゆる王道のゲームミュージックのインストロックを目指しました。そこが自分の持ち味なんで。あとこれは自分の主張なんですが,ゲームミュージックって“劇伴”だと思っているんですよ。ということは音を聴いて絵が浮かんでくるのが正しいんですよね。なので自分の担当したアレンジはそこを目指しています。
4Gamer:
アレンジも4人それぞれで,まさにメンバーの個性がぶつかり合ったニューアルバムになっていますよね。アルバムが完成した手応えはどうですか?
MARO氏:
今できる最大のことを詰め込みました。曲にへばりついて何度も何度もレコーディングしてきたので。レコーディングも楽しかったけどアレンジ作業も楽しかったですよ。実は昨日,歩きながらアルバムを全曲通して聴いたんですよ,中央線3駅ぶんくらい(笑)。そしたらお腹いっぱいになっちゃってね。4曲めまでは普通なんだけど「Party Of The Ghosts」あたりから「こういう曲も良いなあ」なんて思わせてくれて,その後だんだんお腹いっぱいになるくらい濃い。体力ある人だったら最後まで一気に聴いてもらえると思う。
ATOMIC氏:
アルバムのキャッチフレーズに“全マシアブラカラメ”って付いてるのはそういう理由なんです(笑)。
MARO氏:
ぴーちも「息抜きできる曲があってもいいんじゃない?」って言ってきたくらいだからね。今回は全曲シングルのA面曲みたいなアルバム(笑)。でも次にアルバムを作るとしたら,もう少しバラエティ豊かなものになるかな。今回は濃いところが揃っちゃった感じなので。そのぶん,手応えは充分でしたけど。
N'GJA氏:
でもレコーディングは結構締め切りがタイトだったなぁ……。
ATOMIC氏:
ドラムは結構ダメ出しを食らったんだよね?
N'GJA氏:
うん。ゲーム音楽だからなのか,GAMADELICだからなのか分からないけど,たぶん普通と違うんですよ。何ていうか,いい意味で普通と違う解釈の奏法を求められる。
ATOMIC氏:
一般的に“こうしないだろう”っていう奏法が求められるんですよね。あとGAMADELICの特徴でもあるんですが,N'GJAはファミコン時代に効果音を作っていたので,デジタル作業ができるドラマーなんです。普通,自分で録ったプレイを修正するってのはドラマーには求められないんですよ。彼はそれができるタイプなんです。
N'GJA氏:
普通ならプレイしたあと,エンジニアさんが作業してくれるんだけど,それ以降も自分でやるという。なので,ほとんどメンバーと会わずに作業した感じです。
せいんと☆ぴーち氏:
私は今までのGAMADELICの再現を経たうえで,自分が加入したGAMADELICの作品を作ったという意味で非常に感慨深いです。個人的なところでは「Break Down A Haunts Of Wicked Men」と「Fire A Heavy Barrel!」で聴けるオルガンソロが目玉なので,そこをぜひ聴いてほしいですね。
RAIKA氏:
僕もN'GJAと同じく,最近はあまり見ないリテイクをされながら曲を作り上げていく行程を久々に味わったことが手応えですね。一人で作業してると,そういう意見は出てこないですから。プレイで言うと「これはライブで再現できるのか?」っていう部分もありました。それに正直言って,再開時にはこんなに弾くとは思ってなかったんですよ。もうみんないい歳だから,落ち着いた感じになるのと思ってたので(笑)。
GAMADELIC一同:
(爆笑)。
4Gamer:
ちっとも落ち着いてないアルバムが完成しましたね(笑)。
強い個性を持ったメンバーが集まったから
とことん尖ったアルバムができた
4Gamer:
アルバムが完成した今,制作を振り返ってみていかがですか?
ATOMIC氏:
今このタイミングでアルバムを完成できたことが非常に幸せです。最初の段階で全曲新録&新アレンジ,収録時間60分超え,(2015年)6月にレコ初ライブをやる,って目標を決定しちゃったんです。メンバーもほかの仕事をやりつつGAMADELICの活動があるので,アルバム完成までの半年間はプライベートの時間をほぼGAMADELICに突っ込むという状況になっていたんですよ。そのモチベーションを8か月間ずっと維持してくれて完成できたことが今のGAMADELICのコンディションを表してるなと。
4Gamer:
8か月もの制作期間を注ぎ込んだ,まさに渾身の1枚ですね。
ATOMIC氏:
なので,充実した要素がギュッと凝縮したアルバムになったかなと。個人的なプレイに関しては,昔よりもロックに寄ってますね。歳は取ってるのにどんどんロックになってるという。ベースの音自体がラウドになってきましたしね。非常に自己主張の強い,年甲斐のない感じで(笑)。今回ベースソロをいろんな曲でやったんですが,それも割と限界まで挑戦してるのもあって,これをライブでやるときはどうすればいいんだと悩んでるところなんですが,それくらい今回は突っ込んで作った自信作です。
4Gamer:
昔からのファンには最高のアルバムでしょうね。待っていたファンも多いと思います。では最後にファンへのメッセージを!
N'GJA氏:
アルバムを聴いて興味を持ったら,ぜひライブに来てください。……先が短いのでね(笑)。
MARO氏:
アルバムを聴いた感想や,次のアルバムへのリクエストを聞きたいですね。これからアルバムを聴く人は絶対に満足できると思うので,ぜひ聴いてください。
RAIKA氏:
これだけの個性を持ったメンバーが,その個性を突出させていろいろな方向に尖らせたアルバムになっていますので,そこを聴いてほしいです。また,GAMADELICメンバーの,この人がアレンジしたこの曲を聴きたいっていうリクエストもいただければ嬉しいですね。
せいんと☆ぴーち氏:
1990年代のゲームミュージックって,原曲を作るときにすごく制約を受けた時代だったんですよ。今思うとそれが曲の中でエネルギーになって表れてると思うんですよね。そういった曲が今の時代にどう評価されるか気になるし,今の時代には絶対に出てこない音楽っていう部分を聴いてほしいなと思います。
ATOMIC氏:
再起動したGAMADELICをしっかり見届けてください。損はさせません。こういう密度でアルバムを作ったりライブしたりってのは頻繁にできないし,数も限られると思うんですよ。なので限られてるぶん,その一回の密度を濃くしていきますので,ぜひGAMADELICの活動をチェックしてください。
4Gamer:
今後の活動も期待しています。ありがとうございました!
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(Support&Studio Photograph:佐野敦司,Live Photograph:夢月トオル)
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