大戦略の魅力をそのままにコマンドコントロール要素を
「大戦略センチュリオン」のポイントは指揮権限。前線指揮官から総司令官まで6段階の指揮レベルがあり,各段階での任務と達成手段の違いを楽しめる |
現代戦ストラテジーの金字塔,大戦略シリーズの最新作「大戦略センチュリオン」(以下,センチュリオン)は,リアルタイム進行のヘックス制ストラテジーだ。システムソフト・アルファーが手がける大戦略シリーズには,進行方法で分けるとターン制とリアルタイム制という2種類のタイプがあるが,本作はリアルタイム制を採っており,好評を博した「リアルタイム版大戦略パーフェクト」の流れを汲む作品である。
センチュリオンの特徴は,指揮系統をクローズアップしたところにある。今までの大戦略シリーズでは,航空機も車両も艦船も,すべてのユニットをプレイヤーが一元的に扱っていた。プレイヤーは,全軍を率いる総司令官であると同時に,前線で各部隊を指揮する部隊長でもあったわけだ。これはプレイのうえで便利ではあるが,ある意味ゲームを単調にしてしまう。ユニット同士の連携が,自在にできすぎるのだ。
それに対してセンチュリオンでは,「空軍師団」「陸軍師団」「海軍師団」という3軍が,それぞれ航空機,陸戦兵器,艦船ユニットを管理するシステムとなっている。
従来の1ユニットを一つの「部隊」と呼び,6部隊で「連隊」,6個連隊を基幹として「師団」が編成され,師団にはさらに直率の30部隊が配属できる。現実の軍隊の師団制と,用語の使い方がかなり異なるものの,軍隊の持つ中間の指揮結節と,その大小/上下関係に着目した点は画期的だ。現実の軍隊の組織編成をそのままなぞった形にしていないのは,後述する指揮範囲の問題と関連して,大戦略というゲームの面白さを損なわないように,コマンドコントロール要素を取り入れるための工夫なのだろう。
さて,そうしたシステムにおけるプレイヤーのポジションは転戦していくなかで変化し,指揮範囲もそれにつれて変わる。具体的なポジションとしては「部隊長」「統合部隊長」「連隊長」「統合連隊長」「師団長」「統合師団長」という六つが用意され,この中で統合という名が付くものでは,陸海空3軍それぞれにまたがって,ユニット群を指揮できるのだ。
プレイヤーのポジションは,まず「部隊」単位の指揮官である部隊長からスタートする。この段階では,3軍の師団から自分が所属したいところを選び,その直属部隊の中から最大6部隊(つまり6ユニット)を指揮できる。予算や都市の数ではなく,ポジションで指揮ユニット数が決まるのだ。
マップをクリアしていけば評価ポイントが蓄積され,一定のポイント数に達すると昇進して,より大きな規模の部隊を指揮できるようになる。ユニットや部隊のレベルアップは「大戦略」ではお馴染みだが,それがついにプレイヤーの立場にも及んだわけだ。
「アイランドキャンペーン」といった定番マップのほか,テーマ性のあるシナリオ/マップが多数収録されている | マップの初期設定画面。勝利条件のほか,予算やユニット数など幅広い難易度調整が可能である | 大きな特徴は陸・海・空の師団分け。例えば航空機ユニットは,一部を除き空軍師団にのみ配属される |
戦車は陸軍師団に配備される。例外となるのは,歩兵やヘリコプターなど一部のユニットだけだ | 航空母艦はもちろん海軍師団専属。艦載機,ヘリコプターなども海軍師団で編成可能だ | こちらは兵器の詳細データ。今回登場する兵器は,最新兵器やすでに退役した兵器も含め,800種類以上 |
全軍を動かせない立場での,葛藤と挑戦が魅力
いろいろと指示を与えてくれるオペレータは総勢6人。その中から1人が戦いをサポートしてくれる。女性士官だからといって,優しくはしてくれないが |
冒頭で触れたように,ゲームの進行はリアルタイム制で,プレイヤーが各部隊に直接指示を与えるマニュアルモードと,AIに任せるオートモードのいずれかで進める。そして,プレイヤーがコントロールする部隊以外は,選んだモードにかかわらずオートで行動する。そして最初はこの,思い通りに動いてくれない友軍がストレスになるかもしれない。
一応,初期設定でAI担当部隊に侵攻重視,防御重視,攻防のバランスを取る,といった大まかな行動指針は与えられるが,侵攻ルートや都市への攻撃,ユニット生産などの具体的な指示は出せないし,師団長以上にならないとユニット生産もできない。
なので,最初のうちは非常に苦戦する局面が多くなる。指揮権限や部隊編成が複雑になったぶん,本物の軍隊にも多分にある“一個人の力ではどうにもならない”部分もしっかり再現されたわけだ。このあたりは,あらかじめ覚悟しておいたほうがよいだろう。
ただし,マップクリアの評価ポイントは,選んだマップがキャンペーンでもチュートリアルでも区別なく加算されていくので,指揮権限の低さが気になるなら,キャンペーンを始める前にノーマルシナリオのマップでポイントを稼いでおくのがよいだろう。ポジションによって採るべき戦術も変化するので,従来になくプレイの幅が広がったのは確かだ。
