レビュー
12年ぶりに登場するRPGシリーズの最新作「マイト&マジック X レガシー(日本語版)」をさっそくチェック。特典付きの“アーリーアクセス版”をプレイした
アーリーアクセス版の購入者は,無料で製品版にアップデートできるほか,「Might & Magic VI」(英語版)のダウンロードコードやサウンドトラックといった特典も付いてくるという,価格以上にお得な仕様になっている。
「マイト&マジック X レガシー(日本語版)」公式サイト
アーリーアクセスは,オンラインゲームにおけるβテストに似た試みとして最近,欧米でよく見られるビジネスモデルであり,その点も興味深いところ。そんな本作を,さっそく遊んでみた。
第1作が1986年にリリースされた「Might and Magic」は,30年近い歴史を持つ一人称視点のRPGだ。発売当時はRPGの全盛期であり,3DダンジョンRPGの草分け的な存在である「Wizardry」や「Bard's Tale」などの作品が次々と登場して人気を獲得。大きなジャンルを築きつつあった。
Might and Magicは,2002年に「Might and Magic IX」がリリースされたあと,Ubisoft Entertainmentが版権を取得。その後Ubisoftは,RPGではなくスピンオフのターン制のストラテジー「Might and Magic Heroes」(または「Heroes of Might and Magic」)シリーズに注力し,現在まで6作をリリースしている。
そのため最近のゲームファンにとっては,「Might and Magic=ターン制ストラテジー」という印象のほうが強いかもしれない。
ともあれ,このM&M Xは2002年にリリースされた前作「Might and Magic IX」以来,実に12年ぶりの本編シリーズになるわけだ。
M&M Xは,初代Might and Magicから1993年にリリースされた「Might and Magic V: Darkside of Xeen」 までのシリーズの初期タイトルにインスパイアされた作品であるという。
開始時,プレイヤーは4名のメンバーから成るパーティを作成して冒険に挑むのだが,選べる種族は人間,エルフ,ドワーフ,オークなど8種類(製品版では12種族)で,各種族にはそれぞれ2種類の初期クラス(製品版では3種類)が用意されている。専用のスペシャルクエストをクリアすることで,クラスチェンジも可能だ。
ゲームの背景となる物語は,「Might & Magic Heroes VI」終了後のAshanで,冒険者が「Karthal」という都市の世継ぎ問題に端を発する派閥争いに巻き込まれるというもので,「Might and Magic Heroes」シリーズと共通する部分がある。個人的には,ストーリーは知っていたほうが楽しめるが,深く気にしなくてもプレイに支障はないという印象。スタート地点となる街の名前が第1作と同じ「ソーピガル」であるところに,ぐっと来る人もいるだろう。
敵の行動がアニメーション処理されたり,各キャラクターの掛け声が実際のボイスになっていたり,昼夜で景観が変わったりなど,最新作らしく演出面は進化しているが,ゲームシステムは昔ながらのRPGそのもの。ブロック単位で移動して敵とターン制の戦闘を行う。宝を探したり,アイテムを手に入れたりして装備を強化し,次の冒険に挑んでいくわけだ。
本作の大きな特徴として挙げられるのは,敵との遭遇がエンカウント形式ではないところだろう。
例えば冒険の途中,オープンフィールドで遠くに敵の姿を発見したときには,弓や魔法を使った先制攻撃が行なえる。その後,気づいた敵が襲いかかってくるが,敵が1ブロックを移動するたびにパーティ全員が行動できるので,うまくやればかなりのアドバンテージになるのだ。魔法で敵を足止めし,こちらがノーダメージで敵を倒したりできると,してやったりという気分になるはず。
もっとも,この条件は敵も同じで,うっかりすると遠距離が得意な敵から先制攻撃を食らうこともある。その場合は,入り組んだ小道などへいったん避難して待ち伏せし,近接戦闘へ持ち込むのが得策だ。また,屋内やダンジョンなど視界の悪いところでは,角を曲がったら敵とバッタリ遭遇することもあり,これはこれでスリリングだ。
画面の上部には,近くに敵がいると色が変わる「危険インジケータ」があり,これを確認しながら一歩一歩慎重に進んでいこう。エンカウント形式のRPGでは,ヨーイドンで真正面から殴り合うことになるわけだが,M&M Xはそこに至るまでの駆け引きが面白い。
このほか,非戦闘時ならノーリスクで休憩が可能(キャンプ用の消費アイテムが必要)なので,MPを要するキャスター系のクラスを全力で戦闘に挑ませやすかったりする。
さらに,些細な部分だが嬉しいのは,戦闘におけるキャラクターの行動順を自由に選べることだ。これにより,直接攻撃を行ったあとで敵のアーマークラスを上げるデバフを唱えたり,瀕死の敵にメインアタッカーが渾身の力で攻撃を繰り出したりといった,思わず「違う,そうじゃないんだ」と言いたくなるようなケースが起こりにくい。
がっつり冒険したあとは,ソーピガルに帰還してクエストの完了報告をし,マジックアイテムを鑑定したり,魔法の習得や装備のアップグレードを行ったりする。このようにして,ゲームを続けていくわけだ。
Wizardryを嚆矢とする3DダンジョンRPGは,現在も日本では人気が高く,「世界樹の迷宮」「真・女神転生」など魅力的なタイトルが続々とリリースされている。
その一方,「Might & Magic」シリーズは冒頭にも書いたように,長らく新作に恵まれなかった。それだけに,海外でついに新作がリリースされ,しかも早い段階で日本語ローカライズされて遊べるというのは嬉しい話。正式リリース版が楽しみである。
現在は開発中ということで,ゲームバランスや翻訳は今後まだまだ改善されていくだろう。「Might and Magic」と聞いてピンと来るようなオールドゲーマーなら,価格もお手頃だし,ぜひチャレンジしてみよう。
「マイト&マジック X レガシー(日本語版)」公式サイト
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