イベント
3Dで漫画を楽しめる「結婚指輪物語 VR」が5月25日に発売。AnimeJapan 2018での体験プレイの模様をレポート
プロジェクトHikariとは,「マンガの物語に入り込めたらどんな体験ができるだろうか?」をコンセプトに,新しいマンガ体験を実現すべく立ち上げられた新企画だ。第1弾として公開された「結婚指輪物語 VR」は,同社の月刊「ビッグガンガン」でめいびい氏が連載している「結婚指輪物語」を原作としたVR漫画で,幼馴染みの少女を追って異世界に迷い込んだ高校生の姿をコメディタッチに描いている。
本稿では,この新コンテンツの体験レポートをお届けする。
まずは,VRのヘッドセットを装着し,試遊プレイがスタート。プロローグのあと,目の前に白黒の漫画の世界が広がった。これが本作の特徴のひとつである,原作の場面とキャラクターを立体的に実現するフル3D表現だ。原作のキャラクターや背景を3Dにすることで,漫画やアニメを超える没入感を体験でき,立体ならではの演出とキャラクターの感情表現を楽しめるという。
筆者が体験したのは,原作第1巻の冒頭部分となる主人公・サトウとヒロイン・ヒメの別れのシーン。サトウとそのお隣さんとなるヒメが暮らすアパートから,ヒメが異世界へと旅立つ森の中までが舞台となる。
シナリオが進むと目の前にサトウの暮らすアパートが現われた。原作とは違い,アパートの細部まで表現され,その存在感に驚かされた。その後,2階へと移動し,部屋の中に舞台は移る。このアパートは,制作チームがめいびい氏とミーティングを重ね,実際にある物件なども参考にして再現しているとのこと。
そして,3Dで表現された世界に,漫画のコマのようなウインドウが現われた。これは「Live Window」と呼ばれる機能で,漫画のコマ割りを表現しているのだが,視点を変えることでそのコマの中を覗けるようになっている。実際にLive Windowの中を覗いてみると,これまで見えなかった背景が確認できた。
また,このLive WindowはVRものに付いて回る“3D酔い”を防止するのにも役立っているという。通常の漫画のように,急激に視点を変えてしまうと,プレイヤーは通常,3D酔いを起こしてしまうのだが,Live Windowでいったん視点を誘導し,それからゆっくりと場面を変えることで,それが防げるという。言われてみると,プレイ中に場面が転換しても,気分が悪くなることはまるでなかった。
さらに物語への没入感を高めているのが,フルボイスによるセリフと効果音となるSEだ。シナリオの進行に合わせて,漫画と同様にフキダシにセリフが表示されるのだが,それに合わせてアニメのようにボイスが再生される。視覚と聴覚の両方で物語に没頭できるというわけだ。
キャラクターがセリフを話すシーンでは,その表情が変化する。これにはフェイシャルモーションを採用し,キャラクターの感情を豊かに表現しているとのことだ。
最後にヒメを追って異世界へとサトウが飛び込んだところで,試遊プレイは終了。実際にかかった時間は10分程度で,漫画のページ数にすると1話の半分しか進んでないのだが,非常に情報が多く,体感としてはその何倍にも感じられる濃密な体験となった。
漫画やアニメとは違った映像表現として,十分楽しめるコンテンツになりそうだ。
プレイ後,このプロジェクトを担当するプロジェクトリーダーの曹 家栄氏にちょっとだけ話を聞いてみた。
プロジェクトリーダーの曹 家栄氏へのミニインタビュー
4Gamer:
楽しくプレイさせていただきました。ちょっと気になったのは,作品がすべて白黒で統一されていることです。3Dにする際に色を付けるのは容易だったのではないでしょうか。
曹 家栄氏(以下,曹氏):
それは,漫画らしさを失いたくなかったからです。それと,漫画って頭のカラーページと特定のページだけに色を使って,効果的に演出していますよね。この「プロジェクトHikari」でも色を使うとしたらそういった効果的に使いたいと思ってまして。
今後はそれをいろいろ試していこうと思っています。
4Gamer:
「結婚指輪物語 VR」を製作するにあたって,苦労した部分は?
曹氏:
漫画の表現をリアルタイム技術で再現するところを工夫しています。特に“線でディテールを表現する”ことにこだわりました。ほかのVR作品では,白黒の表現が珍しいと思われます。ほとんどの場合,色やテキスチャーを付けることで細部を表現していますが,本作ではそれをあえてやっておらず,線画のようなイメージを目指しました。
さらに,登場するキャラクターや物は,じつはヘッドセットのレンズにより発生するイメージの歪みに合わせて,モデリングをしています。
4Gamer:
画像で見るとキャラクターの体型が微妙におかしいのはそのためですね。
曹氏:
はい。VRの画面のなかでいちばんきれいに見えるようにしてあるんです。
そのほかですと,本作のコンセプトに「コマとコマの間の世界をVRで見られる」というものがあります。キャラクターのフェイシャルアニメーションも,そのひとつですね。
4Gamer:
5月25日に本作の発売が予定されていますが,1つのパッケージでどれぐらい楽しめるのでしょうか。
曹氏:
最初のパッケージで原作第1話の3分の2ぐらいを収録します。プレイ時間としては30分から40分程度になる予定です。
4Gamer:
最後に読者へのメッセージをお願いします。
曹氏:
VRが好きな人にはぜひやってみてほしいです。あとは,アニメや映画といったストーリーコンテンツに関わっている人に,こういう手法があるということを知ってもらいたいですね。VRをやったことがない人にもオススメの作品です。
4Gamer:
ありがとうございました。
『結婚指輪物語 VR』
・メーカー:スクウェア・エニックス
・対応機種:PC ダウンロード専売
・対応デバイス:Oculus RiftとHTC Vive
・ジャンル:ETC
・配信日:2018年5月25日予定
・価格:未定
「結婚指輪物語 VR」公式サイト
- この記事のURL: