― レビュー ―
3人で開発したMMORPG,その実力は?
Dark Arena
Text by ginger
2006年10月12日

※本稿は9月28日のアイテム課金導入以後のゲーム内容に準じています

 

 9月28日に課金アイテムの販売が開始されたばかりのMMORPG「Dark Arena」は,3人で開発されたということで話題を集めたタイトルだ。4Gamerでも,開発者の一人で,メインプログラマーのLee Hyun Sik氏にインタビューを行っているので,開発の経緯についてはそちらも合わせて目を通していただきたい。

 

 

剣と魔法と機械文明の融合した世界観

 

基本料金無料で楽しめる「Dark Arena」は,たった3人で制作されたことで話題を集めたMMORPG。比較的低スペックのPCでも遊べるのが嬉しいところ

 本作の舞台となるのは,「月と大地との間にある」とされるNIDA大陸。基本的にはファンタジーをベースとした世界観だが,ロボットや銃器を扱う「機攻士」というクラスも登場するのが本作の目立った特徴の一つだ。

 

 遥かな昔,月の女神アルテミスと魔神ソルバウの二柱の神が,一つの星の支配権を巡って争っていた。「神魔大戦」と呼ばれるこの戦いは,女神アルテミスがその生命と引き換えに,魔神ソルバウを宝珠「月の涙」に封印することで決着した。その後,この星は女神アルテミスの眷属である人間達によって支配されていたが,やがて人間同士の争いが起こる。その争いの中,さらなる力を得るべく「月の涙」の力を解放しようとしたことによって,宝珠は粉々に砕け散り,封印されていた魔神ソルバウと魔族が再び地上に姿を現してしまう。事態の重大さに気づいた人々は争いを止め,団結して魔族に立ち向かった。

 

 プレイヤーはこの世界で,再び女神アルテミスの加護にすがるため,魔族と戦いながら,砕け散った「月の涙」の破片,「月の欠片」を探すことになる。
 プレイヤーが選択できるクラスは,以下の四つ。

  • 「戦士」さまざまな武器を使い,強靭な肉体を持つ
  • 「魔法士」攻撃魔法と回復魔法の両方を使いこなす
  • 「召喚士」精霊を召喚し,敵と戦う
  • 「機攻士」銃器や巨大なロボットを扱う

 この中で,戦士と機攻士は男女両方の性別を選択できるが,魔法士は女性だけ,召喚士は性別不明(少年のような姿)だけとなっている。このほかに,キャラクターの顔や髪型をそれぞれ10種類程度の中から選択できる。本作のキャラクターモデルは,足がとても長いわりに顔がものすごく小さいので,違いがあまりよく分からないのが残念なところ。

 

プレイヤーが選択できるクラスは「戦士」「魔法士」「召喚士」「機攻士」の四つ。中でも,巨大なメカに乗って戦う機攻士は見どころの一つ。搭乗に必要なレベルは100

 

戦士のスキルは,使用する武器によって4系統に分かれている。スキルによっては範囲攻撃や遠隔攻撃可能なものもあるので,好みのスタイルを選択するといいだろう 魔法士は攻撃魔法だけではなく,回復系や補助系の魔法も使用できるオールラウンダー。派手なエフェクトの魔法で敵を蹴散らし,パーティの回復役をもこなす

 

召喚士は,その名の通りペット(?)を召喚して戦わせるクラス。ペットは同時に2体まで召喚でき,プレイヤーキャラと同様,戦うほどにレベルが上がっていく 機攻士はメカに乗って戦えるようになるまでは,銃で戦う普通の人といった感じ。せっかくの銃も,一発撃つとあっという間に接近されてしまうのが玉にキズだ

 

 

ソロでもテンポいいプレイが可能。豊富な乗り物も魅力

 

矢が突き刺さって倒れているようだが,実は単に休憩しているだけ。矢のように見えるのはただの飾りだ。それにしても,ちょっとくつろぎすぎのような……

 最近のMMORPGと比較すると,グラフィックス自体はことさら目を引くレベルではないが,オプションのガンマ表示をオンにしたときの,淡く幻想的なグラフィックスは十分に美しいといえる。また,動作に必要なスペックは,3DタイプのMMORPGとしては低く抑えられており,基本料金無料でプレイできるので,MMORPG入門作としてプレイするのに向いている。
 操作も,左クリックで移動地点と攻撃対象を選択し,右クリックでスキルを使用する一般的なタイプなので,一度プレイすればそれほど迷うことはないだろう。しかし,最近のゲームではよく見られる,ゲーム開始直後の親切なチュートリアルなどはないので,プレイする前には一度公式サイトのゲーム紹介で,操作方法やゲームシステムの確認をしておいたほうがよさそうだ。
 しかし,公式サイトで一通り操作の確認をしておいても操作がよく分からず,ゲーム中でも説明されない部分があるのは不親切だ。とくに,機攻士のメイン武器である,銃器の弾薬補充の方法が非常に分かりにくい点には戸惑わされる。この場合は,画面左上の残弾数を左クリックすれば,代金と引き換えに補充が行われる。

 

 本作の見どころは,なんといっても各クラスに用意された複数の乗り物と,派手な外見の装備にある。乗り物については,召喚士の乗り物「ケムケム」と魔法士の「羽」はレベル60から,戦士の乗る「馬」「虎」はレベル80から,機攻士が搭乗する「グランワーカー」に至ってはレベル100から搭乗可能になる。相応のレベルにならなければ扱えないが,見た目が派手なだけではなく,移動速度の上昇や,乗り物に防具をつけることで防御力などのパラメータが向上するなど,プレイの励みにもなるだろう。
 また,本作ではレベルの上がるペースが非常に速い。初めてプレイする人でも,小一時間もプレイすればたちまちレベル20くらいになっているだろう。その後はさすがに1時間でレベル20アップというわけにはいかないが,それでもかなりテンポよくレベル上げを行える。しかも,レベルキャップは500となっているので,やり応えは気が遠くなるほど十分だ。

 

 本作は,パーティプレイ時の経験値ボーナスが非常に大きくなっており,8人のフルパーティ時は105%の経験値ボーナスが加算される。つまり,ソロプレイ時と比べて2倍以上の経験値が得られるのだ。ここはぜひ,積極的にパーティを組んで遊びたいところ……なのだが,残念ながら今のところプレイヤー数が多いとはいえなのが現状。とはいえ,しばしばソロパーティ(パーティを組んで,それぞれのプレイヤーが別々に狩りをすること)の募集が行われているので,チャンスがあれば積極的に参加していくといいだろう。お世辞にもMMORPGの醍醐味である,プレイヤー同士で協力して戦う,というプレイスタイルとはいえないが,普段はゲームにあまり時間を取れない人にとっては,ソロでも遊べるという点は評価できる。
 なお,本作ではレベルアップによって獲得したポイントを割り振って,ステータスやスキルを強化していくスタイルになっている。これを忘れると,レベルアップしても強くなったことをこれっぽちも実感できないので,お忘れなく。中級者以上向けの強化手段として,「月の欠片」による装備の精錬や,同種類の武器を二つ合成することによって強力な武器を作り出す,「デュアルウェポン」といったシステムも用意されている。

 

機攻士のスタート地点となる街は,ちょっと冷たい,SFチックな雰囲気。やたらとだだっ広いが,NPCがまったくいないのでゴーストタウンにも見えてしまう 戦士のスタート地点は,正統派ファンタジーの趣が満点。幻想的な色使いが美しいが,例によって無駄なNPCは一切存在しないので,寂しさもひとしお それぞれの街の入り口には,このような警護のためのNPCが立っている。しかし,立っているだけで話しかけても返事がないのはちょっと寂し過ぎる……

 

プレイ中は現在位置をマップで確認できる。モンスターやNPCの位置までマップから確認できるので,世界は広いが迷子になることはあまりないだろう 強化魔法を使用すると,頭上にこのようなアイコンが表示されるのは,MMORPGのお約束の一つといっていいだろう。左上には効果時間も表示されるので常に気を配ろう レベル20までは,死んでもお金を消費せずにその場で復活可能。死ぬと若干経験値が減るが,序盤は死んだり復活したりを繰り返して,強めの敵をどんどん狩るのが効率的

 

 

手堅い作りだが,全体的に作りこみの甘さが見られる

 

