それぞれのチームが厳しい地区予選を勝ち抜き,本大会へ駒を進めている。どのチームもなるべく長くピッチに立つことを望んでいるが,無情にもグループリーグが終了した時点で,半分のチームは本大会から姿を消すのだ
いよいよ本日(6月9日)に開幕される,2006年FIFAワールドカップ。サッカー世界一の国を決める,4年に一度のこの大会では,各地区の予選を勝ち抜いた32か国の代表チームが,グループAからHまで4か国ずつ八つに分かれ,開幕戦「ドイツ対コスタリカ」の試合を皮切りに,総当たり戦のグループリーグが行われる。そしてそのグループリーグで上位2位までに入ったチームが決勝トーナメントに駒を進め,優勝を争うのである。
厳しい地区予選を勝ち抜いてきた各国の代表チームは,タレントや戦術などバラエティ豊かで,どのチームがどんな試合を見せてくれるのか,予想をしているだけでもわくわくしてくる。当然,事前に各チームの知識があったほうが,より楽しくこの大会を見ることができるだろう。
さて,本題に入ろう。FIFAのワールドライセンシーを,サッカーゲームとして唯一取得しているのが,去る4月27日にエレクトロニック・アーツから発売された「2006 FIFA ワールドカップ ドイツ大会」(以下,FIFA 06)である。FIFA 06の詳細は「こちら」のレビューを見てもらうとして,今回は出場32か国の代表チームについて,実際の大会とゲームの両方で楽しめるよう簡単に紹介していこう。
このグループでは,ドイツが頭一つ抜きん出ている感じがある。前回のワールドカップでは,前評判はそれほど高くなかったドイツだが,日本でも大人気となった鉄壁のゴールキーパー,オリバー・カーンを中心に,堅守でノックアウトラウンド(決勝トーナメント)を勝ち抜き,決勝戦ではブラジルに2-0で破れたものの,見事に準優勝という結果を飾った。
ところが今大会では,カーンは控えに回ることとなるらしい。ゲームをリアルと同じメンバーで戦いたいなら,スタメンゴールキーパーをレーマンに入れ替えなければならないところだが,ゲーム内でのデータでは,残念ながらレーマンはカーンより若干能力が劣るようで,プレイヤーとしては悩みどころになるだろう。
チームの中心は司令塔,ミヒャエル・バラック。4年前の大会ではイエローカードの累積により,決勝戦に出場できなかったバラックだが,彼のパフォーマンスにチームの浮沈がかかっていると言っても過言ではない。ゲームでも疲労やカードの累積に気をつけ,バラックを常にベストコンディションで試合に出せるようにしておきたい。
ポーランドは,1974年のドイツ大会と1982年のスペイン大会で,共に3位入賞を果たした古豪ではあるが,16年ぶりに出場を果たした前回のワールドカップでは,グループリーグであえなく敗退。果たして今大会では復活なるか。地区予選ではイングランドにホームとアウェイの両方で破れたものの,ほかを取りこぼしなく全勝し,2位で通過した。攻撃面は強力だが,守備面に不安のあるチームだ。スコットランドの名門,セルティックで中村俊輔のパスを受け,ゴールに運び続けたエースストライカーのズラブスキーを中心に,攻撃的なサッカーで上位進出を図りたい。
コスタリカもポーランドと同様,2大会連続の出場となる。地区予選序盤はイマイチふるわず,大いに苦しんだが,2005年4月上旬に前大会時の監督アレクサンドル・ギマラエスをチームに呼び戻してからは躍進し,ドイツ行きを決めた。ディフェンダーのマルチネス,フォワードのワンチョペなど世界トップクラスの選手にボールを集めて戦っていこう。
南米予選で3位にランクインし,2大会連続の出場を決めたエクアドルは,予選ではブラジル,アルゼンチンといった強豪チームにも勝利を収めているが,いずれもホームの試合であった。高地の試合には強いのだが,当然ながら本戦はすべてドイツで試合が行われるため,あまり関係ない。しかしこの内弁慶ぶりは,幸いにもゲームでは反映されない。地区予選でアルゼンチンのクレスポと並び得点王となったストライカー,デルガドにゴールを量産させれば,グループリーグ突破も見えてくる。
ベッカム,ジェラード,ランパードのMFトリオや,ストライカーのオーウェン,鉄壁のセンターバックであるテリーなど,近年で最高のタレントが揃ったとされるイングランドを優勝候補の一角として挙げる声は多い。優勝となると実に40年前にもさかのぼらなければならないチームではあるが,FIFA 06でこのチームを使ってグループリーグすら勝ち抜けないのだとしたら,ゲームの難度を一段階下げて練習を積んだほうがよいだろう。
スウェーデンは,予選ではクロアチアに2戦2敗と苦汁を舐めたが,残る8試合を全勝し,ストレートで本大会出場を決めている。ディフェンダーである現主将のメルベリ,中盤の要ユングベリ,脅威のフォワード,ラーション,イブラヒモビッチら,各ポジションにタレントは揃っているので,比較的使いやすいチームといえるだろう。実際のスウェーデンは1968年以降,約40年にわたってイングランド相手に負けがないチームだが,残念ながらゲーム内ではそういった「相性」は反映されない。プレイヤーの実力で強敵イングランドを下し,上位進出を狙いたいところだ。
フリーキックもできて得点能力の高いスーパーゴールキーパー,チラベルトこそいなくなったが,1998年と2002年に2大会連続で決勝トーナメント進出を果たしているパラグアイは,やはり今大会でも侮れないチームだ。アテネ五輪の銀メダリストであるミッドフィルダー,ドスサントスとバレット,チラベルトの後継者であるゴールキーパー,ビジャールなどを有効に使っていって,勝機を見い出したい。
北中米予選で4位に入り,アジア5位バーレーンとの大陸間プレーオフに勝利して本大会への初出場を決めたのが,トリニダードトバゴだ。前評判では,やはり「グループリーグ突破は難しい」という予想が大半のチーム。だが逆に言えば,それだけFIFA 06プレイヤーとしてはやりがいのあるチームだともいえる。国民的英雄,ヨークとジョンのフォワードコンビで,まずは本大会での初勝利を目指して奮起していこう。
前大会では優勝候補の一つに挙げられながら,「死のグループ」に入ってしまい,決勝トーナメントに出場できなかったアルゼンチン。今回も彼らは最も激戦が予想されるグループに入ってしまった。グループCの4チームは,いずれも強豪揃いだ。
過去に2度本大会で優勝しているアルゼンチンは,地区予選終盤で失速し,ブラジルに次ぐグループ2位となっている。'94年以降3回連続で地区予選をトップで通過してきただけに,今回はなんとも嫌な印象が拭えない。とはいえ,さすがは世界の強豪チーム,タレントは豊富だ。余裕があるなら新世代のニューヒーロー,弱冠18歳のメッシを起用するのもいいだろう(ただし,本来フォワードである彼は,FIFA 06ではミッドフィルダーとして登録されている)。
予選ではチェコ,ルーマニア,フィンランドといった難敵と同じグループに入ってしまったが,その予選を10勝0敗2分という,文句のつけようのない成績で勝ち上がってきたのがオランダだ。どこのポジションを見ても人材は豊富だが,「世界最高のウィンガー」と称されるロッペンを軸に,左サイドから攻め上がれば決定機がより増えていくことだろう。
「エレファント」の愛称で知られるコートジボワールは,本大会初出場となる。予選では前大会にも出場した強豪カメルーンと同じグループに入り,直接対決に破れて出場が危ぶまれたが,最終戦でカメルーンがエジプトを相手に引き分けてしまったことから,予選首位での突破となった。守備面では荒削りだが,ドログバ,カルーを中心とした攻撃陣の破壊力はかなりのもの。攻撃的なサッカーで相手を圧倒していきたい。
2003年まではユーゴスラビアとして国際試合を行っていた,セルビア・モンテネグロ。名前が変わってからは初めての大会となるが,過去に7度の出場経験を持つ国だ。「ピクシー」ストイコヴィッチから背番号10を受け継いだスタンコヴィッチが,FIFA 06ではなぜかスタメンでは登録されていない。彼をセンターミッドフィルダーに入れ,予選10試合を通して失点はわずか1点という堅守チームで勝ち抜いていこう。
このグループでは,前評判の高さではメキシコが一歩抜き出ているようだ。国内のチームに所属する選手が多いため,世界的な知名度が高い選手はあまり見あたらないが,その分,チームワークではほかのチームを寄せ付けない力がある。メキシコ代表最多得点記録を持つという,「空の支配者」ボルヘッティがヘディングシュートを量産できれば,グループリーグ突破はほぼ確実となるだろう。
予選で圧倒的な力を見せつけて本大会出場を果たしたのが,ポルトガルだ。2002年にブラジルをワールドカップ優勝に導いたフェリペ・スコラーリを監督に招聘し,1試合平均3得点という驚異的な攻撃力で予選を無敗で突破した。俊足のウィンガー,クリスチアーノ・ロナウドや,多彩なトリックを繰り出すデコ,ポイントゲッターのパウレタ,2004年に一時は代表引退したものの,その後に復帰を果たしたフィーゴなど,世界クラスの選手が多数おり,グループリーグ突破だけでなく,上位進出を狙える力がある。
地区予選では対日本戦を1勝1敗で終えたイランは,地区予選グループ2位での本大会出場となる。現メンバーはカリミ,マハダビキア,ハシェミアンと,ドイツブンデスリーガーで活躍する選手が数名おり,イラン史上最高のメンバーと称されることも多い。その中心にいるのは,ドイツのバイエルンに所属するカリミ。彼のテクニックで敵を翻弄していこう。
初出場となる「黒いカモシカ」アンゴラは,強敵揃いのアフリカ地区で,常に苦戦を強いられてきた。今回の地区予選でも「スーパーイーグルス」ナイジェリアと同じグループに属してしまい,本大会出場は不可能であろうと予想されていた。しかし「教授」の異名を取るゴンサルベス監督が予選途中で就任して以降,着々と勝ち点を積み上げ,ナイジェリアを抑えて見事ドイツ行きのキップを手に入れたのだ。スターと呼べる選手はいないが,その分を組織力で補い,W杯での初勝利を目指そう。