とはいえ,キモとなるFPS部分に関しても意外なほど(と言っては失礼だが)良くできている。銃器は連射すると銃口の跳ね上がりがきつくなるリアル系の設定。したがって,刻んで撃つ射撃法が有効となり,距離も重要だ。登場する兵器はどれも架空のものだが,有効射程,威力などはモデルとなった実物に準じており,現実のアナロジーが通用する。出血は驚くほど多く,刀で切り付けると鮮血が吹き出し,壁一面にも血が飛び散る。魔法の復活した世界は,意外なほど血なまぐさいのだ。
照準リングは移動すると広がり,しゃがむと小さくなって集弾率が上がるという設定であり,単純な撃ち合いにもそれなりの戦略を要求されるのだ。これら,デベロッパはヒットしたFPSを実に良く研究しているという印象を受ける仕事ぶりだ。
戦略性の高さはまた,シャドウランの目玉の一つであるクロスプラットフォーム対戦にも影響を与える。コントローラーを使うXbox 360と,マウス&キーボードを使用するPCで戦えば,勝敗は比較的明らかだ(いろいろ異論はあるようだが)。だが,手元にボタンの集中したコントローラーの方が,いちいちキーに指を伸ばす必要のあるPCに比べ,マジック/テックの発動が楽だというのがFASAの見解だ。そのため,Xbox 360には,オートエイム機能こそついているものの,コンシューマ機とPCではそれほど操作性に違いはない。そもそも,「正確に狙って当てる」ことがそれほど重要ではないということだ。
現実に何度かクロスプラットフォーム対戦を行う機会を得たが,もしかして筆者の能力に問題があったのかもしれないがという疑問はさておいても,Xbox 360チームとPCチームの対戦は互角という印象が強い。コンシューマー機のプレイヤーなぞひとひねりしてやる,と手ぐすねをひいている人は,ちょっと心したほうが良さそうである。
マジック/テックの使い方に関しては,全6チャプターから成るボリューム満点のチュートリアルが用意されており,それらを通して各種族の特徴を含む詳細なレクチャーを受けられるため,魔法ってなんだ? というFPSプレイヤーでも安心だ。もちろん,テキストやナレーションなどは完全に日本語化されており,その点も問題がない。
シャドウランはWindows Vista専用であり,またXbox 360とのマルチプラットフォーム対戦を楽しむにはGames for Windows - LIVEのゴールドメンバーシップを購入しなければならないなど,ハードルが高い部分も確かにあるが,初回は1か月無料のトライアル ゴールド メンバーシップが1枚同梱され、なおかつ一部の販売店では、予約特典としてさらにもう1枚もらえるとのこと。マイクロソフトが贈るこの異色のマルチプレイFPS,コアなプレイヤーにとってもビギナーにとっても,プレイする価値は十分にあるだろう。