レベルが上がったら,忘れずにステータスを割り振っておこう。一度割り振ったステータスを,特定のアイテムを使用して振り直すこともできるのが嬉しいところ

 さて,比較的低スペックでも遊べ,やりこみ要素もそれなりにある本作ではあるが,ゲーム全体の完成度としてはやや物足りないものが感じられる。プレイをしていてまず真っ先に気づくことは,やたらと広い街中に,NPCがほとんどいないということだ。商人やトレーナーといった,“役割”を持ったNPC以外は一人もいない。こうしたNPCは街の中心ではなく,街の外周部に沿った形で点在しているので,プレイヤーはムダに走らされている印象を受ける。また,これに付随する問題として,本作にはクエストがほとんど存在しない。クエストをくれるべきNPC自体が存在しないので,クエストがないのは当然ではあるのだが,あまりにお寒い現状だといわざるを得ない。
 また本作では,レベルによって入れるエリアがカッチリと決められており,次のエリアに進むためにはレベル20以上,その先のエリアへはレベル40以上といった具合に分けられている。強い敵から逃げ回りながら,ちょっと無理して先のエリアを探検してみよう,といったことが本作では不可能だ。
 したがって,プレイヤーが現状なすべきことは,次のエリアに進めるレベルになるまで,ひたすら同じエリアで敵と戦ってレベル上げとアイテム集めをすることだけだ。せっかくの壮大なバックストーリーも,ゲームに十分に反映されているとは言い難い。

 

 システム面を見ても,MMORPGとして一般的に実装されているべき機能が,いくつか欠けている。とりわけ,フレンド登録やプレイヤー検索といった,コミュニケーションに大きく関わる機能が実装されていないのが痛い。本作におけるギルドに相当するものとして,「部隊」システムが用意されているが,新たに部隊を作成するためにはレベル60が必要なため,序盤のコミュニケーション手段の不足を補っているとは言い難い。ピンポイントでのコミュニケーションがしにくい分は,エリア全体に聞こえる全体チャットを使ってカバーするしかないのだが,なんとも歯がゆい状況だ。

 

 その一方で,キャラクターの育成を手助けしてくれる課金アイテムは,回復系アイテムをはじめとして,経験値やドロップ率上昇といった補助系のものまで豊富に用意されている。効果時間の短いものはお手軽な価格に設定されているので,空いた時間に集中してプレイしたいときなどに,気軽に購入できるのは嬉しいところ。

 

 本作はMMORPGとしての基礎がしっかりとできており,これだけのものをよくぞ3人で作り上げたものだと素直に感心する。しかし全体的な作りとしては,やはり3人で開発したがゆえの限界なのか,作りこみに物足りなさが見られ,ゲームとしての深みを感じさせる完成度にはまだ達していないといえる。プレイヤーの多さを見ても,今回のプレイ中にも徐々に人が増えてきた印象を受けるものの,まだこれからといった感じだ。現時点では百点満点とは言えないが,空いた時間にソロでもサクサク遊びたい人や,「3人で作った」という謳い文句に興味を惹かれる人,巨大メカに乗って敵を豪快にやっつけたい人は,まずは試してみるといいだろう。

 

戦士のスキルは,NPCから習得可能。ほかのクラスのスキルは,基本的にはモンスターからのドロップがメイン。なぜこのような差別化が図られているのかは謎だ 街にある倉庫に預けた荷物は,別のキャラクターでも引き出せる。金庫はレベルが上がると拡張されるので,すぐに使わないものなどは,どんどん預けていこう

 

魔法士には乗り物が用意されていない代わりに,専用の羽を装備して移動速度を上げられる。見た目も綺麗なので,オシャレ装備としても使えるかも 巨大なメカに乗りたいがために機攻士を選ぶ人も多いはず。「巨大メカとはいえ,実際どれほどのものか」と疑問に思うかもしれないが,ご覧の通り。デ…デカイ

 

大器晩成を地でいく機攻士だが,そのぶん,乗れるようになったときの喜びはひとしおのはず。機攻士に生まれた以上,あきらめずにレベル上げに励んでほしい 召喚士の乗り物は,このケムケム。可愛いのか可愛くないのかちょっと微妙だが,乗っているうちに愛着が……。乗り物も,装備を変更すると見た目がかなり変化する 二つの武器を合成して強化するデュアルウェポンシステム。同種類の武器のほか,「英雄スケルトンのカケラ」が必要だ。課金アイテムには,合成を100%成功させるものも

 

商店で買える装備はレベル20までのもののみ。それ以降はすべてモンスターからのドロップとなる。買い物の楽しみを味わえなくなるのはちょっと残念かも 自分が持っているアイテムを販売する,いわゆる露店機能もある。お買い得なものが見つかるかも。商人と書かれたのぼりを見つけたら,覗いてみるといいだろう メカ画像ばかりで申し訳ないが,直立型だけでなく,このような逆関節タイプも選択できる。直立型とどちらが好きかは好みが分かれるところだが,男なら両方揃えたい

 

タイトル Dark Arena
開発元 NIDA Entertainment 発売元 ロックワークス
発売日 2006/09/28 価格 基本料金無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/600MHz以上[Pentium 4/1.40GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],HDD空き容量:1GB以上[4GB以上推奨]

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