流通関係者によれば,ATI TechnologiesのRadeon X1900シリーズは,かなりの店頭価格にもかかわらず,比較的好調に売れているという。
その理由が,優れた3D性能にあるというのは,本誌のレビューから容易に想像できると思うが,一方でRadeon X1900シリーズについては,消費電力の大きさと発熱の大きさという,看過できない問題がついて回ることになる。そして,発熱が大きければ,冷却機構を大仰にし,ファンを高回転で回して風量を確保する必要があり,結果としてRadeon X1900のリファレンスクーラーは,なかなか耳障りな騒音を立ててくれるのである。
ハイエンドクラスのグラフィックスカードでは,このような消費電力やら発熱やら騒音やらの対策が行われている。3D描画負荷の低いときにはグラフィックスチップやメモリの動作クロックを落として消費電力と発熱を落とし,同時にファンの回転数を落とすといった機構が導入されているのだ。だが,ファンは,もともとが(3D描画時の)高回転をターゲットに作られているため,低回転時の騒音は,いわゆるケースファンなどと比べると,どうしても高めになってしまう。
そういうわけで,ハイエンドクラスのグラフィックスカードを静かに運用するというのは,なかなか難儀だ。そもそも冷却能力が足りなければ意味がなく,それでいて,リファレンスクーラーより静かだったりといったプラスアルファが求められるのだから当然なのだが,実際に製品が投入されるまでにはどうしても時間がかかる。そして,その間ユーザーは,リファレンスクーラーの騒音に堪え続けねばならない。
KD-NiATI-1000 メーカー:高速電脳&長尾製作所 問い合わせ先:高速電脳 TEL:03-5297-3210 |
その意味で待望の製品といえるのが,今回紹介する「KD-NiATI-1000」だ。同製品は,冷却&静音アイテムに強いと定評のある秋葉原のPCパーツショップ,高速電脳のオリジナル製品。製造は,神奈川県川崎市の長尾製作所という工場が行っている。
見てのとおりKD-NiATI-1000は,いわゆるチップクーラーと呼ばれる製品のため,利用するためにはグラフィックスカードに取り付けられているリファレンスクーラーを取り外す必要がある。一方で,グラフィックスカード製品は,クーラーを取り外した段階でメーカーや代理店のサポートが受けられなくなる。つまり,KD-NiATI-1000の取り付け作業は,100%自己責任となるのだ。この点は,十分に注意しておいてほしい。
KD-NiATI-1000をRadeon X1900 XTXカードに取り付けたところ |
さて,KD-NiATI-1000ではRadeon X1900/X1800シリーズへの対応が謳われており,高速電脳によれば「ネジ穴が同じなので,GeForce 7900 GTX/GTシリーズにも対応する」とのことだ。
構造は単純明快。グラフィックスチップの熱を受け止めて,それを2本の銅製ヒートパイプでアルミ製ヒートシンクへ伝える。そして,ヒートシンクに取り付ける仕様の80mm角ファンで排熱するという流れである。
標準でネジ留めされているファンは25mm厚,回転数3000rpmのXINRUILIAN製。ファンはネジ2本で固定する仕様で,やろうと思えば,異なる回転数,異なる厚さのファンも取り付けられる。
メモリチップに対しては付属するチップヒートシンクを貼りつけることになる。ただしその構造上,Radeon X1900/X1800シリーズのグラフィックスカードにおいて,ちょうどヒートパイプの“下”になってしまうメモリチップには,ヒートシンクを取り付けられない。このため,メモリチップ用ヒートシンクは,はじめから7個(カード上のメモリチップ数−1個)分しか用意されていないのだ。よくも悪くも,かなり割り切った設計といえるだろう。
メモリチップ用ヒートシンクは,ヒートパイプと干渉しないよう,適切な位置に貼る必要がある。なお,今回試用したサンプルでは,ヒートシンクが黒く塗装されていない。製品版は上で紹介したとおり黒いのでお間違えなく |
ケース内に組み込んでみたところ。ヒートシンクを取り付けただけで,隣接する2スロットを確実に占有。さらに,空調を考えると,3スロットめも空けておきたい |
また,写真を見て気になっていた人もいると思うが,KD-NiATI-1000はかなり大きい。どれくらい大きいかというと「標準状態で利用する限り,グラフィックスカードを差したスロットに隣接する2スロットが確実にふさがり,風の流れを考えると3スロットめも空けておくべき」というほどだ。このため,ほとんどのマザーボードで,CrossFire動作は不可能になる。また,拡張カードによる機能追加にもマイナスといえ,この点は間違いなくユーザーを選ぶだろう。
■冷却能力はリファレンスより優秀
では,実際のところ,どのくらいの冷却能力があるのだろうか。今回は,Radeon X1900 XTX搭載グラフィックスカードを用意して,カードにあらかじめ取り付けられているリファレンスクーラーと比較してみることにした。
テスト環境は表のとおり。PCケースはごく標準的なミドルタワースチールケース(TQ-700 MkII)で,電源ユニットは140mm角/回転数1600rpmの吸気ファンを搭載する「PeterPower PP-500」,排気ファンには80mm角/回転数2000rpmの「RDL8025B」を利用している。また,温度はすべてCatalyst 6.2のCatalyst Control Centerで確認できる温度表示機能を利用した。