ちなみにゲーム中にはオペレータが登場し,プレイヤーに上官からの命令を音声で伝える。ポジションが低いうちは,AIから都市の占領や,兵員輸送などを命令されるのが,実に本作らしい部分といえよう。
収録シナリオ/マップは,ノーマルマップが62枚,シナリオマップが30枚(チュートリアル用のマップ13枚を含む),キャンペーンが7本と,遊び応えはたっぷり。育てたユニットを持ち越せるという,従来のキャンペーンの魅力をしっかり受け継いでいる。また,お馴染みのマップエディタも搭載されているほか,通信対戦も可能で,無料の対戦ロビーサーバーの快適さが向上しているというのも,人間対人間のプレイを重視しているファンには嬉しいところだろう。
チュートリアルマップは,兵器ごとの特性が学べる内容になっている。これで戦い方に慣れよう | これは対地攻撃機の使い方。何をすべきかの指示は順次与えられるので,初心者でも比較的安心 | チュートリアルマップとはいえ,クリアすれば昇進に必要な評価ポイントが手に入る |
兵器ユニット=部隊には,名前も付けられる。ポイントを消費して新規購入も可能だ | マップエディタも収録。オリジナルマップではコンピュータプレイヤーの侵攻目標も設定可能 | 補給可能な建物や地形を結んで形成される補給線の概念は,前作から引き継がれている |
自軍のなかで,自部隊が果たすべき役割を考える
部隊長クラスだと,AIからの命令をこなさなければならないことも。達成するとポイント加算もある |
新要素が加わったとはいえ,都市や基地を占領していき,敵部隊を全滅させるか首都を占領して勝利を得るという,プレイの基本的な流れは従来と変わらない。ただし,今回はポジションごとに指揮できる部隊数に制限がある関係で,今までにない工夫も必要になっている。
なかでも索敵ユニットの使い方は重要だ。偵察装甲車や早期警戒機,イージス艦といった索敵範囲の広いユニットは “自軍AIに攻撃すべき目標を教えてやる”先導役になるからである。
最初は操作できるユニットが少ないので,プレイヤー指揮下の部隊だけで敵を排除し,侵攻を続けることは非常に難しい。そこで,プレイヤーが進みたいルートに,自軍AI指揮下の部隊を誘導するのが重要だ。
例えば偵察車を戦車の護衛付きで先行させ,敵の侵攻ルートになりそうな場所に索敵エリアを作っておく。あっさり撃破されては意味がないので,こまめな前進,後退も適宜必要だ。敵部隊を発見し,自軍AIが兵力を回してくるよう仕向けられればしめたもの。侵攻ルートをプレイヤーの思う方向に誘導することも可能となる。自軍AIには,とかく一本道で敵首都を目指す傾向があるので,無警戒のエリアができやすい。それをカバーする意味でも索敵は非常に重要なのだ。
というわけで,例えば部隊長の間は,歩兵や輸送ユニット,戦闘ユニットをバランスよく整備することはあまり考えなくてもよい。マップの構造(地形配置)にもよるが,戦車や戦闘機など,戦闘力が高い部隊をメインにして,無難にレベルアップを図るのも一つの方法なのだ。
さて,もう一つ重要なポイントは補給線である。補給線の概念は「リアルタイム版大戦略パーフェクト」にもあったが,今回は少ない部隊数を有効活用する方法として,航空部隊による補給線のピンポイント破壊なども積極的に使ったほうがよさそうだ。地上部隊同士の戦闘が膠着してしまったとき(実際,そうなりやすい)は,後方で補給線の通る地形を破壊することで,敵部隊を一気に撤退に追い込める。
陸軍師団の傘下でプレイし,思うような戦いができなかったら,次は空軍師団を選んでプレイしてみるとよい。そうしたプレイの柔軟性は,現実の軍隊の指揮系統を真似たのでは実現できなかったであろう,本作の特筆すべき工夫だ。
プレイしてみた印象として,部隊編成の概念と指揮権限の導入は,ターン制で進化してきた「大戦略」がリアルタイム制を導入したときと同じくらいのインパクトがあると感じた。なんといっても,昇進するに従って,自在に軍を操れるようになるのは新鮮な魅力だ。リアルタイム版大戦略各作品を楽しんできた人も,新しい気持ちで楽しめることだろう。
部隊長クラスのうちは索敵や都市占領に徹するのも一つの方法。最前線での消耗は避けたいところだ | 最初は操作できる部隊が少ないので,配置する部隊を選ぶ段階から戦略を考える必要がある | 戦闘が連続すると部隊の疲労が大きくなり,戦闘不能になることも。包囲されることは避けよう |
敵の索敵ユニットは優先破壊目標だ。また工作車など修復/占領の能力がある部隊も先に潰したい | 高価だが使い勝手のよいイージス艦。索敵だけでなく,敵の進撃阻止や防空などさまざまな用途に役立つ | 敵ユニットを全滅させて勝利! 今作では勝ち方が「評価ポイント」という形で昇進に響いてくる |