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改訂版「JOGAガイドライン」の解説セミナーが開催。有料ガチャの表示や設定,運用に関する項目をオンラインゲーム事業者にレクチャー
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セミナーの冒頭,主催者であるJOGAおよびMCFの代表が挨拶を行った。
JOGA 共同代表の越智政人氏は,昨今,スマートフォンゲームの運営実態などがニュースなどで取り上げられるようになったのは,世間一般の関心が高まったためであるとし,それを受けて,今回のセミナーはJOGA会員に留まらず,広くゲーム関連企業を対象に企画・開催したと説明した。
また,MCF 代表理事 千葉功太郎氏は,JOGAのガイドラインのようなルールを設け,日本のオンラインゲームやスマートフォンゲームを取り巻く状況の健全化に務め,安心・安全にゲームをプレイできるように努めることは,日本のゲーム産業がより強固に世界で戦っていくことにもつながると語った。
JOGA 共同代表 越智政人氏 |
MCF 代表理事 千葉功太郎氏 |
消費者庁 消費者政策課 課長 鈴木一広氏 |
また消費者庁としては,商品・役務を提供するにあたり,消費者が適切な情報を得られるように分かりやすく伝えることを重視し,それはオンラインゲームであっても変わらないとのこと。そのため,JOGAのガイドラインのように,業界内で設けたルールを各企業に広く浸透させ,また消費者にも分かりやすい形で提示することは,実効性を担保する意味で非常に重要であり,そうしたテーマを掲げた今回のセミナーを非常に有意義であると評した。
JOGA ガイドラインワーキンググループ 小川智洋氏 |
そもそもJOGAガイドラインは,2012年の「コンプリートガチャ騒動」や2013年の「未成年高額決済問題」に代表される,オンラインゲーム業界が抱えるさまざまな課題に対し,ゲーム企業の自発的な取り組みが社会より求められたことから作成されたものだ。
JOGAは2012年から2013年にかけて,「オンラインゲーム安心安全宣言」(以下,「安心安全宣言」)と「オンラインゲームにおけるビジネスモデルの企画設計および運用ガイドライン」,「ランダム型アイテム提供方式における表示および運営ガイドライン」(以下,「ガチャガイドライン」),そして「スマートフォンゲームアプリケーション運用ガイドライン」(以下,「スマホガイドライン」)という,4つのガイドラインを公表してきた。
それから約3年,スマートフォンゲームの隆盛やオンラインゲーム多様化などによって,従来のガイドラインでは対応が困難な状況が生まれていること,また2016年4月1日に景品表示法の改正が決定したことを受け,JOGAでは2015年8月頃よりガイドラインの改訂に取り組んでいたという。
今回のセミナーで解説されたのは,「安心安全宣言」と「ガチャガイドライン」の改訂についてである。
「安心安全宣言」は,同じゲームをPCでもスマートフォンでも遊べるケースが増えたことなどを受け,「スマホガイドライン」と統合されることになり,従来のPCでプレイするゲームに加え,スマートフォンや携帯電話,その他ウェアラブル端末でプレイするゲームが対象となった。
また「スマホガイドライン」との統合によって,利用者が安心できる安全な環境を提供するために利用規約や不正行為を定めること,未成年者が安心して利用できるように年齢を確認し,未成年者の場合は保護者の明示的な同意を得るなどの対策を取ること,総務省が規定する「スマートフォン プライバシー イニシアティブ」に準拠したプライバシーポリシーを作成・明示すること,景品表示法など関係法規の遵守が追加されている。
一方,「ガチャガイドライン」は有料ガチャに限定した内容であることを明確にするため,正式名称を「ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン」に変更。その対象は「安心安全宣言」と同じく,PCでプレイするゲームに加え,スマートフォンや携帯電話,その他ウェアラブル端末でプレイするゲームとなった。
さらに公式サイトや有料ガチャを提供する各種画面,あるいはそこらからリンクされたページに記載する情報がより細かく規定されている。
- 有料ガチャで提供されるすべてのアイテムの名称(イラスト,種別等でも可)
- ガチャレアアイテム(有料ガチャにより提供されるガチャアイテムのうち,顕著な特徴を有するもの,提供割合が低いもの,または提供数や提供期間が限定されたもの等,顧客を誘引する目的で提供されるもの)
- 有料ガチャにより提供されるガチャアイテムの提供数,提供期間が決まっている場合は,提供数または提供期間
- キャンペーンなどで提供割合を変更する場合は,変更条件と変更度合い(※前日までに)
- 「今なら確率2倍!」のような比較対象表示をする場合は,比較対象元の有料ガチャの情報
- 有料ガチャにより提供されるガチャアイテムが重複する可能性の有無とその条件等
また,有料ガチャの設定や運用に関する事項,禁止事項,内部監査に関する事項は,基本的に2012年に作成されたものと同じ内容だが,あらためて重要な部分について解説が行われた。
●ガチャアイテムを提供する場合は,以下のいずれかの設定や表示をする
- いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額を有料ガチャ1回分の価格の100倍以内に設定(同カテゴリのガチャレアアイテムが出る確率の合計が1%以上になるように設定)
- いずれかのガチャレアアイテムを取得するまでの推定金額の上限を5万円以内に設定
- 上記の2項目で上限を超える場合には,ガチャページにその推定金額や倍率を明記する
- ガチャレアアイテムの提供割合の上限と下限を表示
- ガチャアイテムの種別(レア度やカテゴリ等,顧客が理解しやすいもの)ごとに提供割合を表示
●ガチャアイテムは価額を設定したうえで以下のいずれかに順守する
- 有料ガチャ1回利用時,有料ガチャ1回分の価額と同等またはそれ以上のガチャアイテムを提供
- 有料ガチャ10回利用時,有料ガチャ10回分の価額と同等またはそれ以上のガチャアイテムを提供
- 有料ガチャ5000円利用時,5000円と同等またはそれ以上のガチャアイテムを提供
●ガチャアイテムの提供割合を事前の告知なく変更しない。やむを得ず,ガチャアイテムの提供割合を変更する場合は,可及的速やかに告知する
●有料ガチャの運用責任者を定める
- 運用責任者は,有料ガチャの提供割合を事前に承認し,書面等で記録する
- 運用責任者は,有料ガチャが設定されたとおりに適切に稼働することを確認し,書面等で記録する
●有料ガチャのシステムは,安易に提供割合が変更できないようにする
●不当表示(優良誤認,有利誤認)をしない
●絵合わせ(コンプガチャ)をしない
●ガチャガイドライン記載の内容が適切に運営されているか監査する
●監査担当部署または監査担当者は,有料ガチャを運用する部門とは別とする
●監査の結果,不適切な事実が見つかった場合は,速やかに改善し再防止策を練る
いずれも詳細は,JOGAの公式サイトにて公開されているガイドラインにて確認することができる。
「オンラインゲーム安心安全宣言」
http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA_declaration_2016.pdf
「ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン」
http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA20160401.pdf
今回のセミナーには,オンラインゲーム事業およびスマートフォンゲーム事業などを手がける企業105社から195名の参加があり,さらに申し込み自体はそれを上回っていたという。また参加社のうち,60社はJOGA会員でもMCF会員でもない企業だったとのこと。昨今,世間を騒がせている有料ガチャの課題について,ゲーム業界全体の関心が高まっていることがうかがえた。
こうした取り組みを周知徹底することによって,多くのオンラインゲーム/スマートフォンゲームのプレイヤーが恩恵を受け,安心してゲームを楽しめる状況になることを願うばかりである。
「日本オンラインゲーム協会(JOGA)」公式サイト
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